累風庵閑日録

本と日常の徒然

『未来学園』 都筑道夫 本の雑誌社

●『未来学園』 都筑道夫 本の雑誌社 読了。

都筑道夫 少年小説コレクション」の第五巻。単行本初収録の作品がある点も含め、まず読めることに意義のあるタイプの本である。なにしろジュブナイル作品集なので、いい歳こいたオヤジ(私)が読んで素直に楽しめるものではない。

 それでも、まるっきりつまらないわけではない。「スター・パトロール」の二編は、スケールの大きい快作。透明怪獣が暴れ、光線人間が警視総監を脅迫する。影のない男が跳梁し、ジェット機は爆発して墜落する。「宇宙からきた吸血鬼」は、題名から想像するような吸血鬼対少年主人公の対決ではない。そんな想像をあっさり裏切ってくれる意外さが上出来。描写の不気味さと緊迫感もちょっとしたものである。「暗い鏡」は、(伏字)というオチが秀逸。

 例外的に突き抜けて面白かったのが「ロボットDとぼくの冒険」である。パラレルワールドの東京を舞台に、現実の東京から飛ばされてきた主人公の少年仲瀬良一と、ロボットの探偵アール・ディ・ロンとが、悪人ゼロ博士と闘う連作。ディ、すなわちDはディティクティヴの略である。小学生向けや中学生向けの作品が多い中、この作品は高校生向けである。そのおかげもあってか、ストーリーが割と複雑でテンポもよく、読み応えがある。しかも終盤の展開はとんでもない方向にカッ飛んでゆく。