累風庵閑日録

本と日常の徒然

『白昼艶夢』 朝山蜻一 出版芸術社

●『白昼艶夢』 朝山蜻一 出版芸術社 読了。 個人短編集の中には、内容が濃過ぎたり好みに合わなかったりで通読に骨の折れるものがある。本書がまさしくそのタイプで、いやどうも、疲れた。 とはいっても気に入った作品はある。「不思議な世界の死」、「変面…

『十二の奇妙な物語』 サッパー 論創社

●『十二の奇妙な物語』 サッパー 論創社 読了。 全体として、なんと素朴な作品集であることか。扱われているテーマは、愛するが故の嘘、義務と愛との相克、自己犠牲、裏切りと復讐、等々。外連味もなく、全体をひっくり返すような捻りもなく、それらのテーマ…

「殺人者はまだ来ない」

●某図書館から、お願いしていたコピーが届いた。予想よりも早い対応で、ありがたいことである。ブツは雑誌『EQ』に連載された、イザベル・マイヤーズの「殺人者はまだ来ない」全三回である。 去年論創社から出た『疑惑の銃声』は、ミステリとは次元の違う…

『天狗岬殺人事件』 山田風太郎 出版芸術社

●『天狗岬殺人事件』 山田風太郎 出版芸術社 読了。 「山田風太郎コレクション」の第一巻である。以下、気に入った作品にちょっとだけコメントを付ける。 ガス栓に(伏字)というネタが嬉しい「この罠に罪ありや」。全体的にナンセンスながらミステリの結構…

『グリーン・マン』 K・エイミス 早川書房

●『グリーン・マン』 K・エイミス 早川書房 読了。 長編怪奇小説である。一応は。M・R・ジェイムズが扱いそうな題材に現代的な味付けを施して長編に仕立てたような作品。現代イギリスの酒場兼宿屋「グリーン・マン」に、十七世紀に死んだはずの学者の幽霊…

『古書ミステリー倶楽部III』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●『古書ミステリー倶楽部III』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。 同一テーマのアンソロジーも三冊目ともなると、作品選択に苦労の跡がうかがえる。全ての文学はミステリである、と言ったのは阿刀田高だったか誰だったか記憶が曖昧だけれども、そ…

来週か再来週

●某図書館からようやく、コピー代金の納入通知書が届いた。直ちに手配をしたが、今日は土曜日である。実際に入金されるのは週明けになるだろう。その後コピー作業を行って郵送となると、ブツを入手できるのは早くても来週半ばになる。同封の書面には、入金確…

『岡村雄輔探偵小説選I』 論創社

●『岡村雄輔探偵小説選I』 論創社 読了。 収録作中のベストは「盲目が来りて笛を吹く」であった。ただし百点満点ではなくて、(伏字)過ぎるという部分に不満はある。犯人の計画の、根本的な部分でも引っかかりを感じる。が、それ以外は伏線沢山だし推理の…

『鉄仮面』 ボアゴベ 講談社文芸文庫

●『鉄仮面』 ボアゴベ 講談社文芸文庫 読了。 面白い。面白いぞボアゴベ。すっかり見直してしてしまった。冗長で退屈だろうとの事前の予想を大きくはずれて、いやもう、面白いのなんの。ボアゴベをミステリ作家の枠で捉えるのは間違っているのかもしれない。…

今月の総括

●今月の総括。買った本:十二冊読んだ本:十冊 今年になって、古本を六冊買った。そのうち四冊が今月の購入である。そのせいで購入総数が増えてしまった。読む方は、終盤にボアゴベなんて大物に手を出してしまったので、十一冊は読めなかった。

臆病一番首

●書店に出かけて本を買う。 『臆病一番首』 山本周五郎 新潮文庫 新発見の現代ミステリが二編収録されているというのをツイッターで知ったので、早速購入。ツイッターは有益な情報が得られて、つくづくありがたいことである。 ●お願いしていた本が届いた。 …

「片耳の男」

●某図書館から、昭和二十五年十二月に『少女サロン』に掲載された、横溝正史「片耳の男」のコピーが届いた。初出は昭和十四年九月の『少女の友』で、原題は「七人の天女」である。その後、昭和二十九年に偕成社の『青髪鬼』に「片耳の男」の題で、昭和三十年…

名探偵カッレ

●書店に寄って本を買う。 『見知らぬ者の墓』 M・ミラー 創元推理文庫 『生まれながらの犠牲者』 H・ウォー 創元推理文庫 『名探偵カッレ 城跡の謎』 A・リンドグレーン 岩波書店 ●ボアゴベ『鉄仮面』が、予想を大きく上回って面白い。ページが順調に進ん…

当分書けない

●今日から、講談社文芸文庫のボアゴベ『鉄仮面』を読み始めた。上下巻でトータル千二百ページを超える大部の代物である。私の読書ペースだと、順調にいっても一週間はかかるだろう。したがって、当分の間読了日記は書けないことになる。あしからず。 ●先日コ…

『魔女の不在証明』 E・フェラーズ 論創社

●『魔女の不在証明』 E・フェラーズ 論創社 読了。 いわゆるロマンティックサスペンス風味の作品。主人公が嘘をつき情報を隠すことで物語を維持する手法は、私の好みから遠く遠く隔たっている。途中からもうすっかり醒めてしまって、犯人も真相も、割とどう…

第十五回「横溝正史が手掛けた翻訳を読む」

●午前中は野暮用。 ●帰宅して昼寝してから、横溝プロジェクト「横溝正史が手掛けた翻訳を読む」の第十五回をやる。 ◆「砂嚢」 バロネス・オルチ (昭和十年『新青年増刊』) レディ・モリーの事件簿シリーズの一編。一年前、裕福な女主人が殺された。今は弟…

『甦る名探偵』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●『甦る名探偵』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。 角田喜久雄「霊魂の足」がベスト。複雑な犯罪の経緯がよく考えられている。梅雨時の湿気に悩まされる加賀美の様子が執拗に描かれ、この作者らしいねっとりとした雰囲気が迫ってくる。そして、ビー…

織姫かえる

●注文していた本が届いた。 『ルパン、100億フランの炎』 ボワロ=ナルスジャック サンリオ 『織姫かえる』 泡坂妻夫 文藝春秋 久しぶりの古本買いである。宝引の辰捕者帳の最終巻は文庫落ちを待っていたのだが、もういい加減待てなくなってしまった。

『ランポール弁護に立つ』 J・モーティマー 河出書房新社

●『ランポール弁護に立つ』 J・モーティマー 河出書房新社 読了。 法曹界を舞台に、様々な人生模様をちょっとした皮肉とユーモアとを交えて描く人情噺、ってなところ。登場人物達の個性が際立っているし、ちょいちょい笑えるところもあるしで、読んでいて退…

『紫甚左捕物帳』 横溝正史 今日の問題社

●『紫甚左捕物帳』 横溝正史 今日の問題社 読了。 十一月に捕物出版から刊行予定の『不知火捕物双紙』に、紫甚左も収録されるという。そっちで読んでもいいのだが、せっかく買ったのだからこっちで読む。収録作は紫甚佐シリーズの二編「富籤五人男」、「妻恋…

八人の招待客

●電車に乗って街に出て、書店に寄って本を買う。 『八人の招待客』 Q・パトリック 原書房 ●今回出かけた目的は、本の購入以外にふたつある。某施設を覗いてみることと、某美術館の展示を観ること。ところが途中で気が変わった。散歩がてら某施設の場所だけ…

『蘭郁二郎探偵小説選I』 論創社

●『蘭郁二郎探偵小説選I』 論創社 読了。 からりとして明るいトーンの文章がやけに読みやすい。論創ミステリ叢書で時々出くわす、妙にねちこい文章や文学臭をまとわりつかせた文体に比べると、もうそれだけで好感が持てる。 月澤俊平シリーズが、予想以上の…

『大はずれ殺人事件』 C・ライス ハヤカワ文庫

●『大はずれ殺人事件』 C・ライス ハヤカワ文庫 読了。 安心して楽しく読める、ライス印の秀作。序盤は、単純なテーマのように思える。殺人予告を公言した人物が、その後実際に発生した殺人事件の犯人かどうか。ところが物語はたちまちのうちに発展し、拡散…

『キャッスルフォード』 J・J・コニントン 論創社

●『キャッスルフォード』 J・J・コニントン 論創社 読了。 途中で大まかな真相に気付いてしまったので、意外さは感じなかった。けれど、ミステリを面白くする要素が存分に詰め込まれており、読んでいる間はとても充実した時間であった。その要素とはたとえ…

『正木不如丘探偵小説選II』 論創社

●『正木不如丘探偵小説選II』 論創社 読了。 長編「血の悪戯」がなかなか快調。大平刑事とダンサー宵の明星との会話が、思いがけず軽快でさくさく読める。どことなく漂うとぼけた味わいも好ましい。大平の隣室に住んでいる、病院からこっそり脳みそを持ち…

『恐怖通信』 中田耕治編 河出文庫

●『恐怖通信』 中田耕治編 河出文庫 読了。 バラエティに富んで上出来な怪奇小説アンソロジー。気に入った作品を、一言だけコメントを添えて並べる。 まあそうなるわな、とは思うが捻りの存在そのものが嬉しい、オーガスト・ダーレス「幽霊」。些細な記述が…

『でかした、ジーヴス!』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会

●『でかした、ジーヴス!』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会 読了。 構成の妙を味わう作品集。伏線や物事相互の意外なつながりの面白さは、ミステリに通じるものがある。だが、ジーヴスが問題を解決する手際の鮮やかさ意外さは、名探偵が難事件を解決する手…

魔女の不在証明

●お願いしていた本が届いた。 『キャッスルフォード』 J・J・コニントン 論創社 『魔女の不在証明』 E・フェラーズ 論創社 ●今月の総括。 買った本:十二冊 読んだ本:十一冊 論創ミステリ叢書を四冊読めたのが、まあ上出来。

血染めの旅籠

●書店に寄って本を買う。 『血染めの旅籠』 南絛範夫 創元推理文庫 『幽霊島』 A・ブラックウッド他 創元推理文庫 『モダニズム・ミステリ傑作選』 長山靖生編 河出書房新社 『ジーヴスの世界』 森村たまき 国書刊行会 ●国書刊行会のウッドハウス短編集を読…

『葛山二郎探偵小説選』 論創社

●『葛山二郎探偵小説選』 論創社 読了。 描写のくどさがしんどい作品もあるし、ページ数が足りないのかいろいろ置いてきぼりになっているような作品もある。だが概ねは佳作・秀作・傑作で、全体として上出来の短編集であった。捻りと切れ味、伏線とロジック…