累風庵閑日録

本と日常の徒然

『クロームハウスの殺人』 G.D.H&M・コール 論創社

●『クロームハウスの殺人』 G.D.H&M・コール 論創社 読了。 探偵役の主人公はミステリに興味はあるものの探偵活動の経験はなく、論理的な推理もあまりお得意ではないようだ。とある人物を、人相が悪いという理由で最重要容疑者に据えたりする。犯人設…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第二十五回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十五回として、第五巻から短編三作品を読んだ。訳者は全て和気律次郎である。「分解機」はチャレンジャー教授もので、教授の破天荒な造形が活かされている好編。十ページほどの分量を切れ味で読ませる。…

第十回オンライン横溝正史読書会『支那扇の女』

●第十回オンライン横溝正史読書会を開催した。課題図書は『支那扇の女』。昭和三十五年に単行本として刊行された作品である。併せて原形となった同題短編と、さらにその祖型である短編『ペルシャ猫を抱く女』も対象とする。 参加者は私を含めて十人。会では…

『支那扇の女』 横溝正史 角川文庫

●『支那扇の女』 横溝正史 角川文庫 読了。 明日開催される、オンライン横溝正史読書会の課題図書である。対象は表題作だけなのだが、一冊の本として通読するために同時収録の「女の決闘」も読んだ。どうもこれはあっけなくて、あまり高い点数は差し上げられ…

『シャーロック・ホームズの挨拶』 長沼弘毅 文藝春秋

●『シャーロック・ホームズの挨拶』 長沼弘毅 文藝春秋 読了。 残念ながら、今回はあまり興味を惹かれない題材が多かった。読んだと称するのが申し訳ないほど、目が活字の上を滑ってゆくばかりであった。第四章「ベイカー・ストリートの部屋を覗く」で提示さ…

『相良一平捕物帳』 森達二郎 春陽文庫

●『相良一平捕物帳』 森達二郎 春陽文庫 読了。 事前情報一切なしに手に取ったので、この作家がどういう人物なのかは知らん。読んだ感じでは、なかなか手慣れていてそつのない書きっぷりである。刊行は昭和四十八年。 主人公相良一平はきりりとした男前の同…

『心地よく秘密めいた場所』 E・クイーン ポケミス

●『心地よく秘密めいた場所』 E・クイーン ポケミス 読了。 クイーンは最後までクイーンであった。数字の九への執拗なこだわりも、人間関係を制限する奇妙な条件も、動かされた机という題材も、探偵クイーンと手掛かりとの関係も、どれもこれもどこかで読ん…

『犯罪都市』 川本三郎編 平凡社

●『犯罪都市』 川本三郎編 平凡社 読了。 「モダン都市文学」の第七巻である。近代になって成立した、従来の村落共同体とは異なる都市空間における犯罪をテーマにしたアンソロジーである。本書の大きな意味は、横溝正史が参加したリレー小説「諏訪未亡人」お…

『デイヴィッドスン事件』 J・ロード 論創社

●『デイヴィッドスン事件』 J・ロード 論創社 読了。 犯人の真の目的が(伏字)だということは、割と早い段階で想像できた。それに気づくと、全体のおおまかな構造が浮かんでくる。したがって興味の焦点は真相の意外性にではなく、具体的な犯行の段取りにあ…

『マッド・サイエンティスト』 S・D・シフ編 創元推理文庫

●『マッド・サイエンティスト』 S・D・シフ編 創元推理文庫 読了。 題名の通り、サイエンスにのめり込んで一線を踏み越えた者達をテーマにしたアンソロジーである。三十年以上昔に読んで以来の再読で、よほど印象に残った作品以外はきれいさっぱり忘れてい…

『サンセット77』 R・ハギンズ ポケミス

●『サンセット77』 R・ハギンズ ポケミス 読了。 私立探偵スチュアート・ベイリーが主人公の中編が三編収録されている。詳しくは知らんが、もとはテレビドラマらしい。とはいっても、本書はノベライズではないそうな。 第一話「死は雲雀に乗って」がなか…

ギブアップ

●昨日読み始めた本を途中でギブアップした。もうしんどくて読めない。具体的な書名は避けるが、初刊本の帯には「探偵人情ばなし」と謳ってあったという。私の嫌いなお涙頂戴式湿っぽさがないのは助かるけれども、それでもしんどい。 どこにでも転がっている…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第二十四回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十四回として、第五巻から中編「マラコット深海」を読んだ。訳者は和気律次郎である。 予備知識なしで手に取った。海洋冒険小説のつもりでいたら、なんと主人公が遭難してから始まる(伏字)ネタだった…

『闇の展覧会-罠』 K・マッコーリー編 ハヤカワ文庫

●『闇の展覧会-罠』 K・マッコーリー編 ハヤカワ文庫 読了。 怪奇小説アンソロジーの第二巻である。ラッセル・カーク「ゲロンチョン」は、完全無欠なる邪悪を体現する闇の司祭ゲロンチョンの恐怖を描く。こちらでいろいろ解釈が必要な捻った作品よりも、こ…

横溝正史エッセイコレクション

●予約していた本が入荷したという連絡をもらったので、受け取ってきた。『横溝正史エッセイコレクション1』 柏書房『横溝正史エッセイコレクション2』 柏書房『横溝正史エッセイコレクション3』 柏書房 ●ついでに、その書店で見かけた本を衝動買い。『小…

『悪魔の素顔』 中林節三 榊原出版

●『悪魔の素顔』 中林節三 榊原出版 読了。 ヌードモデルの不審な自殺とストリッパーの誘拐事件に、明石弁護士が挑む。謎の美女マタマ夫人は、事件にどう関わっているのか。マタマとは、真珠をそう読ませているそうで。 刊行は昭和三十三年である。内容は時…

『誰がロバート・プレンティスを殺したか』 D・ホイートリー 中央公論社

●『誰がロバート・プレンティスを殺したか』 D・ホイートリー 中央公論社 読了。 捜査ファイル・ミステリーの第二巻である。今回は関係者の手紙を中心に構成されており、捜査ファイルと名乗るのはちと苦しい。前書きによると、この変更は著者自身の意向らし…

『怪盗ニック全仕事5』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『怪盗ニック全仕事5』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。 「クリスマス・ストッキングを盗め」は、ニックシリーズでクリスマスストーリーを書くとなるほどこうなるのか、という佳品。「マネキン人形のウィッグを盗め」は、今何が起きているのかの興味で…

『口笛探偵局』 仁木悦子 出版芸術社

●『口笛探偵局』 仁木悦子 出版芸術社 読了。 「仁木悦子少年小説コレクション」の第二巻である。主人公が悪漢の悪だくみに気付く。危機感を抱いた悪漢が主人公を襲い、殺そうとする。危ういところで助けが駆け付けめでたしめでたし。というパターンがやけ多…

『霧に溶ける』 笹沢左保 光文社文庫

●『霧に溶ける』 笹沢左保 光文社文庫 読了。 これは傑作。事件の広がりっぷりが大変なものである。それぞれの事件に興味深い状況が設定されているし、解決もシンプルで効果的。なにより、奇怪奇天烈な真相が素晴らしい。 前半のある描写にちょっと違和感が…

『猿の肖像』 R・A・フリーマン 長崎出版

●『猿の肖像』 R・A・フリーマン 長崎出版 読了。 事件そのものは地味である。表面的には、犯罪が発覚した時点で犯人は明らかなように見える。なのになぜ、博士はこれほどまでに事件に時間と労力とを割くのか。犯人の正体よりも、博士の調査の意図がどこに…

『悪魔を見た処女』 E・デリコ/C・アンダーセン 論創社

●『悪魔を見た処女』 E・デリコ/C・アンダーセン 論創社 読了。 表題作はなかなかの快作。巻末解説に指摘されているように、確かにロジカルな興味には乏しいし、この真相からするとあれれれ、と思う記述もある。だが、犯人設定のアイデアには大いに満足で…

『秘密箱からくり箱』 都築道夫 光文社文庫

●『秘密箱からくり箱』 都築道夫 光文社文庫 読了。 短編六編と全体の半分を占める中編とで構成されている怪奇小説集である。短編で気に入ったのは、奇妙な捻りの「昇降機」と、あまりにも異様な展開の「無人の境」。中編「朱いろの闇」は、娯楽小説から遠い…

『悪魔はすぐそこに』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫

●『悪魔はすぐそこに』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫 読了。 上手い。まったく上手い。犯人の設定も、手掛かりの出し方も、手掛かりの真の意味から読者の目を逸らす手際も、実に上手い。巻末解説にあるように、再読したら「上手さ」がぎゅうぎゅうに詰…

『パズルの王国』 鮎川哲也/島田荘司編 立風書房

●『パズルの王国』 鮎川哲也/島田荘司編 立風書房 読了。 「ミステリーの愉しみ」の第三巻である。 以下、気に入った作品と気に入ったポイントをいくつか挙げておく。島田一男「殺人演出」は、軽快な文章としっかり書かれた伏線。いろいろ素朴な部分はある…

今月の総括

●今月の総括。買った本:九冊読んだ本:十冊 下旬までは快調に読めていたのだが、ドイルにてこずったせいで予定以上の冊数にはならなかった。 ●書店に出かけて本を買う。『レオ・ブルース短編全集』 L・ブルース 扶桑社ミステリー

『ブランディングズ城のスカラベ騒動』 P・G・ウッドハウス 論創社

●『ブランディングズ城のスカラベ騒動』 P・G・ウッドハウス 論創社 読了。 ウッドハウスはどれを読んでも構成が驚異的である。個性的な人々が、複雑に影響しあって物語を紡いでゆく。いくらなんでもそんな偶然、なんてツッコミは野暮である。登場人物の性…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第二十三回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十三回として、第五巻から長編「霧の世界」を読んだ。訳者は横溝正史である。実際はただの名義貸しらしいが。 いやはや、これはしんどかった。内容を一言で表すなら、交霊術は本物だった! 作者の力点が…

『シャーロック・ホームズ秘聞』 長沼弘毅 文藝春秋

●『シャーロック・ホームズ秘聞』 長沼弘毅 文藝春秋 読了。 残念ながら今回はどうも低調であった。世界各地のシャーロキアン達との交流を記した章は微笑ましくはあるけれども、私の興味からはやや外れていた。私がホームズ雑学本に求めるのは、作品を深く理…

『NかMか』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『NかMか』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 枠組みは単純である。作中の時期は第二次大戦中。海辺の保養地にある「無憂荘」に、ドイツのスパイ組織の重要人物が潜り込んでいるらしい。下宿人として「無憂荘」に滞在し、敵の正体を暴け! 作中…