累風庵閑日録

本と日常の徒然

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ギブアップ

●昨日読み始めた本を途中でギブアップした。もうしんどくて読めない。具体的な書名は避けるが、初刊本の帯には「探偵人情ばなし」と謳ってあったという。私の嫌いなお涙頂戴式湿っぽさがないのは助かるけれども、それでもしんどい。 どこにでも転がっている…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第二十四回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十四回として、第五巻から中編「マラコット深海」を読んだ。訳者は和気律次郎である。 予備知識なしで手に取った。海洋冒険小説のつもりでいたら、なんと主人公が遭難してから始まる(伏字)ネタだった…

『闇の展覧会-罠』 K・マッコーリー編 ハヤカワ文庫

●『闇の展覧会-罠』 K・マッコーリー編 ハヤカワ文庫 読了。 怪奇小説アンソロジーの第二巻である。ラッセル・カーク「ゲロンチョン」は、完全無欠なる邪悪を体現する闇の司祭ゲロンチョンの恐怖を描く。こちらでいろいろ解釈が必要な捻った作品よりも、こ…

横溝正史エッセイコレクション

●予約していた本が入荷したという連絡をもらったので、受け取ってきた。『横溝正史エッセイコレクション1』 柏書房『横溝正史エッセイコレクション2』 柏書房『横溝正史エッセイコレクション3』 柏書房 ●ついでに、その書店で見かけた本を衝動買い。『小…

『悪魔の素顔』 中林節三 榊原出版

●『悪魔の素顔』 中林節三 榊原出版 読了。 ヌードモデルの不審な自殺とストリッパーの誘拐事件に、明石弁護士が挑む。謎の美女マタマ夫人は、事件にどう関わっているのか。マタマとは、真珠をそう読ませているそうで。 刊行は昭和三十三年である。内容は時…

『誰がロバート・プレンティスを殺したか』 D・ホイートリー 中央公論社

●『誰がロバート・プレンティスを殺したか』 D・ホイートリー 中央公論社 読了。 捜査ファイル・ミステリーの第二巻である。今回は関係者の手紙を中心に構成されており、捜査ファイルと名乗るのはちと苦しい。前書きによると、この変更は著者自身の意向らし…

『怪盗ニック全仕事5』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『怪盗ニック全仕事5』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。 「クリスマス・ストッキングを盗め」は、ニックシリーズでクリスマスストーリーを書くとなるほどこうなるのか、という佳品。「マネキン人形のウィッグを盗め」は、今何が起きているのかの興味で…

『口笛探偵局』 仁木悦子 出版芸術社

●『口笛探偵局』 仁木悦子 出版芸術社 読了。 「仁木悦子少年小説コレクション」の第二巻である。主人公が悪漢の悪だくみに気付く。危機感を抱いた悪漢が主人公を襲い、殺そうとする。危ういところで助けが駆け付けめでたしめでたし。というパターンがやけ多…

『霧に溶ける』 笹沢左保 光文社文庫

●『霧に溶ける』 笹沢左保 光文社文庫 読了。 これは傑作。事件の広がりっぷりが大変なものである。それぞれの事件に興味深い状況が設定されているし、解決もシンプルで効果的。なにより、奇怪奇天烈な真相が素晴らしい。 前半のある描写にちょっと違和感が…

『猿の肖像』 R・A・フリーマン 長崎出版

●『猿の肖像』 R・A・フリーマン 長崎出版 読了。 事件そのものは地味である。表面的には、犯罪が発覚した時点で犯人は明らかなように見える。なのになぜ、博士はこれほどまでに事件に時間と労力とを割くのか。犯人の正体よりも、博士の調査の意図がどこに…

『悪魔を見た処女』 E・デリコ/C・アンダーセン 論創社

●『悪魔を見た処女』 E・デリコ/C・アンダーセン 論創社 読了。 表題作はなかなかの快作。巻末解説に指摘されているように、確かにロジカルな興味には乏しいし、この真相からするとあれれれ、と思う記述もある。だが、犯人設定のアイデアには大いに満足で…

『秘密箱からくり箱』 都築道夫 光文社文庫

●『秘密箱からくり箱』 都築道夫 光文社文庫 読了。 短編六編と全体の半分を占める中編とで構成されている怪奇小説集である。短編で気に入ったのは、奇妙な捻りの「昇降機」と、あまりにも異様な展開の「無人の境」。中編「朱いろの闇」は、娯楽小説から遠い…

『悪魔はすぐそこに』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫

●『悪魔はすぐそこに』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫 読了。 上手い。まったく上手い。犯人の設定も、手掛かりの出し方も、手掛かりの真の意味から読者の目を逸らす手際も、実に上手い。巻末解説にあるように、再読したら「上手さ」がぎゅうぎゅうに詰…

『パズルの王国』 鮎川哲也/島田荘司編 立風書房

●『パズルの王国』 鮎川哲也/島田荘司編 立風書房 読了。 「ミステリーの愉しみ」の第三巻である。 以下、気に入った作品と気に入ったポイントをいくつか挙げておく。島田一男「殺人演出」は、軽快な文章としっかり書かれた伏線。いろいろ素朴な部分はある…