2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧
●『鉄道無常』 酒井順子 角川書店 読了。 内容は副題の、「内田百閒と宮脇俊三を読む」の通りである。ふたりの著作の内容をそれぞれの生涯の時系列に合わせて並べて、ときには単独で、ときには両者を比較しながら読んでゆく。 著者はそこに、変化を嫌い失わ…
●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十二回として、第五巻から長編「滅びた世界」を読んだ。訳者は大佛次郎である。 四十年ほど昔、子供向けの訳で読んで以来である。当然内容はまるで覚えていないので初読同然。これが予想以上に面白かっ…
●『女王蜂』 横溝正史 角川文庫 読了。 とあるきっかけがあって、多分三回目の再読。昭和二十六年に、雑誌「キング」に連載された作品である。「新青年」や「宝石」といったマニア向けではない一般向けの娯楽誌なので、正史はその辺も意識して物語を作ってい…
●『わが王国は霊柩車』 C・ライス ポケミス 読了。 猟奇大量殺人を思わせる不穏な序盤から、やがて事件は奇妙な方向に捻じれてゆく。事件と展開の魅力で読み進めたが、結末でたどり着いた真相の全体像は、残念ながらあまり感銘を受けるものではなかった。気…
●『大怪盗』 九鬼紫郎 カッパ・ノベルス 読了。 カバー袖の著者の言葉に、ルパンの日本版を書いたとある。明治初期の東京と横浜とを舞台に怪盗卍が活躍する内容は、なるほどルパンだわい、と思う。ミステリらしい趣向をいくつも盛り込んだ外連味のある展開は…
●『図解 メイド』 池上良太 新紀元社 読了。 ふらりと図書館に出かけ、翻訳ミステリの副読本にでもなるかと思って借りてみた。題名はメイドだが、内容は男女問わず英国ビクトリア朝の使用人に関する基礎知識である。そればかりではなく、当時の社会状況にま…
●『闇の展覧会-敵』 K・マッコーリー編 ハヤカワ文庫 読了。 約四十年前に刊行された、書きおろし怪奇小説アンソロジーの再刊だそうで。本書だって十六年物の積ん読であるが。上下巻だったものが三巻本に再編されている。 一番気に入ったのは、クリフォー…
●『大聖堂の殺人』 M・ギルバート 長崎出版 読了。 私の好み直撃で、面白い面白い。捜査陣が関係者に対する尋問を積み重ね、その結果を基にディスカッションを繰り返す。そこでは関係者の分刻みの行動が検討される。大聖堂周辺の見取り図が何度か挿入され、…
●『灰色の手帳』 仁木悦子 論創社 読了。 仁木悦子少年小説コレクションの第一巻である。収録作中で一番気に入ったのは、中学生の雄太郎、悦子兄妹が登場する「みどりの香炉」であった。小品ではあるがきちんとミステリの結構を備えているのが好みに合ってい…
●『怪盗ニック全仕事4』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。 準レギュラーの新キャラクターが登場したり、恋人グロリアとの関係が変化したりといった、シリーズ全体の大きな動きが味わえるのも「全仕事」の魅力である。第三巻のときにも書いたけれども、東…
●『悪霊の群』 山田風太郎/高木彬光 出版芸術社 読了。 相次いで起きる殺人事件にはミステリらしい趣向が仕掛けられているし、複雑な事件の裏面に潜む意外さも十分である。けれども、謎解きのロジックを楽しむような作品ではない。スリラー色が強く、物語に…
●『怪奇クラブ』 A・マッケン 創元推理文庫 読了。 著者はスティーヴンスンの「新アラビア夜話」を意識していたそうで。なるほどと頷ける都市奇譚である。主人公格の人物はふたりいて、彼らが街で遭遇した見知らぬ人物達から奇怪な話を聴くという、枠物語の…
●『密室遊戯』 鮎川哲也/島田荘司編 立風書房 読了。 「ミステリーの愉しみ」の第二巻である。収録されているのは、すでに過去のアンソロジーにも採られた名作、代表作が多い。論創ミステリ叢書のおかげもあって、大半の作品が既読であった。けれども、名作…