累風庵閑日録

本と日常の徒然

黒手組変化

●創元推理文庫の戸板康二を途中まで。大部の本なので一気には通読できない。明日から別の本を手に取ることにする。それはそれで厚い本なので、読了は来月に持ち越すことになるだろう。 ●書店に出かけて本を買う。『恐ろしく奇妙な夜』 J・T・ロジャーズ 国…

『ブラックランド、ホワイトランド』 H・C・ベイリー 論創社

●『ブラックランド、ホワイトランド』 H・C・ベイリー 論創社 読了。 がけ崩れの土砂の中から偶然、十数年前に行方不明になった少年と思われる人骨が発見された。文字通り埋もれていた過去の死が、現在に不穏な空気を醸し出す。地味派手ともいうべき展開が…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十二回 「白衣組」

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十二回。今回は第七巻から「白衣組」を読む。舞台は十四世紀半ばのヨーロッパ。イングランドの修道院で養育された主人公アレインが、二十歳になったのを機に実社会での経験を積むべく旅立つ。下賤で、荒…

『吸血鬼飼育法 完全版』 都筑道夫 ちくま文庫

●『吸血鬼飼育法 完全版』 都筑道夫 ちくま文庫 読了。 題名の通り、シリーズキャラクター片岡直次郎が主人公を務める作品を網羅した本である。とにかくもうアイデアてんこ盛り、ツイスト沢山で、物語の密度はただ事ではない。ただただ面白さに奉仕する作品…

『誰?』 A・バドリス 国書刊行会

●『誰?』 A・バドリス 国書刊行会 読了。 実験中の爆発事故に巻き込まれ、どさくさに紛れてソヴィエトに拉致された天才物理学者ルーカス。四カ月後、西側に返還された彼はなんと、半身機械化され頭部は金属の仮面で覆われていた。はたして彼は本物か、それ…

「堕ちたる天女」

●来月、横溝正史読書会を計画している。課題図書は「貸しボート十三号」である。この作品を表題作とする角川文庫には他に二編収録されているので、せっかくだからそっちも読むことにする。今日はひとまず、「堕ちたる天女」を読んだ。 内容をすっかり忘れて…

『殺人者と恐喝者』 C・ディクスン 原書房

●『殺人者と恐喝者』 C・ディクスン 原書房 読了。 事件全体の骨格に関する趣向は、意外ではあるがずるいなあ、と思う。そりゃあないだろう。でも、かまわないのだ。私はカーを依怙贔屓しているので、何を書いてもオッケーである。 結末部分を読むと、会話…

『善意の代償』 B・コッブ 論創社

●『善意の代償』 B・コッブ 論創社 読了。 この本の魅力は、登場人物にある。孤独な老人を無料で住まわせる慈善アパートの住人達がなんとも奇矯で、読んでる間は面白い。特に、話に切れ目がなく途中で尻切れトンボになる女主人マンローと、善意から食後の洗…

『シャーロック・ホームズ健在なり』 長沼弘毅 番町書房

●『シャーロック・ホームズ健在なり』 長沼弘毅 番町書房 読了。 著者のシャーロキアン本も七冊目、今回の内容は主にドイルの伝記である。注記を見ると情報の多くはカーが書いたドイル伝に基づいていようなので、詳しいことはそっちを読んだ方がいいだろう。…

『親指のうずき』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『親指のうずき』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 トミー&タペンスシリーズの第三長編である。ある老女が、老人ホームから退所した。やけに慌ただしく引っ越してその後連絡がつかなくなったことから、タペンスは彼女の身に何かあったのではと心…

『狙った獣』 M・ミラー 創元推理文庫

●『狙った獣』 M・ミラー 創元推理文庫 読了。 心に闇を抱えた主人公が、同じく闇を抱えた過去の友人に付け狙われる。かの人物の狂気は深く憎しみは強く、周囲にまで不安と恐れとを撒き散らし、悲劇を拡散してゆく。主人公の知人が依頼を受けて相手を探し始…

『Gストリング殺人事件』 G・R・リー 国書刊行会

●『Gストリング殺人事件』 G・R・リー 国書刊行会 読了。 真相はどうもとっ散らかっているし、(伏字)することで意外性を演出する手法は私の好みではない。(伏字)という情報を結末近くまで読者に伏せているのも、ずっこけてしまう。個人的読後感として…

『新青年傑作選 第一巻 推理小説編』 中島河太郎編 立風書房

●一夜明ければ新玉の春でございます。本年もよろしくお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。 ●茨城県古河にて年を越す。自宅から遠すぎず近すぎずの距離で手頃なビジネスホテルがある土地、ということで選んだので、この街に何も用事はない。大浴場…

今年の総括

●年内最後の更新である。今年の総括をやる。 ======================== ◆今年一年間で買った本:百八冊読んだ本:百三十二冊 ◆読んだ本の中から特に面白かったもの、記憶に残ったものを挙げておく。順位もコメントも無し。・『正義…

善意の代償

●国内ミステリアンソロジーをゆるゆると読み始めた。傑作選である。ということはつまり、すでに様々なアンソロジーや個人短編集に収録された作品が選ばれているわけで。大半は既読であるが、せっかくだからそれらも再読する。読了は来年に持ち越し。 ●書店に…

『赤屋敷殺人事件』 A・A・ミルン 論創社

●『赤屋敷殺人事件』 A・A・ミルン 論創社 読了。 作品を読むのは四回目。あかね書房の子供向け訳と創元推理文庫と、横溝訳のテキストをこれで二回。さすがに少々作業感があったのは否めない。以下、三年前に横溝訳を読んだ時の日記を再掲しておく。 ==…

『九人の偽聖者の密室』 H・H・ホームズ 国書刊行会

●『九人の偽聖者の密室』 H・H・ホームズ 国書刊行会 読了。 版元が原書房から国書刊行会に変わって再開された、「奇想天外の本棚」の第一巻である。面白かった。だが残念ながら今日はあれこれ感想を書く気力がない。一点だけ。メインのネタは立風書房『ミ…

『アバドンの水晶』 D・ボワーズ 論創社

●『アバドンの水晶』 D・ボワーズ 論創社 読了。 表面に見えている謎、すなわちなぜ犯人は(伏字)するのか? に対する答えが事件の全体像と直結している。結末で明らかになる、その回答の意味するところがなかなかに意外で、巧妙で、悪質であった。事件を…

『ドイル全集 第六巻』 C・ドイル 改造社

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十一回。今回は第六巻から、「『北極星』號の船長」を表題作とする短編集パートを読む。「J・ハバカツク・ヂエフスンの話」は、かの有名なメアリー・セレスト号事件の真相はこうだ、という内容。ちょい…

『ウォリス家の殺人』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫

●『ウォリス家の殺人』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫 読了。 途中で予想外の情報が浮上して事件に新たな光が当てられ、それまで嫌疑の外にいた人物が急に注目され始める。登場人物の輪郭が次第に明確になり、ときには見えなかった側面が見え始め、人物…

『黒魔王』 高木彬光 論創社

●『黒魔王』 高木彬光 論創社 読了。 偶然偶然また偶然で物語を転がしてゆく辺り、いかにも通俗スリラーである。だがそれと同時に、割と堅実な捜査の模様も描かれている。これが乱歩だったら、もっともっと不可能興味と怪奇趣味、変態趣味を盛り込んで犯人の…

『処刑宣告』 L・ブロック 二見文庫

●『処刑宣告』 L・ブロック 二見文庫 読了。 あらかじめ犯行予告の手紙を新聞に送ってくる連続殺人鬼。主人公スカダーは、次のターゲットだと宣告された人物からの依頼で活動を始める。かすかな違和感を起点として殺人鬼の正体に迫るスカダーの推理は、本格…

『永久の別れのために』 E・クリスピン 原書房

●『永久の別れのために』 E・クリスピン 原書房 読了。 (伏字)るというメインのネタが、事件の構造をひっくり返すと同時に犯人に直結している。また、この段階で事件の真の姿が見えてくると、凶器に関する以前の記述が活きてくる。それとは別にとある小道…

『暗闇の梟』 M・アフォード 論創社

●『暗闇の梟』 M・アフォード 論創社 読了。 とにかく展開に起伏が大きく、次々に起きる事件と時々刻々変わってゆく人間関係とが、中だるみする暇もなくぐいぐい読める。ちょっとだけ残念だったのは犯人の計画のキモとなる部分で(伏字)だから、この点は私…

『乱歩とモダン東京』 藤井淑禎 筑摩選書

●『乱歩とモダン東京』 藤井淑禎 筑摩選書 読了。 内容が想像とはちと違っていた。主に関東大震災以降の東京の発展が、乱歩作品への言及と同量かあるいはそれ以上の分量で扱われている。昭和通りの工事の様子を当時の文献から引用したり、文化住宅の戸数や遊…

『八人の招待客』 Q・パトリック 原書房

●『八人の招待客』 Q・パトリック 原書房 読了。 原書房版奇想天外の本棚の、第三巻最終巻である。約百ページの中編が二編収録されている。クリスティーの「そして誰もいなくなった」と同趣向というウリだったからもう少し派手な外連味を期待していたのだが…

『食道楽』 村井弦斎 岩波文庫

●『食道楽』 村井弦斎 岩波文庫 読了。 いやはや、これはしんどかった。メインのストーリーはある登場人物の結婚問題だが、それはむしろ付け足しで。ページの大部分は滔々たる蘊蓄の洪水である。その蘊蓄も料理法だけに止まらず、食材の善し悪しの見極め方、…

女殺し定九郎

●今読んでいる長大な小説を明日には読了できる予定だったが、そうもいかなくなった。思いの外野暮用が多く、読書時間を確保できなかった。それに、はっきりいってあまり面白くないからページをめくる手が止まりがちだし。 ●注文していた本が二方面から届いた…

真珠塔・獣人魔島

●土曜と日曜とで岡山県に行き、「巡・金田一耕助の小径 1000人の金田一耕助」というイベントに参加してきた。例の伝染病のせいで過去二年中止だったのが、今年ようやく三年ぶりの開催であった。実になんとも楽しいイベントだったけれども、詳細は省略。 …

『ほりだし砂絵』 都築道夫 盛林堂ミステリアス文庫

●『ほりだし砂絵』 都築道夫 盛林堂ミステリアス文庫 読了。 しみじみといい本である。作家として、人として、都筑道夫を敬愛する多くの書き手のエッセイが胸に沁みる。一編だけの収録作「お化けかるた」は、読めるということにまず意義がある逸品。情景描写…