累風庵閑日録

本と日常の徒然

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

総括

●今月の総括。買った本:九冊読んだ本:十冊最後に明治ものに手を出したので、十一冊は読めなかった。まあ分かっててやったことであるが。

流の暁

●ちくま文庫の『快楽亭ブラック集』から、「流の暁」を読む。 なにしろ明治時代の文章である。改行がほとんどなく、ほぼ全てのページにみっしり文字が詰まっている。さぞかし読み辛いだろうと身構えていたのだが、意外なほど読みやすい。話し言葉を速記で記…

檻の中と洞の中

●「横溝正史『女シリーズ』の初出を読む」プロジェクト。今回は第七作「檻の中の女」を読む。 初出版は三段組み十ページで、前編が三節、解決編が四節の構成である。角川文庫版は構成が同一で、約三十ページの分量になっている。ざっと読み比べてみると、両…

『盗まれたフェルメール』 M・イネス 論創社

●『盗まれたフェルメール』 M・イネス 論創社 読了。 絵画盗難を巡るスリラー。シリアスなトーンで書かれているが、所々にコメディめいた味わいがあって楽しい。特に、アプルビイがモーの店を訪れてからの騒動は出色の出来である。事件の謎は(伏字)し、ア…

誘蛾灯

●電車に乗って街に出て、書店に寄って本を買う。『誘蛾灯』 横溝正史 柏書房刊行が順調で、目出度いことである。●お願いしていた本が届いた。『空魔鉄塔』 大下宇陀児 暗黒黄表紙文庫それにしても、もの凄いレーベルである。

『犯人は秘かに笑う』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●午前中は野暮用。●『犯人は秘かに笑う』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。「名作で読む推理小説史」の六巻目、ユーモアミステリー傑作選である。気に入った作品とその理由とを挙げておく。水谷準「われは英雄」の、主人公の陽性なキャラクター。香…

怪盗ニック全仕事

●書店に寄って本を買う。『鉄道エッセイコレクション』 芦原伸編 ちくま文庫『怪盗ニック全仕事5』 E・D・ホック 創元推理文庫『挿絵叢書(5)高井貞二』 末永昭二編 皓星社先日の日記でもう切ると書いた挿絵叢書を、迷った挙句買ってしまった。何かに負…

『松本恵子探偵小説選』 論創社

●『松本恵子探偵小説選』 論創社 読了。 育ちの良さがにじみ出ているのか、全般的に平明で上品である。それぞれバラエティに富んだ内容を、短いページできっちりまとめて形にしている。夫である松本泰の書く、(伏字)ている。何かを褒めるために別の何かを…

『それゆけ、ジーヴス』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会

●『それゆけ、ジーヴス』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会 読了。 相変わらずウッドハウスの、特に短編集の読み方がよく分からない。何を面白がればいいのだろうか。第一、どれも似たような話なので、途中で飽きてくる。そんななか割と楽しめたのが、「ジー…

『裸で転がる』 鮎川哲也 角川文庫

●『裸で転がる』 鮎川哲也 角川文庫 読了。「鮎川哲也名作選」の第七巻である。どうも今回はちと低調であった。短いページで鮎哲流の地道なミステリを書こうとすると、結末があっけなくなりがちのようだ。 比較的面白かった作品を挙げておく。「女優の鼻」は…

昼酒

●午前中は鮎川哲也の短編集を少し読む。●午後はかつての飲み仲間と久しぶりに再会して、昼酒をかます。遠方に帰るおっさんと別れたのはまだ明るい時分だったが、大概飲んだくれてしまったので、その後何もできず。たまにはこんな週末があってもいい。

ウッドハウスに飽きる

●昨日から、国書刊行会のウッドハウスを読んでいる。今回は短編集だ。で、途中まで読んで飽きた。今までの経験から、ウッドハウスの短編集は一気に通読すると飽きると分かっているのに、ついうっかり二日続けて読んでしまい、案の定である。こいつは中断し、…

『サム・ホーソーンの事件簿V』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『サム・ホーソーンの事件簿V』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。 今回も安定の面白さである。個人的には不可能犯罪への興味よりも、伏線の妙にこのシリーズの魅力を感じている。特に伏線が秀逸だと思ったのが、「消えたロードハウスの謎」と「奇蹟を起…

満席

●午前中は上野の東京都美術館でブリューゲルを観る。ブリューゲル一族の画業を包括的に紹介するのが展示会の趣旨だったようで。初代の絵があまりなく、ちと物足りない。展示会の趣旨なんて、美術館のサイトを覗けば簡単に分かるのである。そうやってちゃんと…

『アリバイ』 H・カーマイケル 論創社

●『アリバイ』 H・カーマイケル 論創社 読了。 国内戦前短編集が二冊続いた後では、翻訳長編というだけで新鮮で面白い。それは個人的な事情だけれども。前半、失踪人探しのパートでは、次第に不穏な空気が高まってゆく展開にぐいぐいページが進む。特に、(…

雪割草

●注文していた本が届いた。『雪割草』 横溝正史 戎光祥出版こいつは嬉しい。できれば年内に読みたいところだが。●倉敷市観光課から、『「巡・金田一耕助の小径」学会誌』が届いた。去年秋のイベントの内容を冊子にしたものである。あとでちゃんと読む。

『小酒井不木探偵小説選』 論創社

●『小酒井不木探偵小説選』 論創社 読了。 少年科学探偵塚原俊夫シリーズの全編を収録したそうで。読めること自体は素晴らしいが、まあジュブナイルだから、内容に過度の期待をしてはいけない。どこか一カ所でも目に留まる美点があれば上出来だろう。と、そ…

盗まれたフェルメール

●書店に寄って本を買う。『アリバイ』 H・カーマイケル 論創社『盗まれたフェルメール』 M・イネス 論創社『三面鏡の恐怖』 木々高太郎 河出文庫横溝正史『雪割草』が、日常生活エリアの書店に見当たらない。なんたることか。しょうがないのでネットで注文…

『松本泰探偵小説選II』 論創社

●『松本泰探偵小説選II』 論創社 読了。 一巻目を読んだ時には薄味で物足りなく感じたが、二巻目はなかなか楽しめた。作風に慣れたのである。真相やトリックがあまりにもあっけないだとか、手掛かりを読者に示さないだとか、多少引っかかる個所があっても…

温泉オフ

●この土日に、横溝ファン総勢六名で連れ立って、栃木の温泉に泊まりのオフ旅行に行ってきた。硫黄泉にじっくり浸かり、たっぷりとした宿の食事をいただき、部屋に引き取ってからは酒を飲みながら延々と横溝話。まったくもって愉快である。たまにこういう楽し…

『墜落のある風景』 M・フレイン 創元推理文庫

●『墜落のある風景』 M・フレイン 創元推理文庫 読了。 まず余談から始める。本を手に取るとき、事前の情報を極力遮断するよう心がけている。粗筋も後書きも読まないのはもちろん、帯の文字すら目に入らないように気を付けている。 本書は、ある美術上の大…