累風庵閑日録

本と日常の徒然

『白仮面』 金来成 論創社

●『白仮面』 金来成 論創社 読了。

 表題作「白仮面」は、型通りの怪盗ものジュブナイル……と思っていたら全然違った。展開はアクションシーンが多めで、自動車による追跡や楼上での格闘など、見せ場が連続する。そんなスピーディーな物語は、速度を維持したまま予想外の方向に捻れてゆき、唖然とするほど強引な結末に着地する。飛行機ならば墜落寸前の胴体着陸である。

 結末も結末だが、中盤のエピソードにもちと驚いた。この手の物語では、警察は名探偵の引き立て役であまり活躍しないものと相場が決まっていてるが、いくらなんでもこれは酷過ぎるだろう。

 こんなハチャメチャな作品、嫌いではない。

「黄金窟」は、朝鮮半島からインド洋までの広域を舞台にした、大掛かりな宝探しの冒険小説なのだが、実際の所スカスカである。丁寧な描写なんざかっ飛ばし、細かな段取りもすっ飛ばし、物語は猛スピードで突っ走る。

●昼からジムに行ってひと汗流し、いったん帰宅してから電車に乗って街に出る。今晩は飲み会があるのだ。

探偵アローウッド

●書店に寄って本を買う。
『探偵アローウッド』 M・フィンレー ハーパーBOOKS
サスペリアMAGAZINE』 洋泉社

 普段買わないハーパーBOOKSの棚を眺めていると、知らないホームズパスティシュが目に留まる。三年前刊行されていたのを、うっかり見逃したらしい。あとで買うつもりで書名をメモして、とりあえずその場は立ち去る。ところが、帰宅して蔵書リストを検索してみると、ちゃんと記載されているではないか。新刊当時に買って、安心してすっかり忘れていたようだ。えらいぞ、過去の俺。

『三遊亭円朝探偵小説選』 論創社

●『三遊亭円朝探偵小説選』 論創社 読了。

 語りの名人円朝の言葉をそのまま速記で写したというだけあって、明治時代の文章にもかかわらず実に読みやすい。しかも内容は落語である。とにかくもう、ひたすらに分かりやすい。徹底して庶民に寄り添う芸能なので、難解なお芸術ではないのだ。

 ただその内容は、ストレートに胸に迫る分だけしんどくもある。しんどさの元はふたつ。ひとつは、今よりはるかに厳しく、広範囲で共有されていた社会規範の存在である。世間の常識が個人をがんじがらめに縛って押しつぶしてゆく様子が、なんとも窮屈。どうにも息苦しい。

 もうひとつは、悪人の造形である。悪のヒーローといった虚構性と対極にある、卑しさ、醜さ、愚かさは、読んでいてうんざりである。そういうのは、現実世界だけで沢山なのだ。あまりにしんどいので途中何度も中断を挟み、読了するまで半月かかってしまった。

 個別の作品についてちょっとだけコメントしておく。「西洋人情噺 英国孝子ジョージスミス之伝」と「黄薔薇」の二編は、ミステリらしい捻りこそないが、結末の超展開が凄まじい。

「雨夜の引窓」は、死体移動のてんやわんやが語られる。巻末解題によると、類似の物語は世界中に分布するそうな。興味深いことである。解題では言及されていないが、落語だけを考えても、上方の「算段の平兵衛」がほぼ同型と言っていいほど似ている。

『夜はわが友』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『夜はわが友』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。

 上出来の短編集。さすが、約二百編の初期作品から精選したというだけのことはある。収録作はバラエティに富み、犯罪小説、サスペンス、謎解きと各種取り揃えられている。読者が目にするのは、驚きの結末、苦い結末、皮肉な結末、グロテスクな結末、あるいはそれらの全てである。個別の作品に対してコメントはしないが、大半が気に入った。

白仮面

●電車に乗って街に出て、書店に行って本を買う。
キャッツ・アイ』 R・A・フリーマン ちくま文庫
『大いなる過失』 M・R・ラインハート 論創社
『白仮面』 金来成 論創社

今年の初買い。

『エーミールと三人のふたご』 E・ケストナー 岩波少年文庫

●『エーミールと三人のふたご』 E・ケストナー 岩波少年文庫 読了。

 久しぶりに再会して、海辺の街で夏のバカンスを楽しむ、エーミールと「探偵」達。彼らがそこで経験するのは、輝かしい夏の喜びばかりではない。少年から大人になるにしたがって、誰もが直面し乗り越えなければならないほろ苦さが、本書のテーマのひとつのようだ。

 ストーリーは、実際の所どうということはない。ちょっとしたハプニングに遭った時の、彼らの言動が読み所。描かれているのは、まっとうさ、である。彼らは迷いもするし間違いもする。欠点も持っているし不安を抱えてもいる。だが同時に、自らを律する基準を持ち、しっかりと自分の足で立って前を見据える力強さを持っているのである。

『虎の牙』 M・ルブラン 創元推理文庫

●『虎の牙』 M・ルブラン 創元推理文庫 読了。

 根幹となる犯罪のアイデアは(伏字)ネタで、ちょっと面白いと思う。だが、全体としてどうにも惜しい。なにしろ、長い!!!

 もうちょっと、会話と描写とがきびきび簡潔に書いてあれば。解決しそうに見えたところで状況がひっくり返る展開があんなに何度も繰り返されなければ。せめて人物造形が活き活きとして魅力的であれば。もしもそうであれば、もっと作品に没入できたと思うのだが。内容は盛り沢山だし展開は起伏が多いしで、血沸き肉躍る傑作になり得た可能性は感じる。

 読んでいるとツッコミたいところがちょいちょい出てくる。ルパンものに対してツッコミたいなどと考えてはいけないのだが、でもどうしても一カ所だけ、唖然としたシーンを書いておきたい。容疑者が建物の四階から飛び降りて平然と立ち上がり、警官相手に活劇を演じて逃走する。なぜそんなことが可能なのか、もっともらしい理由が一言もない。唯一書いてある理由らしい文言は、奇跡、だそうで。

 ところで、かねてより耳にしていた横溝ネタがある。「犬神家の一族」に、この作品の影響が見られるというのだ。今回の目的の半分は、その実態を自分の目で確認することにある。さて、冒頭がまず驚きであった。近い将来の殺人事件発生を警告し、恐れおののきながら毒殺される刑事。しかも倒れるのは手洗いの部屋だ。これって丸っきり、古館法律事務所の若林ではないか。

 物語が本格的に動き出す発端となるのが、とある富豪の遺言状である。その内容がまたなんとも。様々な可能性と条件とを組み合わせ絡み合わせ、順々に相続人の場合分けをしてゆくのである。興味深いことであった。

※1/10追記
 某氏から、「本陣殺人事件」への影響も教えていただいた。言われてみればなるほど確かに。両作品の真相に深く関わる内容なので、詳細は非公開とする。

日付の異常

●ふと気付いたことがある。

 現在のこのブログは、去年の六月に始めた。それ以前の内容は、前のブログから移したものである。データ移行には、それぞれのブログで用意されているエクスポートとインポートの機能を利用した。そこで何か不具合があったらしい。移行分の日記の一部で、複数の記事が同じ日付になってしまっているようだ。ということはつまり、本来とは異なる順番で表示される可能性がある。また、タイトルが文字化けしている例もある。

 修正するならひとつひとつ目視で確認して手作業でちまちま書き換えてゆくしかないが、全体の数が多過ぎるから現実的ではない。というわけでお立会い諸賢に申し上げておきますが、【2018/6/20】以前の記事は日付が信頼できないので、そのつもりでご覧ください。

朝から病院

●元日からの体調不良がちっとも治らないので、病院に行ってきた。薬を処方してもらって、だいぶ楽になった。これからようやく回復期に入るものと期待している。ついでに書いとくと、インフルエンザではなかった。

●ジムの年始営業開始が昨日からで、早速ひと汗かきに行くつもりになっていたのだが、体調不良でそれどころではない。「ジム初め」がいつになるか、まだ分からない。

●三日から読み始めた三遊亭円朝だが、昨日は熱がひどくて本なんざ読む気にもならず、結局三日間で二百ページしか読めなかった。区切りのいいところまで読んだので、この際どうも、仕切り直しをしたい気分である。

 内容としては、中編程度の作品を二編読んでみて、予想以上に物語のエッセンスが同じであった。このままこの味が続くかもと思うと、ちとしんどくなった。どうも、口を変えたい気分である。そんなこんなで、明日からは別の本を読むことにする。

イベントをかっ飛ばす

●昼からイベントがあって、チケットも買ってある。だが体調が回復しないので、かっ飛ばして家で寝ていることにした。イベントよりも、我が身の健康の方が大事である。

●睡眠の合間合間に、論創社三遊亭円朝を少し読む。