累風庵閑日録

本と日常の徒然

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

年内最後

●年内最後の更新です。今年一年、皆様にはお世話になりました。ありがとうございます。来年もまた、よろしくお願いいたします。●光文社文庫の江戸川乱歩全集第十九巻『十字路』から、収録の短編とジュブナイル「天空の魔人」とを読む。特にコメントはなし。●…

幽霊騎手

●横溝正史の戦前中編「幽霊騎手」を読んだ。某氏から、「(伏字)」と基本設定が似ていると教えていただいたのだ。今回の目的は、その点を自分で確認することにある。 一読してほほう、と驚く。設定が似ているどころか、主人公の外見描写も似ているし、さら…

『謎の凶器』 G・D・H&M・コオル 六興キャンドルミステリーズ

●『謎の凶器』 G・D・H&M・コオル 六興キャンドルミステリーズ 読了。 表題作と「未亡人殺人事件」と、どちらも百ページちょいの中編が二編収録されている。表題作は、一応型通りに仕上がってはいるが、展開がまるで平坦。真相に至る筋道や意外性もちと…

『カリブ海の秘密』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『カリブ海の秘密』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 クリスティーともあろうものが、読者に提示した表面的な枠組みをそのまま真相につなげるはずがない。そいう頭があって読み進めていると、確たる根拠もなくぼんやりと、こいつが犯人じゃないか…

朧月千両異聞

●「横溝正史の「左門捕物帳」をちゃんと読む」プロジェクト。今回は第七話で最終話、「朧月千両異聞」を読む。 まずは準備として、原型版である紫甚左もの「富籤五人組」を読む。昭和十六年に今日の問題社から出た『紫甚左捕物帳』に収録されている。 宴席の…

『ミッドナイト・ブルー』 R・マクドナルド 創元推理文庫

●『ミッドナイト・ブルー』 R・マクドナルド 創元推理文庫 読了。 一番面白く、またヘヴィーなのが百二十ページの中編「運命の裁き」であった。やはりこういうタイプのミステリは、事件も人間関係もそれぞれの人物像も、しっかり書き込まれてあった方が読み…

『ホラー小説大全 ドラキュラからキングまで』 風間賢二 角川選書

●『ホラー小説大全 ドラキュラからキングまで』 風間賢二 角川選書 読了。 内容は三部構成で、ホラー小説小史、三大モンスターとして吸血鬼、フランケンシュタインの怪物、狼男を採り上げての考察、そして名作リストとなっている。刊行は約二十年前。当時の…

小説疲れ

●小説を読むのに疲れてしまった。こういうのは年に一度か二度出る症状で、大したことではない。筋トレをして筋肉痛になるようなものである。ちょっと読書を休むか、あるいはリハビリ的にノンフィクションでも読めば、すぐに回復するのだ。 今読んでいるミス…

『ワシントン・スクエアの謎』 H・S・キーラー 論創社

●『ワシントン・スクエアの謎』 H・S・キーラー 論創社 読了。 とにかく作者が物語を転がす、その勢いが全てである。偶然偶然また偶然。読者も登場人物も、奇妙な展開にただ翻弄されるしかない。「読者への挑戦」の挿入も、真犯人とその動機も、どれもこれ…

アンダーショーの冒険

●電車に乗って街に出る。●チケットショップで、三回分残っていた「18きっぷ」を売却。価格は六千円とちょっとで、まあそんなもんだろう。●書店に寄って本を買う。『シャーロック・ホームズ アンダーショーの冒険』 D・マーカム編 原書房

『真紅の輪』 E・ウォーレス 論創社

●『真紅の輪』 E・ウォーレス 論創社 読了 名探偵が依頼人の様々な属性をたちどころに見抜いて仰天させる。ミステリでよくあるそんな場面を、時たま見かける言い回しを借りて表すなら、十分に発達した推理は超能力と見分けがつかない、ってな感じか。本書に…

『疑惑の影』 J・D・カー ハヤカワ文庫

●『疑惑の影』 J・D・カー ハヤカワ文庫 読了。 カーのある種の嗜好が色濃く表れた作品。その嗜好とは、犯罪実話、冒険活劇、歴史といった対象への傾倒であり、怪奇趣味である。作者のやりたかったことが、なかなか意欲的で面白い。真相を知ってから前半の…

質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿

●書店に寄って本を買う。『質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿』 F・ヒューム 国書刊行会『駆け出し探偵フランシス・ベアードの冒険』 R・W・カウフマン 国書刊行会かつて、ハヤカワ文庫『シャーロック・ホームズのライヴァルたち』で一編だけ読んで面…

魔法博士と黄金豹

●「18きっぷ」を使って、ちょいと一泊旅行にでかけてきた。日帰り温泉施設でひとっ風呂浴び、宿は普通のビジネスホテル。温泉旅館に上がり込むような予算はない。夜はかつての飲み仲間に再会して飲んだくれる。●旅のお供は光文社文庫の江戸川乱歩全集第十…

『鷲』 岡本綺堂 光文社文庫

●『鷲』 岡本綺堂 光文社文庫 読了。 怪奇小説集である。文章を味わいながらゆっくり読んでいこうと思っていても、それぞれの作品が不気味で面白く、どんどんページをめくってしまう。その不気味さとは例えば「鰻に呪われた男」の、周りに多くの人がいる状況…

「夜歩く」の初出

●神奈川近代文学館に依頼していた複写資料が届いた。雑誌『男女』、後に誌名が変わって『大衆小説界』に連載された、横溝正史の「夜歩く」である。とりあえず所蔵分すべて、連載五回分を入手した。 目的は、最終章の改変の確認である。なるほど、ざっと眺め…

『青い玉の秘密』 D・B・ヒューズ 論創社

●『青い玉の秘密』 D・B・ヒューズ 論創社 読了。 敵役の双子がなかなか不気味で、その点のサスペンスは申し分なし。だが、いわゆるロマンティック・サスペンス臭い展開がちょいちょい冷や水を浴びせかけ、その度に気持ちが醒める。主人公が大事なことを隠…

盗まれた指

●書店に寄って本を買う。『盗まれた指』 S・A・ステーマン 論創社『震える石』 P・ボアロー 論創社

『こびと殺人事件』 C・ライス 創元推理文庫

●『こびと殺人事件』 C・ライス 創元推理文庫 読了。 全体のテンポがとにかく速い。事件の謎があっという間にどんどん膨らんでいくし、状況をどうにかしようとする人々があたふたと激しく動き回る。序盤、最終的に死体が発見されるまでの展開など、特筆もの…

恙なき遺体

●雑誌『小説幻冬』の創刊号と十二月号とに分載された、小松亜由美「恙なき遺体」を読む。現役の解剖技官でなければ書けない、様々なディテイルが実に面白い。だが、それはあくまで装飾としての面白さである。肝心の、ミステリとしての内容はどうか。 これが…

『死への疾走』 P・クェンティン 論創社

●『死への疾走』 P・クェンティン 論創社 読了。 面白い。実に面白い。その面白さの根幹は、不安感である。あるいは、不安定感と言ってもいい。今目に見えている状況を、そして人物を、確固たる事実としてそのまま信じていいのか。もしかして、根底からひっ…

クリスマスの朝に

●書店に寄って本を買う。『クリスマスの朝に』 M・アリンガム 創元推理文庫●先月の総括。買った本:十二冊読んだ本:十一冊●JRの「18きっぷ」を買ってきた。今回は一泊旅行を一回、つまり往復二回分の使用予定しかない。残りはチケットショップに売って…