累風庵閑日録

本と日常の徒然

2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『日本中世都市の世界』 網野善彦 講談社学術文庫

●『日本中世都市の世界』 網野善彦 講談社学術文庫 読了。 ちょっとばかし専門的過ぎる内容で、どこまで理解できたか覚束ない。田堵、名田制、統治権的支配、といった初見の単語が説明なしに出てきて、その度にぼんやりしてしまう。また、現代活字にしてある…

『ワトスン夫人とホームズの華麗な冒険』 J・デュトゥール 講談社

●『ワトスン夫人とホームズの華麗な冒険』 J・デュトゥール 講談社 読了。 「四つの署名」事件を題材にして、メアリー・モースタンの視点で綴ったパスティシュである。だが実際のところ事件そのものは脇に押しやられ、作中で主に語られるのは彼女の半生記と…

『幽霊博物館』 都筑道夫 本の雑誌社

●『幽霊博物館』 都筑道夫 本の雑誌社 読了。 少年小説コレクションの第二巻である。他愛ないと感じてしまう作品が多いが、それも無理はない。いい歳こいたオヤジは想定読者ではないだろう。出来栄えの判断は中学生から高校生の読者にお任せする。私にとって…

『ミステリ講座の殺人』 C・ナイト 原書房

●『ミステリ講座の殺人』 C・ナイト 原書房 読了。 お行儀のいいミステリ。怪奇味もなし不可能犯罪もなし。人物造形は全体的に大人しく、奇矯な人物の言動でもってページをめくらせるでもなし。それでもつまらなくはないのだ。複数の事件がいいテンポで発生…

『一本足のガチョウの秘密』 F・グルーバー 論創社

●『一本足のガチョウの秘密』 F・グルーバー 論創社 読了。 ガチョウの形をした貯金箱の争奪戦と、失踪人探しの物語とが並行して語られる。いつものジョニー&サムシリーズである。サクサク読めてお気楽で、ミステリの興味は薄い。お馴染みの軽快な味わいを…

『ブロードウェイの探偵犬』 小鷹信光編 大和書房

●『ブロードウェイの探偵犬』 小鷹信光編 大和書房 読了。 副題は「犬ミステリ傑作選」である。粒揃いでレベルの高いアンソロジーであった。出来栄え上々、味わい様々な作品が並ぶ。切れ味で読ませるもの、少ない分量にきっちり伏線を仕込んでいるもの、結末…

『九時から五時までの男』 S・エリン ハヤカワ文庫

●『九時から五時までの男』 S・エリン ハヤカワ文庫 読了。 ご機嫌な短編集。じわじわと不穏な空気を高めていったあげく、安全で明瞭な着地点を描かないまま、読者に想像を委ねて終わる。最後にぱっとひっくり返してアッと驚きスカッと爽快、ってな作風では…

『善人は二度、牙を剥く』 B・コッブ 論創社

●『善人は二度、牙を剥く』 B・コッブ 論創社 読了。 登場人物の魅力で読ませる作品。主人公アーミテージ巡査部長が、なんとも人間味があっていい感じ。いろいろと軽率で、つまらぬプライドに固執し、事件解明のために無闇に突っ走ってあたふたする。その奮…

『仁木兄妹長編全集1 夏・秋の巻』 仁木悦子 出版芸術社

●『仁木兄妹長編全集1 夏・秋の巻』 仁木悦子 出版芸術社 読了。 長編が二編収録されている。 「猫は知っていた」 数十年ぶりの再読である。当然内容はすっかり忘れており、まっさらの状態で読んだ。引っ掛かる点がひとつ。事件の背景を成すある情報が、(…

『すべては死にゆく』 L・ブロック 二見書房

●『すべては死にゆく』 L・ブロック 二見書房 読了。 序盤は、ふたつの物語がほぼ並行して語られる。ひとつは、スカダーの一人称による人探しの物語。私立探偵小説の定番である。もうひとつは、三人称で語られるある心理学者の物語。彼は、刑執行直前の死刑…