累風庵閑日録

本と日常の徒然

『カマフォード村の哀惜』 E・ピーターズ 長崎出版

●『カマフォード村の哀惜』 E・ピーターズ 長崎出版 読了。 殺人をメインの題材にしているから、ミステリではある。だが、作者が書きたかったのはそれだけではないようだ。作中で扱われているのは、少年の成長、親子の絆、舞台となった村の住人達の様々な想…

偏愛横溝短編を語ろう

●多くの横溝正史ファンのご協力をいただいて、同人誌『偏愛横溝短編を語ろう』をまとめた。八人の執筆者が横溝正史の短編小説のなかからいくつかを採り上げ、その魅力を語る本である。採用基準は一般的な評価としての傑作かどうかに関係なく、ただただ自分が…

不死鳥と鏡

●定期でお願いしている本が届いた。『不死鳥と鏡』 A・デイヴィッドスン 論創社『平和を愛したスパイ』 D・E・ウェストレイク 論創社 ●今月の総括。買った本:六冊読んだ本:十冊

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第二十八回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十八回。今回からジェラールシリーズの続編、「ジエラール旅團長の冒險録」を読み始める。ただ、どうも気分が乗らず、半分の四編だけを読んで打ち止めとする。残りの四編は来月読む。 ジェラールは、回…

『マローン御難』 C・ライス ポケミス

●『マローン御難』 C・ライス ポケミス 読了。 冒頭二ページで死体が転がり、そこから物語はフルスピードで走り始める。殺人事件と誘拐事件とが、それぞれ時々刻々に情勢を変えながら複雑にからみ合う。そのうえさらに、主に裏社会陣営が血眼で探す重要書類…

『川野京輔探偵小説選III』 論創社

●『川野京輔探偵小説選III』 論創社 読了。 一巻二巻を読んで分かっていたことだが、この作家は残念ながら好みから外れている。コメントしたい作品は多くない。「手くせの悪い夫」は、これほどまでに奇天烈さが突き抜けているといっそ笑える。「二等寝台…

『ヨーク公階段の謎』 H・ウェイド 論創社

●『ヨーク公階段の謎』 H・ウェイド 論創社 読了。 序盤は、そもそも事件かどうかが問題になる。捜査を進めていくうちに別の問題が浮上し、やがて……と焦点が次々に変わっていって中だるみしない。登場人物に人間味があるのも面白さの一要素である。主人公プ…

『悪魔の百唇譜』 横溝正史 角川文庫

●『悪魔の百唇譜』 横溝正史 角川文庫 読了。 特に理由もなく、何度目かの再読。前回読んだのは七年前で、そのときは原形短編「百唇譜」との読み比べをやった。長編化に際して情報を膨らませ深化させる書きっぷりにちょいと感心したものだ。 以下、当時のブ…

『湖畔 ハムレット』 久生十蘭 講談社文芸文庫

●『湖畔 ハムレット』 久生十蘭 講談社文芸文庫 読了。 「久生十蘭作品集」の副題がある。ううむ、これはちょっと。今はどうも気力がないし、この内容この文章についてあれこれ語るのは私の手に余る。ただ一言、凄い、とだけ書いておく。 ●来年から、河出文…

『闇の展覧会-霧』 K・マッコーリー編 ハヤカワ文庫

●『闇の展覧会-霧』 K・マッコーリー編 ハヤカワ文庫 読了。 シリーズ三冊目の本書の目玉は、質量ともにスティーヴン・キングの長編「霧」である。キングって過去に何冊か読んでどうもピンとこなかったのだが、この作品はゴキゲンな恐怖小説であった。題名…

『殺人への扉』 E・デイリー 長崎出版

●『殺人への扉』 E・デイリー 長崎出版 読了。 特に読みづらくもなく、かといって突出した美点も感じなかった。犯人は、まあそうなるだろうなという人物だし。ただ、結末で見えてくる犯人の凄絶な境遇は記憶に残る。 物語が進展した後で、あの部分が今の状…

『マン島の黄金』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『マン島の黄金』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 拾遺集だから統一感がなくて、おかげで様々な味の作品を読めて楽しい。「崖っぷち」は不気味な秀作。どこがどう不気味なのかは、後半の展開にかかわるので書かない。「クリスマスの冒険」はポア…

『日本庭園の秘密』 E・クイーン ハヤカワ文庫

●『日本庭園の秘密』 E・クイーン ハヤカワ文庫 読了。 クイーンがロマンティック・サスペンスを書いたらこうなる、といった作品。私の好みではないメロドラマ要素が多分に含まれていて、読んでいてちょいとしんどかった。 某キーパーソンの造形がほとんど…

『ブルー・ハンマー』 R・マクドナルド ハヤカワ文庫

●『ブルー・ハンマー』 R・マクドナルド ハヤカワ文庫 読了。 リュウ・アーチャーシリーズの最終作。展開は陰鬱で、登場人物達は悩みや問題を抱えていて、味わいはいつものロスマクである。多くの人々が複雑にからみ合った外連味のある真相も、これまたいつ…

『奇想の復活』 鮎川哲也/島田荘司編 立風書房

●『奇想の復活』 鮎川哲也/島田荘司編 立風書房 読了。 「ミステリーの愉しみ」の第五巻である。本書には好みから遠く隔たった作品がちょいちょい含まれていて、ページをめくる手が止まりがちであった。読了するのに予想以上に日数がかかってしまった。 個…

新シャーロック・ホームズの冒険

●図書館から借りてきたノンフィクションを読んでいたのだが、飽きた。こいつはもう中断して、返却してしまうことにする。明日から別の本を読み始める。そっちはそっちで八百ページの大部なので、しばらく読書日記は更新できないだろう。 ●書店に寄って本を買…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第二十七回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十七回。今回から第六巻に取りかかり、「ジエラール旅團長の武勇傳」を読んだ。今はすっかり老いてしまったジェラールが、若かりし頃ナポレオンに仕えて縦横無尽に欧州を馳せ巡り、数々の武勲を立てた思…

『ようこそウェストエンドの悲喜劇へ』 P・ブランチ 論創社

●『ようこそウェストエンドの悲喜劇へ』 P・ブランチ 論創社 読了。 舞台は、今にも潰れそうな雑誌の編集部。ある主要メンバーが狂言自殺を企てたことがきっかけで、てんやわんやの大騒動が持ち上がる。関係者それぞれの勝手な思惑と誰にも予期できない偶発…

『二百万ドルの死者』 E・クイーン ハヤカワ文庫

●『二百万ドルの死者』 E・クイーン ハヤカワ文庫 読了。 クイーン名義であるが、実際は別人が書いたというのは周知であろう。実作者がクイーンであろうがなかろうが、やけに面白いのだこれが。内容を一言で表すなら、行方不明になっている戦争の英雄を探し…

『黒の血統』 三橋一夫 出版芸術社

●『黒の血統』 三橋一夫 出版芸術社 読了。 ふしぎ小説集成の第三巻、最終刊である。私の苦手な人情咄がちょいちょい含まれていて、その点はしんどかった。気に入った作品は、殺人犯を捜すまっとうなミステリのようでいながら頭の天辺に生えた耳が題材だとい…

『ワトスンの選択』 G・ミッチェル 長崎出版

●『ワトスンの選択』 G・ミッチェル 長崎出版 読了。 読者の予想をはぐらかすようなずらしが奇妙な味わいを醸し出す。何かの伏線かと思える描写が結局なんでもなかったり。特に某人物の(伏字)なんて異色すぎる職業が、結局物語に関係なかったのはなんだっ…

『太鼓叩きはなぜ笑う』 鮎川哲也 創元推理文庫

●『太鼓叩きはなぜ笑う』 鮎川哲也 創元推理文庫 読了。 三番館シリーズをまとめて読むのは初めてだ。収録作中のベストは、初刊には収録されていなかったという「竜王氏の不吉な旅」であった。犯人の仕掛けがお見事だし、その仕掛けをこういう風に見せた書き…

『恐怖は同じ』 C・ディクスン ポケミス

●『恐怖は同じ』 C・ディクスン ポケミス 読了。 十八世紀末のロンドンを舞台に、主人公の快男児が決闘に謎解きに逃避行にと縦横に活躍する。ちょいと痛快な時代劇である。現代に生きる主人公とヒロインとが、なんだか知らんけど百五十年前にタイムスリップ…

『水底の妖』 R・V・ヒューリック ポケミス

●『水底の妖』 R・V・ヒューリック ポケミス 読了。 狄判事シリーズである。互いに関係があるような無いような複数の事件が、同時並行で語られる。最終的にそれらをきっちり解決してみせる構成力がお見事。密室からの人間消失や死体入れ替わりといった趣向…

『アーマデイル』 W・コリンズ 臨川書店

●『アーマデイル』 W・コリンズ 臨川書店 読了。 コリンズ傑作選の、第六巻から第八巻まで三巻に渡る長編である。主人公は同姓同名のふたりのアラン・アーマデイル。その昔アランAの父親がアランBの父親を殺したことは、アランAしか知らない。Aは固い友…

ジゴマ

●取り寄せを依頼していた本を書店で受け取ってきた。『ジゴマ 上』 L・サジ 国書刊行会『ジゴマ 下』 L・サジ 国書刊行会「ベル・エポック怪人叢書」だと。こりゃまた魅力的な叢書が始まったものである。 ●今月の総括。買った本:九冊読んだ本:十一冊 ●今…

更新しない

●今日から上中下三巻本の長編を読み始めた。私のペースだと読了までに一週間はかかるだろう。という訳で、読了日記は来週半ばまで更新しない。

『ドイル全集 第五巻』 改造社

●『ドイル全集 第五巻』 改造社 読了。 「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十六回として、第五巻で最後に残っていた「ラフルズ・ホー行状記」を読んだ。訳者は石田幸太郎である。 田舎に広大な地所を買い豪邸を建てて引っ越してきた大富豪…

『第三の女』A・クリスティー クリスティー文庫

●『第三の女』A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 老人小説である。最近の若い者はけしからんという視点が、物語全体を取り巻いている。クリスティーはどこまで自覚的に、老人のありふれた愚痴を繰り返し書き込んだのだろうか。 ミステリとしては一風…

『時間の習俗』 松本清張 新潮文庫

●『時間の習俗』 松本清張 新潮文庫 読了。 容疑者の鉄壁のアリバイに、三原警部補が挑む。一点だけ、どうしても気になる設定がある。そもそものスタート地点に、合理的な根拠がないのだ。なんとなく引っ掛かるというだけで、警部補は執拗な追求を始める。な…