累風庵閑日録

本と日常の徒然

2021-01-01から1年間の記事一覧

『犬神家の一族 4Kデジタル修復版』

●独り部屋にこもって年を越すのが嫌だったので、ちょいと出かけることにする。独りビジネスホテルにこもって年を越すのである。 という取り組みを今まで何年もやってきたのだが、去年はあの伝染病のせいでやむを得ず自宅にこもった。今年は今のところウイル…

年内最後

●『文藝別冊 岡本綺堂』 KAWADE夢ムック 読了。 半七捕物帳の原型版だの戯曲版だのが貴重。それとは別に、収録されている怪談がしみじみと不気味。 ●定期でお願いしている本が届いた。『霜月信二郎探偵小説選』 論創社『ピーター卿の遺体検分記』 D・…

『魔の配剤』 O・クック ソノラマ文庫

●『魔の配剤』 O・クック ソノラマ文庫 読了。 巻末解説によると、ハーバート・ヴァン・サールが編纂した二十二編収録の怪奇小説アンソロジーから十二編を選んだものだそうで。ついでに、序文では「拷問にまつわる話、常軌を逸するサディズムの話、残酷きわ…

『日本の歴史をよみなおす(全)』 網野善彦 ちくま学芸文庫

●『日本の歴史をよみなおす(全)』 網野善彦 ちくま学芸文庫 読了。 日本に関する新鮮な観方を教えてくれるエキサイティングな本であった。とうてい要約することはできないので、いくつかの章を例として挙げておく。 第三章「畏怖と差別」では、国宝の絵巻…

『ミステリアス・クリスマス』 パロル舎

●『ミステリアス・クリスマス』 パロル舎 読了。 題名の通り、クリスマステーマの怪奇小説アンソロジーである。もう何年も前から、この季節になると読もう読もうと思いながら幾星霜。今年になってようやく読めた。 気に入った作品は以下のようなところ。民話…

『銀座ミステリー傑作選』 三好徹他 河出文庫

●『銀座ミステリー傑作選』 三好徹他 河出文庫 読了。 テーマアンソロジーは、どうかすると似たような味の作品ばかりになってしまう。本書のくくりは「銀座」という緩いものなので、多様な作品を飽きずに楽しめた。 気に入った作品はこんなところ。語り口が…

「妖星人R」

●光文社文庫の江戸川乱歩『怪人と少年探偵』を、年明けくらいまでかけて細切れに読んでいくことにする。今日は「妖星人R」を読んだ。 シリーズのこれまでの作品では、怪現象はひとつひとつ理論で説明されていた。それがときには机上の空論めいた理論である…

『新・餓狼伝 巻之五』 夢枕獏 フタバノベルス

●『新・餓狼伝 巻之五』 夢枕獏 フタバノベルス 読了。 積ん読だった巻之三から巻之五まで、二日間で一気読み。出てくる格闘家達が人間離れした超人なので、どうかすると読んでいて白々しくなりそうなところ、このシリーズはこっちが醒める間もなく大変な熱…

『青の殺人』 E・クイーン 原書房

●『青の殺人』 E・クイーン 原書房 読了。 巻末解説によると、実際の作者はE・D・ホックだそうで。さすが才人ホック、なんともそつなく私立探偵小説風の味わいに仕立てている。こういうタイプのミステリは久しぶりなので、もうそれだけで新鮮で嬉しい。典…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第二十回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十回として、引き続き第四巻を読んでゆく。今回は、中編「コロスコ號の悲劇」を読む。 ナイル川観光船「コロスコ號」が、回教徒に襲撃された。捕虜になった観光客一行は炎熱の砂漠のなかを、何処へとも…

『マイアミ沖殺人事件』 D・ホイートリー 中央公論社

●『マイアミ沖殺人事件』 D・ホイートリー 中央公論社 読了。 新刊当時、喜んで買ってすぐに読んだ。読了後は、こんな手がかりで分かるわけないだろ、と釈然としない思いが残ったものだ。それが今になってなぜ再読か。ながらく積ん読だった全四巻の捜査ファ…

『暴徒裁判』 C・ライス ポケミス

●『暴徒裁判』 C・ライス ポケミス 読了。 展開の速さと広がりとがただ事ではない。題名にあるように暴徒が関わってきてマローン一行に危機が迫るのだが、緊迫感よりも物語を転がすスピード感が優先されているようだ。 造形が際立っているキャラクターが多…

『納骨堂の多すぎた死体』 E・ピーターズ 原書房

●『納骨堂の多すぎた死体』 E・ピーターズ 原書房 読了。 題名の通り、納骨堂で発見された死体を巡るミステリである。だが、作者の力点は事件と同程度に、思春期の少年の揺れ動く心情と親子の絆とにも注がれているようだ。申し訳ないがそういうのは求めてい…

『子供たちの探偵簿3 夜の巻』 仁木悦子 出版芸術社

●『子供たちの探偵簿3 夜の巻』 仁木悦子 出版芸術社 読了。 長編「灯らない窓」は、大人と子供とがそれぞれ事件に取り組む様子が交互に綴られる。片方しか知らない情報もあれば、両方同じ対象を観ているのに視点が異なる情報もある。ふたつのアプローチが…

今月の総括

●今月の総括。買った本:十一冊読んだ本:十一冊 文フリがあると当然のように購入数は増えてしまう。

「怪の物」

●学研M文庫の『ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語』を手に取った。五百ページのこの本を一気に通読するのはしんどいので、来年にかけて細切れで読んでいこうと思う。 まずはエドモンド・ドウニイ「怪の物」を読む。あやしのもの、と振り仮名がしてある。要する…

偏愛横溝短編を語ろう

●ツイッターのスペース機能を使って、「偏愛横溝短編を語ろう」という企画を不定期に開催している。複数の語り手が参加して、一般的な評価や知名度に関係なくただただ自分が好きな作品の魅力を語る企画である。 今までに三回実施し、各回ともだいたい五人程…

『<アルハンブラ・ホテル>殺人事件』 I・オエルリックス 論創社

●『<アルハンブラ・ホテル>殺人事件』 I・オエルリックス 論創社 読了。 割と地味な事件が途中から、(伏字)による殺人なんて趣向になってくる。ところがその方向で不可能興味を前面に出して盛り上げるかと思いきや、そうでもなく。物語の力点は、準主人…

東京文学フリマ

●東京文フリでお手伝い、兼委託本の頒布をしてきた。そこで買った本。『CRITICA vol.16』 探偵小説研究会編著『不思議の達人(上)』 G・バージェス ヒラヤマ探偵文庫『虹の秘密』 加藤朝鳥 ヒラヤマ探偵文庫『姿なき祭主』 G・ブリストウ&…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第十九回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第十九回として、引き続き第四巻を読んでゆく。今回は、医者とその周辺とを題材にした短編集「紅き燈火を繞りて」から、後半の六編である。 面白かったのは、音と声とで読者の想像を刺激しながらじわじわと…

『ねずみとり』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『ねずみとり』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 戯曲である。以前小説版を読んでいたので、真相に対する驚きは無い。けれども初読なら十分楽しめると思う。全体としてクリスティーの上手さに感心する。そもそも、吹雪に閉じ込められた旅館に個性…

『悪の断面』 N・ブレイク ハヤカワ文庫

●『悪の断面』 N・ブレイク ハヤカワ文庫 読了。 田舎のホテルに滞在している科学者一家。外国のスパイが科学者の発明を狙っていた。やがてスパイ組織は彼の娘を誘拐し、発明を渡すよう脅迫してきた。 敵側の一味は最初から明らかにされている。メインの謎…

『その死者の名は』 E・フェラーズ 創元推理文庫

●『その死者の名は』 E・フェラーズ 創元推理文庫 読了。 デビュー作にしてこんな、(伏字)い結末を持ってくるとは、さすがフェラーズである。記しておきたいことは主に真相と結末についてなので、今日の公開日記はこれだけ。

『毒の矢』 横溝正史 角川文庫

●『毒の矢』 横溝正史 角川文庫 読了。 今晩十八時から「毒の矢」の朗読ライブが開催されるのに向けて予習しておく。ついでに同時収録の「黒い翼」も再読して、本一冊読んだことにする。 前回読んだのは八年前。光文社文庫から出た『金田一耕助の帰還』に収…

『九つの銅貨』 W・デ・ラ・メア 福音館文庫

●『九つの銅貨』 W・デ・ラ・メア 福音館文庫 読了。 全十七編を収録した童話集から五編を選んだそうで。出てくる人間達はそれぞれ個性豊かである。たとえば妖精の跳梁に腹が立つあまりノイローゼになった男。他人の幸せが憎くてしょうがない老人。一生を家…

「怪人と少年探偵」

●光文社文庫の江戸川乱歩『怪人と少年探偵』を、年明けくらいまでかけて細切れに読んでいくことにする。今日は表題作を読んだ。少年探偵団シリーズってのはこんな話、というテンプレートみたいな作品。単行本初収録だというから、ともかく読めるという意義は…

『もうひとりのぼくの殺人』 C・ライス 原書房

●『もうひとりのぼくの殺人』 C・ライス 原書房 読了。 途中までは、どうも捉えどころのない作品であった。主人公が殺人の容疑で警察に追われる身となる。ところが実際に疑いがかかっているのは、全く記憶にない別人としてであった。自分は二重人格で、無自…

『エラリー・クイーンの国際事件簿』 E・クイーン 創元推理文庫

●『エラリー・クイーンの国際事件簿』 E・クイーン 創元推理文庫 読了。 犯罪実話にはあまり興味がない。悲惨で陰惨で無惨な現実の犯罪の、どこをどのように面白がればいいのか。殺人が面白いのは、架空だからこそである。たまにでくわす犯罪実話は、読むの…

『ノー・ネーム』 W・コリンズ 臨川書店

●『ノー・ネーム』 W・コリンズ 臨川書店 読了。 裕福な貴族の娘だとばかり思っていたのに、実は私生児だと判明した主人公マグダレンとその姉ノラ。題名は、私生児なので一族の姓を名乗る資格がない、すなわち名前がないという意味。 父親が死んだとき、彼…

或る光線

●注文していた本が届いた。『或る光線』 木々高太郎 盛林堂ミステリアス文庫 ●今月の総括。買った本:十一冊読んだ本:十冊