累風庵閑日録

本と日常の徒然

2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

年内最後

●年内最後の更新です。今年一年、皆様にはお世話になりました。ありがとうございます。来年もまた、よろしくお願いいたします。●光文社文庫の江戸川乱歩全集第二十巻『堀越捜査一課長殿』を少し読む。先月から、合間を見てちょいちょい読んでいったので、残…

『いきどまり鉄道の旅』 北尾トロ 河出文庫

●『いきどまり鉄道の旅』 北尾トロ 河出文庫 読了。 その先がない終着駅に行ってみるというテーマは、あまり盛り上がりを期待できない。それは読む前から想像がついていた。読み所としては、同行する写真担当氏との掛け合いを主体に、弥次喜多風の二人旅……に…

『過去からの声』 M・ベネット 論創社

●『過去からの声』 M・ベネット 論創社 読了。 主人公は、軽率で勝手な行動をして自らを窮地に追い込む。重要な証拠を隠し、とっさの嘘をつきまくる。そうやってサスペンスを維持する小説作法は、私の好みから遠い。それでもどうにかこうにかうんざりせずに…

江戸川乱歩と横溝正史

●書店に寄って本を買う。『森下雨村探偵小説選II』 論創社『江戸川乱歩と横溝正史』 中川右介 集英社これが今年の本の買い納めである。たぶん。

『赤い酒場』 半村良 出版芸術社

●『赤い酒場』 半村良 出版芸術社 読了。「箪笥」は、何度読んでも凄まじい名作。能登怪異譚では他に、「雀谷」、「蟹婆」が秀逸。「夫婦喧嘩」は、幽霊夫婦の喧嘩のとばっちりで語り手がぼろくそにけなされるという、落語のような佳作。他に、アイデア、捻…

「灰色の魔術師」 H・ランドン

●H・ランドン「灰色の魔術師」を読んだ。昭和十年に、雑誌『新青年』に六回に分けて訳載された作品である。これでようやく、二年越しの宿題を終えることができた。 舞台はニューヨーク郊外の陰鬱な屋敷。密室状態の「夢殿」で、屋敷の主人が殺された。凶器…

恐ろしき四月馬鹿

●午前中は野暮用。●用事を終えて帰宅途中に、書店に寄って本を買う。『恐ろしき四月馬鹿』 横溝正史 柏書房横溝正史ミステリ短篇コレクションの第一巻である。素晴らしい。嬉しい。いまどき、横溝正史のピカピカの新刊が出るなんて。

夢の中の女/霧の中の女

●「横溝正史『女シリーズ』の初出を読む」プロジェクト。まずは「夢の中の女」を読む。ここでひとつ確認。この作品の原題は「黒衣の女」だし、掲載誌も以降の作品とは違う。もともとシリーズ作品ではなかったのである。 物語を鑑賞することがプロジェクトの…

横溝正史『女シリーズ』の初出を読む

●横溝正史関連の大ニュースが発表された。今まで草稿の断片のみ存在が分かっていた、横溝正史の謎の作品「雪割草」の全貌が判明したというのだ。素晴らしい。掲載媒体もそれを所蔵している施設も分かったから、その気になれば今週末にでも読みに行ける。だが…

『ピカデリーパズル』 F・ヒューム 論創社

●『ピカデリーパズル』 F・ヒューム 論創社 読了。 表題作は、読んでいる途中で評価が二転三転した。終盤まではなかなか快調。着実堅実な捜査の過程をじっくり描く作風は、私の好みである。それが終盤になると、なにやら様子が変わってくる。これでは犯罪メ…

『杉の柩』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『杉の柩』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 中盤までは、ありきたりと言っていいほどの内容である。事件の犯人はプロローグですでに裁判にかけられている。動機も手段も明白だし、多くの証拠が揃っているように見える。物語の展開も、よくある男…

欠落

●今日は休み。●上野の国際子ども図書館に行ってきた。目的は、デジタルデータ化されている少年雑誌『少年クラブ』の閲覧である。きっかけは、ツイッターでのHD氏の指摘。横溝正史のジュブナイル「大迷宮」は、角川文庫版と少年倶楽部文庫版とで目次が違っ…

少年少女世界推理文学全集

●国会図書館から、以下の短編ミステリのコピーを入手した。「ヌーン街で拾ったもの」 チャンドラー「非常階段」 ウールリッチ「突然アリスは消えた」 アイリッシュこの件、何をやっているのかをこれから書く。●私のミステリの原点は、あかね書房の「少年少女…

『素性を明かさぬ死』 M・バートン 論創社

●『素性を明かさぬ死』 M・バートン 論創社 読了。 いやはや、実に面白い。地味で起伏に乏しいミステリが、どうしてこんなに面白いのか。それはもう、好みと言う他はない。二百ページ少々の中に書かれているのは、一歩一歩着実に進んでゆく捜査の過程と、探…

夜光虫の系譜

●ちょっとしたきっかけがあって、横溝正史のジュブナイル「大迷宮」を拾い読みした。すると一点、個人的に興味深いことに気付いた。「面をかう人たち」の章から「暗やみの騒動」の章までの展開は、戦前のスリラー長編「夜光虫」の第二編、第三編辺りをベース…

『<サーカス・クイーン号>事件』 C・ナイト 論創社

●発注していた遠近両用眼鏡ができてきた。早速かけてみると、スマホも本も、当然遠方もよく見えて、大変具合がよろしい。かけた直後は視界にかすかな違和感があったが、すぐに慣れた。それなりの出費だったが、作って正解である。●『<サーカス・クイーン号>…

『ペン先の殺意』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●『ペン先の殺意』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。「名作で読む推理小説史」第三弾、文芸ミステリー傑作選である。井上ひさし「鍵」が個人的ベスト。やはりこういうミステリー味の濃い作品が好みに合う。芥川龍之介「疑惑」は再読。初読のときに…

いつ殺される

●書店に寄って本を買う。『いつ殺される』 楠田匡介 河出文庫このシリーズも順調に刊行が続いて、喜ばしいことである。

複写謝絶

●一週間ほど前、国会図書館に三点の文献複写を依頼した。そのうち二点については何の問題もなく処理されて、本日無事入手できた。だが残りの一点は、なんと複写謝絶の回答が。理由は、複写すべきデジタルデータが存在しないから。対象である雑誌の該当号は刊…

『死者はふたたび』 A・R・ロング 論創社

●『死者はふたたび』 A・R・ロング 論創社 読了。 私立探偵が主人公だがハードボイルド色は薄い。二か月前に死亡したとされる人物が妻の前に現れたが、果たして彼は本物か偽物か。そんなシンプルな謎に対して、探偵は様々な可能性を筋道立てて検討する。そ…

『蝶を盗んだ女』 鮎川哲也 角川文庫

●『蝶を盗んだ女』 鮎川哲也 角川文庫 読了。 短編名作選の第十二巻である。描かれている価値観や人物の言動が、なんとも古い。そしてその古さが面白い。昔の日本って、こうだったよなあという感慨のようなものがある。 作品としては、安心して読める秀作揃…

三つの栓

●土曜から泊まりで出かけてきた。かつての飲み仲間に再開して、飲んだくれる。今回はもう一人、これもかつての飲み仲間が加わって、大いに旧交を温める。●出先で覗いた古本屋に、角川文庫横溝正史の旧版が定価の半額で置いてあったので、三冊拾っておいた。●…

『霧の島のかがり火』 M・スチュアート 論創社

●またひとつ歳をとってしまった。ううむ。●そのせいでもないけれど、今日はどうも、がっくりと気疲れした。長々と文章を書く気力がない。●『霧の島のかがり火』 M・スチュアート 論創社 読了。 舞台も事件も魅力的。だが、全体がいわゆるロマンティック・サ…