2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧
●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十六回として、第八巻の短編集「最後の戦艦」から、表題作を含む前半の十編百ページほどを読んだ。歴史の一コマを切り取って小説に仕立てた作品が多い。気に入った作品は以下のようなところ。 おそらく…
●『闇が迫る マクベス殺人事件』 N・マーシュ 論創社 読了。 前半はマクベスのリハーサルが進行する様を描き、開演が近づくにしたがって劇が成功するかどうかの緊張感が高まってゆく演劇小説である。これはこれでつまらなくはないのだが、なかなか事件が起…
●『緑のダイヤ』 A・モリスン 東京創元社 読了。 「世界大ロマン全集」第四巻である。表題作のほかに短編が二編収録されている。 アーサ・モリスン「緑のダイヤ」 競売でばらばらに売られた十一本のワイン。どうやらその中の一本に、インドの王族から盗まれ…
●『明治・大正・昭和 日米架空戦記集成』 長山靖生編 中公文庫 読了。 いい気なもんだぜ感が漂う、無邪気な戯言が多かった。コメントを付けたい作品は少ない。福永恭助「科学小説 暴れる怪力線」は、戦前の防諜小説にありがちな「わるいがいじんをやっつけて…
●『幻想と怪奇1』 早川書房編集部編 ポケミス 読了。 巻末解説によれば、幽霊もの、吸血鬼もの、といったテーマ毎に一編ずつ選んだという。おかげで目先が変わって飽きなかった。特に気に入ったのは以下の作品。ロバート・ヒチェンズ「魅入られたギルディア…
●『オパールの囚人』 A・E・W・メイスン 論創社 読了。 本格ミステリ寄りのスリラーといったところ。複雑な事件の全体像が少しずつ明らかになってゆく過程への興味が全体を支えている。殺人者は誰かという興味はその一部でしかない。だが、散りばめられた…
●『フライアーズ・パードン館の謎』 P・マクドナルド 原書房 読了。 怪奇現象が多発しているフライアーズ・パードン館で、女主人が死ぬ。閉ざされた水のない部屋で溺死するという、飛び切りの不可能興味が魅力的。真相はなるほどと感心するし、犯行手段のと…
●『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』 J・D・カー 国書刊行会 読了。 なんとも嫌らしい、胸の悪くなるような展開であった。客観的なデータと確固たるルールとに基づいて世界が動いていることが、私の愛好する本格ミステリの前提である。ところがここにあ…
●『中国梵鐘殺人事件』 R・V・フーリック 三省堂 読了。 三つの事件が同時並行で進行するのを、程よく錯綜させつつ遅滞なく書いてみせる構成力が相変わらずお見事である。本書では、早い段階で明らかになる事件の黒幕が強大な政治力と賄賂の原資たる豊富な…
●『シャーロック・ホームズの恩人』 長沼弘毅 家の光協会 読了。 ホームズの恩人として、ホームズの産みの親コナン・ドイル、ドイルがホームズのモデルにしたというベル教授、小説内でホームズに探偵稼業を勧めたトレヴァー老といった人々を論じる本。現実世…
●『シシリーは消えた』 A・バークリー 原書房 読了。 ミステリの面白さにはいくつかの種類がある。本書は、キャラクターと展開の魅力で読ませる作品。つまり、結末でロジックや伏線の妙に感心するよりも、読んでいる間ずっと面白いタイプの作品である。 田…