累風庵閑日録

本と日常の徒然

『三味線鯉登』 永瀬三吾 捕物出版

●『三味線鯉登』 永瀬三吾 捕物出版 読了。 主人公のシリーズ探偵役は、辰巳芸者の鯉登。「こいのぼり」ではなく「こいと」と読む。本名が小糸だそうで。侍が嫌いで岡っ引きが嫌い。でも、常廻り同心桐形月之進の家来魚介のことは妙にお気に入り。酒が好きで…

『松風の記憶』 戸板康二 創元推理文庫

●『松風の記憶』 戸板康二 創元推理文庫 読了。 「松風の記憶」 舞台や視点人物を様々に変えながら、長い年月に渡る人間関係の変化と深化とをじっくりとたどってゆく。歌舞伎や踊りの世界を舞台にしており、登場人物達は一般サラリーマンとは異なっているけ…

『狼の一族』 若島正編 早川書房

●某所で開催された某イベント(これじゃあ何がなんだか)に参加するため、月曜に有給休暇を取って土曜から二泊三日で北海道に行ってきた。詳細は、主催者殿が発行する同人誌に収録されるはずである。 ●『狼の一族』 若島正編 早川書房 読了。 異色作家短編集…

『バーニーよ銃をとれ』 T・ケンリック 角川文庫

●『バーニーよ銃をとれ』 T・ケンリック 角川文庫 読了。 主人公は平凡な小市民。インフレと不景気とで家計は火の車である。似たような境遇にある二人の仲間を語らって、ちょっとした詐欺を目論んだ。それが予想を超える展開となり、強大な敵から命を狙われ…

『そして医師も死す』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫

●『そして医師も死す』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫 読了。 人間誰しも、多かれ少なかれ負の要素を持っているだろう。すなわち、卑しさ、愚かさ、臆病さ、幼さ、軽率さ、だらしなさ。登場人物達はそれぞれに様々な負の要素を背負わされて、生々しく描…

『蜃気楼博士』 都筑道夫 本の雑誌社

●『蜃気楼博士』 都筑道夫 本の雑誌社 読了。 都筑道夫少年小説コレクションの第三巻である。表題作は中編一と短編二とで構成されるシリーズ。なかでも第一話「蜃気楼博士」が面白かった。不可能興味が横溢しているし、犯人設定はなるほどと思う。二十二年前…

『夢遊病者の姪』 E・S・ガードナー ハヤカワ文庫

●『夢遊病者の姪』 E・S・ガードナー ハヤカワ文庫 読了。 ペリイ・メイスンシリーズを読むのは数十年ぶり二冊目。前回がいつで何を読んだかは、とうに忘却の彼方である。法廷ものってのはなじみが薄いので、なかなかに新鮮であった。メイスンが駆使するロ…

『夜歩く』 横溝正史 角川文庫

●『夜歩く』 横溝正史 角川文庫 読了。 必要があって、二十年ぶりの再読である。メインの大ネタ以外ほとんど忘れていたのだが、こんなに面白かったか、と驚く。いろいろ書きたいことはあるけれども、なにしろデリケートな扱いが必要な作品だ。真相および中盤…

『霧と雪』 M・イネス 原書房

●『霧と雪』 M・イネス 原書房 読了。 中盤過ぎまでは、なんとも地味な作品である。まず、事件が地味である。被害者が銃で撃たれるが、死にはしない。つまり殺人事件ではなく傷害事件である。現場が不可解な状況になっていたりはしない。題名が示すように季…

『妖説地獄谷』 高木彬光 春陽文庫

●『妖説地獄谷』 高木彬光 春陽文庫 読了。 ゴキゲンな伝奇小説であった。内容は分かりやすく展開が速くて、サクサク読める。おまけに文字が大きいこともあって、予定より早い読了となった。大勢の人々がかつ出会いかつ別れ、あるいは敵対しあるいは手を結び…

更新一時停止

●創元推理文庫の戸板康二を半分まで読んで中断。感想は通読してから。明日からは上下巻トータル七百ページ以上ある本を読み始める。私のペースだと読了まで早くとも五日かかるので、日記の更新はそれまで一時停止します。あしからず。

『コールド・バック』 H・コンウェイ 論創社

●『コールド・バック』 H・コンウェイ 論創社 読了。 基本はメロドラマ。精神に変調を来している妻の、過去の真実を探るために主人公が旅に出る。十九世紀の小説にしては文章が簡潔で読みやすい。おかげで主人公の感情の起伏が素直に伝わってくる。この点は…

『第八の日』 E・クイーン ハヤカワ文庫

●『第八の日』 E・クイーン ハヤカワ文庫 読了。 言葉に対する執拗なまでのこだわりが、いかにもクイーンらしい。そのこだわりは書かれた言葉にも話された言葉にも及ぶ。書かれた言葉については、終盤のとあるネタの放つ皮肉が強烈。話された言葉については…

『紅鶴提燈』 島本春雄 捕物出版

●『紅鶴提燈』 島本春雄 捕物出版 読了。 振袖小姓捕物控の第二巻である。第一巻を読んだ経験から、期待値をかなり下げて臨んだ。少々いい加減でもずっこけていても、どんとこいである。物語の途中で発生する殺しは本筋とはなんの関係もなかった、なんて真相…

海底宝窟

●東京文学フリマで、出店者殿のお手伝いとして売り子をやってきた。それはそれとして、会場で買った本。『海底宝窟 完全版』 押川春浪 盛林堂ミステリアス文庫『地獄の門 完全版』 M・ルヴェル エニグマティカ叢書『鼠小僧次郎吉』 国枝史郎 書肆銀月亭『横…

コールド・バック

●今月上旬から細切れに読んでいる短編集がしんどい。ハチャメチャで特濃で、わずか二十数ページの一編を読めばもう満腹し、胸焼けし、食傷する。二編目に取りかかる手が止まる。到底続けざまに読めるものではない。明日は丸一日のイベントだから読めないし、…

『鏡は横にひび割れて』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『鏡は横にひび割れて』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 初読なのだが、ネタは既に知っていた。その昔、映画「クリスタル殺人事件」を観てしまったのだった。ネタを知らずに読む楽しみは得られなかったが、それとは別の、ネタを知って読む楽しみ…

『第四の扉』 P・アルテ ポケミス

●『第四の扉』 P・アルテ ポケミス 読了。 不可能興味やオカルト趣味てんこ盛りで、なんともにぎやか。読んでいる間は面白かったのだが、読了後の結論としてはどうも厳しい。真相には多くの要素が盛り込まれている。すなわち(伏字)。これらのどれを取って…

「人形佐七捕物帖 闇に笑う鉄仮面」

●映画「人形佐七捕物帖 闇に笑う鉄仮面」を観た。南蛮諸道具扱いの内海屋が売り出した簪が大評判。あまりの売れ行きに追加の品を取りに行った番頭が、土蔵内で殺された。重量のある西洋の長剣で串刺しという、異様な殺し方である。当時正体不明の浪人が付近…

『神様のたまご』 稲葉白菟 文春文庫

●『神様のたまご』 稲葉白菟 文春文庫 読了。 「下北沢センナリ劇場の事件簿」という副題が付いている。文庫書き下ろしだそうで。このシリーズでは、探偵が真相にたどり着くに際して論理よりも知識の方が大きなウェイトを占めているようだ。 特に気に入った…

『毒薬の小壜』 C・アームストロング ハヤカワ文庫

●『毒薬の小壜』 C・アームストロング ハヤカワ文庫 読了。 前半は、主人公の生い立ちと人となりとが丁寧に描かれる。並行して、彼が様々なことをぐるぐる考える様子も描かれる。後半になってようやく物語が動きだしてからは、前半で扱われた種々のテーマが…

『グリンドルの悪夢』 P・クェンティン 原書房

●『グリンドルの悪夢』 P・クェンティン 原書房 読了。 グリンドルの村で少女が失踪し、その父親は死体で発見された。同時並行して、ペットや家畜が連れ去られて惨殺される事件が頻々として発生する。正体不明の殺人鬼の跳梁で、村は題名の通り悪夢のような…

「人形佐七捕物帖 恐怖の通り魔」

●東映の「人形佐七捕物帖 恐怖の通り魔」を観た。若山富三郎演じる佐七がなんとも濃い。付き従う辰五郎は、大泉滉が怪演している。原作小説に「通り魔」があるが、内容からして無関係のようだ。 幕府御用商人が通り魔に殺害される事件が立て続けに発生した。…

『ミステリー・マイル』 M・アリンガム ROM叢書

●『ミステリー・マイル』 M・アリンガム ROM叢書 読了。 巻末のあとがきにある通り、本格風味のサスペンス物、あるいは謎のある冒険小説である。ロジックやトリックへの過度な期待をしない限り十分に楽しめる。そもそもが期待する作品ではないのだ。正体…

『クイーンの色紙』 鮎川哲也 光文社文庫

●『クイーンの色紙』 鮎川哲也 光文社文庫 読了。 三番館シリーズの五冊目である。「秋色軽井沢」はメインのワンアイデアも悪くはないが、人間の心理を読んだサブのネタが気に入った。以降の作品の読みどころを挙げておくと、「X・X」では、ダイイング・メ…

『新青年傑作選 第五巻 読物・資料編』 中島河太郎編 立風書房

●『新青年傑作選 第五巻 読物・資料編』 中島河太郎編 立風書房 読了。 実際は三部構成で、第一部読物編、第二部復刻編、第三部資料編となっている。読物編では、獅子文六「西洋色豪伝」が最も気に入った。文章が流れるようで、気持ちよく読める。扱っている…

今月の総括

●今月の総括。買った本:六冊読んだ本:十冊 もう一冊買いたい本があるのだが、買うタイミングがなかった。

『日本中世都市の世界』 網野善彦 講談社学術文庫

●『日本中世都市の世界』 網野善彦 講談社学術文庫 読了。 ちょっとばかし専門的過ぎる内容で、どこまで理解できたか覚束ない。田堵、名田制、統治権的支配、といった初見の単語が説明なしに出てきて、その度にぼんやりしてしまう。また、現代活字にしてある…

『ワトスン夫人とホームズの華麗な冒険』 J・デュトゥール 講談社

●『ワトスン夫人とホームズの華麗な冒険』 J・デュトゥール 講談社 読了。 「四つの署名」事件を題材にして、メアリー・モースタンの視点で綴ったパスティシュである。だが実際のところ事件そのものは脇に押しやられ、作中で主に語られるのは彼女の半生記と…

『幽霊博物館』 都筑道夫 本の雑誌社

●『幽霊博物館』 都筑道夫 本の雑誌社 読了。 少年小説コレクションの第二巻である。他愛ないと感じてしまう作品が多いが、それも無理はない。いい歳こいたオヤジは想定読者ではないだろう。出来栄えの判断は中学生から高校生の読者にお任せする。私にとって…