累風庵閑日録

本と日常の徒然

『アパートの鍵貸します』 B・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド 論創社

●『アパートの鍵貸します』 B・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド 論創社 読了。 題名とビリー・ワイルダーの名前とをどこかで見かけたことがあるという程度の、事実上予備知識ゼロで読んだ。なるほどこれは面白い。伏線やくすぐりの妙もある。ぜひ映画…

『青い密室』 鮎川哲也 出版芸術社

●『青い密室』 鮎川哲也 出版芸術社 読了。 名探偵星影龍三全集の第二巻である。「薔薇荘殺人事件」は、さすがの出来栄え。盛り込まれた数々の仕掛けがお見事。「悪魔はここに」は、(伏字)をカモフラージュするための犯人の知恵が嬉しい。表題作「青い密室…

『エソルド座の怪人』 若島正編 早川書房

●『エソルド座の怪人』 若島正編 早川書房 読了。 異色作家短編集第二十巻、「世界篇」である。エジプト、チェコ、ウルグアイ、といった世界各国の作家の、文字通り異色な作品を集めたもの。珍味を賞翫する楽しさは確かにあるけれども、私が求めているものと…

『罠の怪』 志村有弘編 勉誠出版

●『罠の怪』 志村有弘編 勉誠出版 読了。 「べんせいライブラリー ミステリーセレクション」の一冊である。このアンソロジーシリーズには、今ではほとんど忘れられた昔の娯楽色の強い探偵小説がちょいちょい収録されていて、珍品を読む面白さがある。 大下宇…

今月の総括

●今月の総括。買った本:十冊読んだ本:十三冊 読む方がちょいと好調であった。

『チェスプレイヤーの密室』 E・クイーン 原書房

●『チェスプレイヤーの密室』 E・クイーン 原書房 読了。 「エラリー・クイーン外典コレクション」の第一巻である。著者表記こそエラリー・クイーンだが、実際の著者はジャック・ヴァンスだそうで。内容や文章については、マンフレッド・リーが入念にチェッ…

暗黒公使

●国会図書館デジタルコレクションから以下の二点をダウンロードした。『左一平捕物帳』 横溝正史 奥川書房『古城の秘密 前篇』 三津木春影 武侠世界社 ●本を買う。『暗黒公使』 夢野久作 春陽文庫『女人果』 小栗虫太郎 春陽文庫

『花暦八笑人』 瀧亭鯉丈 講談社文庫

●『花暦八笑人』 瀧亭鯉丈・他、興津要・校注 講談社文庫 読了。 能楽者の仲良し八人組が、それぞれ順番に茶番劇を企画して世間のウケを狙うも、毎回失敗してとんだ目に遭うという連作集。実際は四編出した後に鯉丈が死去し、他の作者が第五編を書き継いだが…

『江戸川乱歩座談』中公文庫

●倉敷市の毎年のイベント「1000人の金田一耕助」に参加してきた。それはいいのだが、初っ端から軽いトラブル発生。土曜の朝、新幹線が遅れてオープニングに間に合わなくなった。少々焦ったけれども、運営殿が集合場所から撤収する前には到着できて、結果…

『欲得ずくの殺人』 H・ライリー 論創社

●『欲得ずくの殺人』 H・ライリー 論創社 読了。 殺人事件を扱ったロマンス小説、あるいはロマンスで味付けした軽ミステリ。ミステリ風味もロマンス風味も濃くはない。二百ページしかない分量だし、総じてとにかく薄味であった。ただ、薄味なのは私の感受性…

『魔の怪』 志村有弘編 勉誠出版

●『魔の怪』 志村有弘編 勉誠出版 読了。 「べんせいライブラリー ミステリーセレクション」の内の一冊である。巻数表記はないが、全六巻の構成になっている。本書には六編収録されており、半数が既読であった。その中では村山槐多「悪魔の舌」が、一歩抜き…

『幻想三重奏』 N・ベロウ 論創社

●『幻想三重奏』 N・ベロウ 論創社 読了。 謎の設定がとにかく強烈で、その魅力で引っ張ってゆく。読むにあたっては、伏線やロジックの評価はいかに、ミステリとしての出来栄えはどうか、なんて視点を取っ払った方がいいようだ。(伏字)だなんて犯人像はあ…

『アガサ・クリスティーの秘密ノート』 A・クスティー&J・カラン クリスティー文庫

●『アガサ・クリスティーの秘密ノート』 A・クスティー&J・カラン クリスティー文庫 読了。 上下巻七百ページ超の大物である。内容は、クリスティーがノートに書き残した、創作に当たって試行錯誤した痕跡を解析したもの。マニア向けの本である。各作品の…

『巨匠の選択』 L・ブロック編 ポケミス

●『巨匠の選択』 L・ブロック編 ポケミス 読了。 ローレンス・ブロック本人を含む九人の人気作家が、自作と他の作家の作品とからそれぞれお気に入りを一編ずつ選んだという趣向のアンソロジー。どうも、私の趣味とはあまり合わなかった。犯罪小説や、犯罪を…

中断

●上下巻の長大なノンフィクションの上巻だけ読み終えて、ひとまず中断する。申し訳ないがあまり面白くないし、中断しても差し支えない内容だし。感想は後日通読してから。口直しにフィクションを読みたくなった。明日からミステリのアンソロジーでも手に取る…

『七人の女探偵』 山前譲編 廣済堂ブルーブックス

●『七人の女探偵』 山前譲編 廣済堂ブルーブックス 読了。 「七人の名探偵シリーズ」の第三巻である。残念ながらコメントを付けたい作品は多くない。小泉喜美子「握りしめたオレンジの謎」は、ダイイングメッセージそのものよりも関連情報の扱いにちょっと感…

『五枚目のエース』 S・パーマー 原書房

●『五枚目のエース』 S・パーマー 原書房 読了。 殺人犯の死刑が、近いうちに執行される予定である。だが、どうやら彼は冤罪で、他に真犯人がいるらしい。探偵役のヒルデガード・ウィザーズは、刑の執行前に真犯人を見つけるべく奔走する。とまあ、典型的な…

『赤い密室』 鮎川哲也 出版芸術社

●『赤い密室』 鮎川哲也 出版芸術社 読了。 名探偵星影龍三全集の第一巻である。「消えた奇術師」と「妖塔記」とは、悪くはないのだがなにしろ二十ページしかなく、どうにもあっけない。やはりこういうタイプのミステリは、ある程度描写と情報とを積み重ねて…

今月の総括

●今月の総括。買った本:九冊読んだ本:十一冊 月末に開催したイベントの準備に注力したので、後半あまり本を読めなかった。

『服用禁止』 A・バークリー 原書房

●『服用禁止』 A・バークリー 原書房 読了。 人物描写に力を注いだバークリーらしく、好悪両面で個性的な人々が活き活きと描かれている。たとえば体の不調と泣き言とを並べたてるばかりの役立たずアンジェラ。知的で冷静で有能なローナ。周囲の思惑や迷惑を…

「夢をまねく手」

●昨日はXのスペース企画「『金田一耕助の冒険』をネタバレで語ろう」を開催した。他のスピーカーさんのおかげで密度の高い語り合いができた。ありがたいことです。 ●本を買う。『マット・スカダー わが探偵人生』 L・ブロック 二見書房 ●注文していた本が届…

『アガサ・クリスティー99の謎』 早川書房編集部編 クリスティー文庫

●『アガサ・クリスティー99の謎』 早川書房編集部編 クリスティー文庫 読了。 クリスティー関連の豆知識を並べた本。昔流行った、いわゆる謎本の体裁である。採り上げる対象はクリスティー本人、シリーズ探偵、各作品、関連映像作品等々に至るまで幅広い。…

『白衣の女』 W・コリンズ 岩波文庫

●『白衣の女』 W・コリンズ 岩波文庫 読了。 真に愛する人に巡り合ったヒロインのローラ。だが時すでに遅し。彼女は、当時の社会規範にがんじがらめになって望まぬ結婚をしてしまう。夫となったパーシヴァル卿は、求婚していた頃は優しく礼儀正しい紳士であ…

みすてりい

●本を買う。『みすてりい』 城昌幸 創元推理文庫『のすたるじあ』 城昌幸 創元推理文庫『建築知識 11月号』 エクスナレッジ 木魚庵氏の今回のお題は「女王蜂」だ。 ●今読んでいる長大な小説は、下巻の後半まで進んだ。予想以上に面白くてぐいぐい読める。…

更新一時停止

●上中下巻トータル千百ページの小説を、今日から読み始めた。私のペースだと、読了までに一週間はかかる。そのため、この読書日記の更新を当面停止する。

『七人の警部』 山前譲編 廣済堂ブルーブックス

●『七人の警部』 山前譲編 廣済堂ブルーブックス 読了。 「七人の名探偵シリーズ」の第二巻である。大庭武年「牧師服の男」は、戦前にこれだけ堅実着実に捜査の模様を描く作品も珍しく、それだけでもう面白く読める。真相も(伏字)ネタを使っていてお見事。…

『アヴリルの相続人』 P・ヴェリー 論創社

●『アヴリルの相続人』 P・ヴェリー 論創社 読了。 多重構造を持つ宝探し物語である。富豪ギヨーム・アヴリルの莫大な遺産がどこかに隠されている。その隠し場所を記した遺言書がどこかに隠されている。遺言書の隠し場所はレコードに吹き込まれているが、破…

『妖怪紳士』 都筑道夫 本の雑誌社

●『妖怪紳士』 都筑道夫 本の雑誌社 読了。 少年小説コレクションの第四巻である。表題作「妖怪紳士」は、ちょっとした快作。妖怪牢の番人だった主人公が、脱獄した妖怪達と闘う怪奇アクションである。展開がとにかく速いし、様々な妖怪が登場して暴れまわる…

『ネロ・ウルフ対FBI』 R・スタウト 光文社文庫

●『ネロ・ウルフ対FBI』 R・スタウト 光文社文庫 読了。 歳とともに小説の好みが変わってきている。A卿は何時何分に書斎にいて、B嬢はその時寝室にいたはずで、台所にいた秘書Cの発言によると……なんてのをごりごりに追及していくミステリが、だんだんし…

『棄ててきた女』 若島正編 早川書房

●週の後半から土曜にかけてやけに忙しく、読書時間が確保できなかった。三百ページの本を読むのに四日もかかってしまった。 ●『棄ててきた女』 若島正編 早川書房 読了。 異色作家短編集第十九巻、「アンソロジー/イギリス篇」である。どうもピンとこない作…