累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ソングライターの秘密』 F・グルーバー 論創社

●『ソングライターの秘密』 F・グルーバー 論創社 読了。 物語に流されながら、ジョニーとサムのいつもの活躍を楽しめばよろしい。すいすいと読み終えたら何も残らず、さっと忘れてしまえる。シリーズのいつもの味わいである。ともかくもこれでシリーズ全訳…

『赤屋敷殺人事件』 A・A・ミルン 論創社

●『赤屋敷殺人事件』 A・A・ミルン 論創社 読了。 二年半ぶり三度目。今度の週末に開催される読書会の課題図書なので、メモを取りながら読んだ。とはいってもあまりの読みやすさにすいすい進み、メモは大した量にはならなかったけれども。 今回は主に、横…

「本陣殺人事件」

●角川文庫の横溝正史『本陣殺人事件』から、表題作を読んだ。気付いた点を随時メモしながらゆっくりと読み進める。なぜ今本陣かというと、今度の週末に横溝正史読書会が開催されるからである。課題図書は「本陣殺人事件」と、この作品を書くにあたって正史が…

『すべては<17>に始まった』 J・J・ファージョン 論創社

●『すべては<17>に始まった』 J・J・ファージョン 論創社 読了。 さらりと読める軽スリラー。この先どうなるかの興味よりも、今何が起きているかの興味で読者を引っ張っていくタイプ。ただ、読者にページをめくらせる推進力として最も強く機能している…

『シャーロック・ホームズ 世紀末とその生涯』 H・R・F・キーティング 東京図書

●『シャーロック・ホームズ 世紀末とその生涯』 H・R・F・キーティング 東京図書 読了。 十九世紀末、繁栄の頂点にあった英国は静かに坂を転がり落ち始める。安定と秩序と品位のヴィクトリア朝から、刺激と喧騒と退廃のエドワード朝へ、世の中は移ろって…

『恐怖推理小説集』 鮎川哲也編 双葉新書

●『恐怖推理小説集』 鮎川哲也編 双葉新書 読了。 粒揃いの好アンソロジーであった。いくつか簡単なコメントを付けると、現実と非現実との境界がゆらぐ三橋一夫「蛇恋」と半村良「夢中犯」。読者に嫌な想像を強いる日蔭丈吉「東天紅」と野呂邦暢「剃刀」。ぼ…

『バーネット探偵社』 M・ルブラン 偕成社

●『バーネット探偵社』 M・ルブラン 偕成社 読了。 調査無料を謳うバーネット探偵社。所長ジム・バーネットの正体はもちろんアルセーヌ・ルパンである。シリーズキャラクターのベシュ刑事が難事件に遭遇すると、バーネットは彼を手助けしてたちどころに解決…

『償いの報酬』 L・ブロック 二見文庫

●『償いの報酬』 L・ブロック 二見文庫 読了。 マット・スカダーシリーズである。殺された男は、アルコール依存症克服プログラムの一環として、過去に迷惑をかけた人物をリストアップして贖罪の巡回を重ねていた。リストの中に、過去に受けた仕打ちを忘れず…

『幸せな秋の野原』 E・ボウエン ミネルヴァ書房

●『幸せな秋の野原』 E・ボウエン ミネルヴァ書房 読了 「ボウエン・ミステリー短編集」の第二巻である。とはいってもミステリ色は薄い。いやはやどうも、大変に疲れる本であった。内容をしっかり受け止めるためには、一行一行噛みしめるように読んでいかな…

『真珠の首飾り』 R・V・ヒューリック ポケミス

●『真珠の首飾り』 R・V・ヒューリック ポケミス 読了。 第三公主、すなわち皇帝の三女に命じられて極秘任務に従事する狄判事。第三公主が父皇帝から賜って大事にしていた真珠の首飾りが盗まれたというのだ。身分を隠して潜入捜査を行い、時に襲い来る暴漢…

『螺旋階段』 M・R・ラインハート ハヤカワ文庫

●『螺旋階段』 M・R・ラインハート ハヤカワ文庫 読了。 不審人物が屋敷をうかがい、殺人が起き、さらに頻々と不穏な出来事が続く。そればかりか、何人もの関係者が謎めいた行動をとる。深夜の外出だとか唐突な婚約解消だとか。そうやって物語の起伏は大き…

『踊るドルイド』 G・ミッチェル 原書房

●『踊るドルイド』 G・ミッチェル 原書房 読了。 まず、登場人物が実に魅力的。探偵役で奇矯なブラッドリー夫人、秘書のローラ、運転手のジョージ。最初に事件に巻き込まれた青年オハラと、その友人ガスコイン。中盤以降に事件調査の仲間に加わる、ブラッド…

今月の総括

●この土日に、横溝正史に関係なくもないオフ会で山梨に行ってきた。先々週は北海道に行ったし、今月は尋常ではない濃密で充実した一カ月であった。 ●今読んでいる短編集が、つまらなくはないけれども疲れる。中断して明日から別の本を手に取るかもしれん。実…

『BRUTUS図書館 山田風太郎 風太郎千年史』 新保博久編 マガジンハウス

●『BRUTUS図書館 山田風太郎 風太郎千年史』 新保博久編 マガジンハウス 読了。 二十五年前の刊行である。当時、「妖異金瓶梅」シリーズのうち「銭鬼」が手軽に読めない状態だったので、それが目的で買ったのであった。ところが読まないうちに扶桑社文…

『列をなす棺』 E・クリスピン 論創社

●『列をなす棺』 E・クリスピン 論創社 読了。 若い女優が死亡した。一見して自殺であることは明白である。だが、彼女の住処を荒らした者がいることから、単なる自殺ではなくなにやら犯罪の臭いがする。やがて殺人が起き、割と早い段階で事件の枠組みと動機…

『三味線鯉登』 永瀬三吾 捕物出版

●『三味線鯉登』 永瀬三吾 捕物出版 読了。 主人公のシリーズ探偵役は、辰巳芸者の鯉登。「こいのぼり」ではなく「こいと」と読む。本名が小糸だそうで。侍が嫌いで岡っ引きが嫌い。でも、常廻り同心桐形月之進の家来魚介のことは妙にお気に入り。酒が好きで…

『松風の記憶』 戸板康二 創元推理文庫

●『松風の記憶』 戸板康二 創元推理文庫 読了。 「松風の記憶」 舞台や視点人物を様々に変えながら、長い年月に渡る人間関係の変化と深化とをじっくりとたどってゆく。歌舞伎や踊りの世界を舞台にしており、登場人物達は一般サラリーマンとは異なっているけ…

『狼の一族』 若島正編 早川書房

●某所で開催された某イベント(これじゃあ何がなんだか)に参加するため、月曜に有給休暇を取って土曜から二泊三日で北海道に行ってきた。詳細は、主催者殿が発行する同人誌に収録されるはずである。 ●『狼の一族』 若島正編 早川書房 読了。 異色作家短編集…

『バーニーよ銃をとれ』 T・ケンリック 角川文庫

●『バーニーよ銃をとれ』 T・ケンリック 角川文庫 読了。 主人公は平凡な小市民。インフレと不景気とで家計は火の車である。似たような境遇にある二人の仲間を語らって、ちょっとした詐欺を目論んだ。それが予想を超える展開となり、強大な敵から命を狙われ…

『そして医師も死す』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫

●『そして医師も死す』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫 読了。 人間誰しも、多かれ少なかれ負の要素を持っているだろう。すなわち、卑しさ、愚かさ、臆病さ、幼さ、軽率さ、だらしなさ。登場人物達はそれぞれに様々な負の要素を背負わされて、生々しく描…

『蜃気楼博士』 都筑道夫 本の雑誌社

●『蜃気楼博士』 都筑道夫 本の雑誌社 読了。 都筑道夫少年小説コレクションの第三巻である。表題作は中編一と短編二とで構成されるシリーズ。なかでも第一話「蜃気楼博士」が面白かった。不可能興味が横溢しているし、犯人設定はなるほどと思う。二十二年前…

『夢遊病者の姪』 E・S・ガードナー ハヤカワ文庫

●『夢遊病者の姪』 E・S・ガードナー ハヤカワ文庫 読了。 ペリイ・メイスンシリーズを読むのは数十年ぶり二冊目。前回がいつで何を読んだかは、とうに忘却の彼方である。法廷ものってのはなじみが薄いので、なかなかに新鮮であった。メイスンが駆使するロ…

『夜歩く』 横溝正史 角川文庫

●『夜歩く』 横溝正史 角川文庫 読了。 必要があって、二十年ぶりの再読である。メインの大ネタ以外ほとんど忘れていたのだが、こんなに面白かったか、と驚く。いろいろ書きたいことはあるけれども、なにしろデリケートな扱いが必要な作品だ。真相および中盤…

『霧と雪』 M・イネス 原書房

●『霧と雪』 M・イネス 原書房 読了。 中盤過ぎまでは、なんとも地味な作品である。まず、事件が地味である。被害者が銃で撃たれるが、死にはしない。つまり殺人事件ではなく傷害事件である。現場が不可解な状況になっていたりはしない。題名が示すように季…

『妖説地獄谷』 高木彬光 春陽文庫

●『妖説地獄谷』 高木彬光 春陽文庫 読了。 ゴキゲンな伝奇小説であった。内容は分かりやすく展開が速くて、サクサク読める。おまけに文字が大きいこともあって、予定より早い読了となった。大勢の人々がかつ出会いかつ別れ、あるいは敵対しあるいは手を結び…

更新一時停止

●創元推理文庫の戸板康二を半分まで読んで中断。感想は通読してから。明日からは上下巻トータル七百ページ以上ある本を読み始める。私のペースだと読了まで早くとも五日かかるので、日記の更新はそれまで一時停止します。あしからず。

『コールド・バック』 H・コンウェイ 論創社

●『コールド・バック』 H・コンウェイ 論創社 読了。 基本はメロドラマ。精神に変調を来している妻の、過去の真実を探るために主人公が旅に出る。十九世紀の小説にしては文章が簡潔で読みやすい。おかげで主人公の感情の起伏が素直に伝わってくる。この点は…

『第八の日』 E・クイーン ハヤカワ文庫

●『第八の日』 E・クイーン ハヤカワ文庫 読了。 言葉に対する執拗なまでのこだわりが、いかにもクイーンらしい。そのこだわりは書かれた言葉にも話された言葉にも及ぶ。書かれた言葉については、終盤のとあるネタの放つ皮肉が強烈。話された言葉については…

『紅鶴提燈』 島本春雄 捕物出版

●『紅鶴提燈』 島本春雄 捕物出版 読了。 振袖小姓捕物控の第二巻である。第一巻を読んだ経験から、期待値をかなり下げて臨んだ。少々いい加減でもずっこけていても、どんとこいである。物語の途中で発生する殺しは本筋とはなんの関係もなかった、なんて真相…

海底宝窟

●東京文学フリマで、出店者殿のお手伝いとして売り子をやってきた。それはそれとして、会場で買った本。『海底宝窟 完全版』 押川春浪 盛林堂ミステリアス文庫『地獄の門 完全版』 M・ルヴェル エニグマティカ叢書『鼠小僧次郎吉』 国枝史郎 書肆銀月亭『横…