累風庵閑日録

本と日常の徒然

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

女殺し定九郎

●今読んでいる長大な小説を明日には読了できる予定だったが、そうもいかなくなった。思いの外野暮用が多く、読書時間を確保できなかった。それに、はっきりいってあまり面白くないからページをめくる手が止まりがちだし。 ●注文していた本が二方面から届いた…

真珠塔・獣人魔島

●土曜と日曜とで岡山県に行き、「巡・金田一耕助の小径 1000人の金田一耕助」というイベントに参加してきた。例の伝染病のせいで過去二年中止だったのが、今年ようやく三年ぶりの開催であった。実になんとも楽しいイベントだったけれども、詳細は省略。 …

『ほりだし砂絵』 都築道夫 盛林堂ミステリアス文庫

●『ほりだし砂絵』 都築道夫 盛林堂ミステリアス文庫 読了。 しみじみといい本である。作家として、人として、都筑道夫を敬愛する多くの書き手のエッセイが胸に沁みる。一編だけの収録作「お化けかるた」は、読めるということにまず意義がある逸品。情景描写…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十回。今回は第六巻から中編「巨大な暗影」を読む。老年に達した語り手が、自らの半生を振り返る。前半は幼年期から青年期にかけての、友情と恋の物語。後半は対ナポレオン戦争従軍記で、主にワーテルロ…

『フェンシング・マエストロ』 A・P・レベルテ 論創社

●『フェンシング・マエストロ』 A・P・レベルテ 論創社 読了。 主人公の造形が沁みる。政治や世間から一歩身を引いて超然と生きていたいのに、五十歳を過ぎてふと考えるのだ。近い将来の老化による体の衰えを。あるいは、やや遠い将来の死後に自分の大切に…

『アクナーテン』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『アクナーテン』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 作品に描かれているアクナーテン王は、人間誰しも持っている欲、怠惰、邪念、執着、といった心性をあまりにも軽んじているようだ。人民の統治者としての器ではなかったのかもしれない。哀れなこ…

『團十郎切腹事件』 戸板康二 創元推理文庫

●『團十郎切腹事件』 戸板康二 創元推理文庫 読了。 先月に半分読んだ残りを、隙間時間に細切れで読んでいった。最初はどうということもなかったのだが、二編三編と読んでいくにつれて文章の滋味を感じるようになった。まことによろしきものである。以下、簡…

『捕虜収容所の死』 M・ギルバート 創元推理文庫

●『捕虜収容所の死』 M・ギルバート 創元推理文庫 読了。 時は第二次大戦後期。イタリアの降伏が間近とみられている時期である。イタリア軍が管理する捕虜収容所の地下に、英国兵の手によって密かに脱走用のトンネルが掘り進められていた。イタリアが降伏し…

『雷鳴の夜』 R・V・ヒューリック ポケミス

●『雷鳴の夜』 R・V・ヒューリック ポケミス 読了。 手掛かりの出し方が大いに気に入った。特別珍しい手法ではないけれども、このシリーズで採用されるとは思わなかった。でも実際に読んでみると、このシリーズだからこそ活用できる手法だと納得である。別…

『月明かりの闇』 J・D・カー 原書房

●『月明かりの闇』 J・D・カー 原書房 読了。 不可能犯罪の謎も真犯人は誰かという興味ももちろんあるのだが、物語の重点は(伏字)に置かれているようだ。それに伴って真相に至る道筋も、数々の手掛かりから真犯人をあぶり出すのとは異なるアプローチにな…

『犯罪カレンダー』 E・クイーン ポケミス

●『犯罪カレンダー』 E・クイーン ポケミス 読了。 <1月~6月>と<7月~12月>の二分冊構成になっているのを二冊合わせて通読した。ご覧の諸賢にとってはまったくどうでもいいことだと思うが、これで二冊読了ということにする。収録作の多くが、設定…

『首のない女』 C・ロースン 原書房

●『首のない女』 C・ロースン 原書房 読了。 決め手のひとつが(伏字)だってのは短編に使われそうなネタで、長編を支えるにはちと心細い。実際、犯人がそういった特性であることを示す手がかりは、どうしても些細な表現になってしまう。私の注意不足を棚に…