累風庵閑日録

本と日常の徒然

今日も休む

●昨日はスペース企画「人形佐七をネタバレで語ろう」を開催した。興味深い話や意外な視点の話をいろいろ聴けて、有意義で楽しい時間であった。ただ、音声の質が悪かったのがストレス。実際に顔を合わせて、酒でも飲みながらゆるゆると、横溝について語る雑談…

休む

●今週末に開催するスペース企画の準備が滞っている。そちらにテコ入れしないといけないし、最近頭が少々フィクション疲れしているしで、土曜まで読書を休むことにする。

『幻の女』 W・アイリッシュ ハヤカワ文庫

●『幻の女』 W・アイリッシュ ハヤカワ文庫 読了。 必要があって、数十年ぶりの再読。初読のときはあまりの面白さに夢中になってページをめくったものだ。今回はぼんやり真相を覚えているので、割と冷静に読んだ。サスペンスと叙情性とが身上のこの作品であ…

『ABC殺人事件』 A・クリスティー 創元推理文庫

●『ABC殺人事件』 A・クリスティー 創元推理文庫 読了。 大人向けの訳で読んだのは四年前が初めて。今回必要があって、メモを取りながら再読した。感想は基本的に前回と同じなので、当時のブログをベースにして修正を加えたものを今回の感想とする。 関…

『老女の深情け』 R・ヴィカーズ ハヤカワ文庫

●『老女の深情け』 R・ヴィカーズ ハヤカワ文庫 読了。 迷宮課の第三巻である。このシリーズのキモは、人物造形の興味にあるようだ。ロジックや伏線の面白さを、過度に期待してはいけない。それぞれの作品で、作者は丹念に筆を重ねてゆく。殺されるに至る被…

『ロンドン橋が落ちる』 J・D・カー ポケミス

●『ロンドン橋が落ちる』 J・D・カー ポケミス 読了。 敵役がちゃんと憎たらしく描かれていると、面白さのランクは確実にアップする。それはいいのだが、実にあっけなく決着がついて、あらららと思う。ヒロインをスキャンダルから救おうとする取り組みと、…

『天城一の密室犯罪学教程』 日本評論社

●『天城一の密室犯罪学教程』 日本評論社 読了 前半、題名に含まれている短編集は、申し訳ないがどうもいまひとつ。ページ数が少なく、事件の後に結論だけが投げ出すように提示されて、あまりにもあっけない。それはそれとして、「Part1」と「Part2」とを…

一攫千金のウォリングフォード

●天城一の個人短編集を半分まで。このまま通読するか、中断して別の本を手に取るか、それは明日の気分次第。 ●注文していた本が届いた。『一攫千金のウォリングフォード』 G・R・チェスター ヒラヤマ探偵文庫 ●今月の総括。買った本:八冊読んだ本:十冊

『母親探し』 R・スタウト 論創社

●『母親探し』 R・スタウト 論創社 読了。 ネロ・ウルフシリーズの長編である。読み味は安定のレックス・スタウト。登場人物の魅力と会話の面白さ、そして軽快な展開のおかげでサクサク読める。今回はアーチ―やソール・パンザー以下常連探偵まで捜査に投入…

『ロニョン刑事とネズミ』 G・シムノン 論創社

●『ロニョン刑事とネズミ』 G・シムノン 論創社 読了。 浮浪者ネズミことユゴー・モーゼルバックが、大金の入った封筒を拾ったと警察に届け出た。その金は死体のそばで手に入れたのだが、ネズミは道端で拾ったと主張した。死体のことを知っているのはネズミ…

『議会に死体』 H・ウェイド 原書房

●『議会に死体』 H・ウェイド 原書房 読了 地方で起きた殺人事件を解決すべく、スコットランド・ヤードから派遣されたロット警部。彼が地道に堅実に捜査を進める姿には、いわゆる足の探偵の面白さがある。その上更に、一筋縄ではいかない趣向が仕込まれてい…

『新吉捕物帳』 大倉燁子 捕物出版

●『新吉捕物帳』 大倉燁子 捕物出版 読了。 全体に人情噺の色が強いのは、作者の資質や志向なのであろう。ミステリの趣向よりも、人の世の哀歓を描くことの方に重点が置かれているようだ。男女の愛憎だとか親子の情愛、あるいは貧困の哀しさ、うっかり欲に迷…

『前後不覚殺人事件』 都筑道夫 光文社文庫

●『前後不覚殺人事件』 都筑道夫 光文社文庫 読了。 必要があって、三年前に読んだ本を再読。自分でも驚くほど内容を忘れている。真相を全く覚えていなかったのは、おそらくあまりに複雑だったからで。◇◇の手がかりから推理すると犯人は××だ! ってなシンプ…

『料理長殿、ご用心』 N&I・ライアンズ 角川文庫

●『料理長殿、ご用心』 N&I・ライアンズ 角川文庫 読了。 ヨーロッパ各国の一流シェフ達が、それぞれの得意料理になぞらえて殺される。犯人はかなり早い段階で読者に示されてしまうので、ミステリとしての謎はほぼない。犯行手段に特異な工夫があるわけで…

『迷路荘の惨劇』 横溝正史 角川文庫

●『迷路荘の惨劇』 横溝正史 角川文庫 読了。 先週から続けてきた、迷路荘改稿読み比べの一環である。ようやく長編までたどり着いた。中編版から大幅にページ数が増えることで、描写が丁寧になり展開が細やかになっている。中編版の不満点が解消され、ミステ…

『迷路荘の怪人』 横溝正史 東京文藝社

●『迷路荘の怪人』 横溝正史 東京文藝社 読了。 中編が二編収録されている。 「迷路荘の怪人」 短編版の三年後に、書き下ろしとして単行本に収録された。改稿によって、まとまった分量の警察による尋問シーンが追加されている。そのおかげで、関係者の証言を…

『聖者対警視庁』 L・チャーテリス 日本出版共同

●『聖者対警視庁』 L・チャーテリス 日本出版共同 読了。 聖者こと義賊サイモン・テンプラーものの中編が二編収録されている。「奇蹟のお茶事件」のオープニングはこんな具合。新発売の胃弱の特効薬「奇蹟のお茶」。ひょんなことから聖者の手元に転がり込ん…

『ゴールデン・サマー』 D・ネイサン 東京創元社

●『ゴールデン・サマー』 D・ネイサン 東京創元社 読了。 主人公ダニー少年がちょっとした機知のきらめきによって小銭を稼ぐ、短いエピソードが連なった構成になっている。口先の説得力で事態をコントロールする様は、さながらフランク・グルーバーのジョニ…

『跡形なく沈む』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫

●『跡形なく沈む』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫 読了。 犯人探しミステリとしては、残念ながら十分な満足は得られなかった。探偵役が犯人に疑念を抱くきっかけがあまりに些細、あまりに微妙だってえのはむしろ私の好物で、どんとこいである。だがそれ…

『新青年傑作選 第四巻 翻訳編』 立風書房

●『新青年傑作選 第四巻 翻訳編』 立風書房 読了。 なにしろ傑作選なのだから、収録作は他のアンソロジーやなんかに採られているものが少なくない。既読が多かったけれども、それはそれ。気に入ったのは以下のようなところ。 カミ「ルウフォック・ホルメスの…

『奇妙な捕虜』 M・ホーム 論創社

●『奇妙な捕虜』 M・ホーム 論創社 読了。 最初の舞台は第二次大戦末期の、イギリス軍の捕虜収容所である。題名にある奇妙な捕虜は、どこといって特徴が無いにもかかわらず不思議な存在感を発揮しているという。どうやら少しばかり精神を病んでいるらしい。…

奇怪な銃弾

●翻訳ミステリアンソロジーを、半分まで読んで中断。感想は通読してから。 ●注文していた本が届いた。『奇怪な銃弾』 佐川春風 ヒラヤマ探偵文庫JAPAN

『名月一夜狂言』 横溝正史 創元推理文庫

●『名月一夜狂言』 横溝正史 創元推理文庫 読了。 人形佐七シリーズの中から、本格ミステリの要素に注目して作品を選んだ傑作集。必要があってメモを取りながら読んだ。そうしないと、読んだ傍から内容を忘れてしまう。全体を覚えておくためのメモなのだから…

『ハイド氏の奇妙な犯罪』 J=P・ノーグレット 創元推理文庫

●『ハイド氏の奇妙な犯罪』 J=P・ノーグレット 創元推理文庫 読了。 「ジキルとハイド」と、ホームズもの「四つの署名」とを融合させたパスティシュ。実はハイドは「四つの署名」事件にも関わっていた、という趣向をハイドの視点で語る。どちらかの素材に…

『黄色いアイリス』 A・クリスティー ハヤカワ文庫

●『黄色いアイリス』 A・クリスティー ハヤカワ文庫 読了。 クリスティー文庫創刊前に買って長らく積ん読だったものを、ようやく読んだ。なかなかに楽しい短編集であった。ほとんどの収録作に、ちょっとした伏線、ロジック、意外性が盛り込まれており、実に…

『ヴォスパー号の遭難』 F・W・クロフツ ハヤカワ文庫

●『ヴォスパー号の遭難』 F・W・クロフツ ハヤカワ文庫 読了。 原因不明の爆発で沈没したヴォスパー号。どうやら保険金搾取の犯罪らしい。フレンチ警部が丹念に、緻密に、堅実に一歩一歩捜査を進めてゆく。だが、証拠も動機も具体的な犯行手順も、まるで分…

『レザー・デュークの秘密』 F・グルーバー 論創社

●『レザー・デュークの秘密』 F・グルーバー 論創社 読了。 ミステリの形式を整えるためについでに付け加えたような真相解明シーンを含め、いつものジョニー&サムシリーズの味わいである。グルーバーの筆先に流されながら、彼らの軽快かつしたたかな活躍を…

『幽霊通信』 都筑道夫 本の雑誌社

●『幽霊通信』 都筑道夫 本の雑誌社 読了。 少年小説コレクションの第一巻である。今年からこのシリーズを読んでゆく。「ゆうれい通信」は、十二編で構成される短編集。それぞれが十ページにも満たない小品だし子供向けだしで驚くほどの読み応えはないが、面…

『贖いの血』 M・ヘッド 論創社

●『贖いの血』 M・ヘッド 論創社 読了。 登場人物の個性の魅力で読み進めた。嫌な奴がきちんと憎たらしく描かれていると、ページが捗る。結末の、犯人の指摘に至る道筋はそれまでの多くの伏線を拾っていて満足。死体発見時の描写がちょいと鮮烈で、全体が穏…

『ブランディングズ城の救世主』 P・G・ウッドハウス 論創社

●『ブランディングズ城の救世主』 P・G・ウッドハウス 論創社 読了。 今まで読んできたウッドハウスと同じ、あの味わいあの面白さである。複雑に絡まりあった大量の要素をきちんと収束させる構成力にほとほと感心する。言いたいことは以上二点に尽きる。