累風庵閑日録

本と日常の徒然

『エソルド座の怪人』 若島正編 早川書房

●『エソルド座の怪人』 若島正編 早川書房 読了。

 異色作家短編集第二十巻、「世界篇」である。エジプト、チェコウルグアイ、といった世界各国の作家の、文字通り異色な作品を集めたもの。珍味を賞翫する楽しさは確かにあるけれども、私が求めているものとはちとずれている。申し訳ないが編者と私との波長が合わなかったという他はない。

 レイモン・クノー「トロイの馬」は酒場を舞台にして、主人公格の男女と当然のように人語を喋る馬とが奇妙な会話を交わす。トンマーゾ・ランドルフィ「ジョヴァンニとその妻」は、自分自身で幸せだと信じている者こそが世界一の幸せ者だという話。

 個人的ベストはロバートソン・デイヴィス「トリニティ・カレッジに逃げた猫」で、この面白さを言語化するのは私の文章力を超えている。ズレの面白さとぴったりハマる面白さとの混合具合が絶妙。次点はジャン・レイ「金歯」。新しい墓を暴いて死人の口から金歯を盗む男の物語。こういうブンガク臭の強いアンソロジーを読んでいると、それなりのストーリーがあるというだけで面白く感じる。

●お葱していた本が届いた。
『Re-ClaM vol.13』

●予約注文していた本が届いた。
『ミカドの謎 ニック・カーター日本の冒険』 ヒラヤマ探偵文庫