累風庵閑日録

本と日常の徒然

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

今月の総括

●今月の総括。買った本:十二冊読んだ本:十二冊 通常よりも多く読んでいるけれども、通常よりも多く買っているのであった。

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第五回

●昨日開催された、第三回オンライン横溝読書会の録音データから文字起こしをして整理するのに半日を費やす。 ●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第五回をやる。今回は第一巻の収録作から「最後の挨拶」の前半四編を読む。訳者は上塚貞雄である…

第三回オンライン横溝読書会「三つ首塔」

●第三回オンライン横溝読書会を開催した。課題図書は「三つ首塔」。雑誌『小説倶楽部』に、昭和三十年に連載された作品である。参加者は私を含めて十名。 ●会ではネタバレ全開だったのだが、このレポートでは当然その辺りは非公開である。また公開している文…

『笑う仏』 V・スターレット 論創社

●『笑う仏』 V・スターレット 論創社 読了。 西洋人の眼を通して描かれる、夢幻都市北京と掴みどころのない中国人、そして跳梁する”笑う仏”。魅力的な舞台である。犯人設定と犯行の状況も意欲的で際どくて、嬉しい。その点に関して書きたいことはあるけれど…

『竹村直伸探偵小説選II』 論創社

●『竹村直伸探偵小説選II』 論創社 読了。 前半の大人向け作品では「香典作戦」がベスト。先が読めない奇妙な展開でページが進む。ちょいと尖がった結末も悪くない。ちと残念なのは、終盤の展開があまりにも唐突なので。切れ味と解せなくもないが、そこに…

改稿前後の比較

●今度の週末に、オンライン横溝読書会が開催される。課題図書は「三つ首塔」である。ところでこの作品の現在流布している角川文庫版は、初出誌および初期の単行本から改稿されている。読書会がいいきっかけなので、改稿前後の比較をしておこうと思う。 とい…

『シーザーの埋葬』 R・スタウト 光文社文庫

●『シーザーの埋葬』 R・スタウト 光文社文庫 読了。 このシリーズに期待するのは、軽快な会話、魅力的なキャラクター、スピーディーな展開、である。本書はその期待に十分応えてくれて、満足。出先で出くわした事件なので、ウルフとしては珍しく活動的であ…

『平林初之輔 佐左木俊郎 ミステリー・レガシー』 山前譲編 光文社文庫

●『平林初之輔 佐左木俊郎 ミステリー・レガシー』 山前譲編 光文社文庫 読了。 メインの長編、平林初之輔「悪魔の戯れ」は、雑誌連載後約九十年にして初の書籍化という大変な珍品である。読めるということ自体に、本書の大きな意義がある。 で、肝心なのは…

『ヘル・ホローの惨劇』 P・A・テイラー 論創社

●『ヘル・ホローの惨劇』 P・A・テイラー 論創社 読了。 次々とエピソードが積み重ねられて中だるみしない展開はお見事。章の終わりにちょいちょい引きが仕掛けられているのも、ページをめくらせる力になっている。終盤で明かされる、とある小道具の使い方…

『ジーヴスと朝のよろこび』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会

●『ジーヴスと朝のよろこび』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会 読了。 相変わらず、精緻な構成と散りばめられたくすぐりとが好調である。伏線とその回収とが複数同時並行で、あるいは前後がオーバーラップして、何度も繰り返される。その構成力に感心する。…

『藤井礼子探偵小説選』 論創社

●『藤井礼子探偵小説選』 論創社 読了。 上々の短編集であった。日常的にどこにでも転がっているような、卑しさ愚かさ醜さ浅ましさを、堅実な筆致で綴る。確かな人物造形、サスペンスを維持する筆運びの上手さ、そして時折仕掛けられている捻り、といった美…

『悪魔に食われろ青尾蠅』 J・F・バーディン 翔泳社

●『悪魔に食われろ青尾蠅』 J・F・バーディン 翔泳社 読了。 なんともしんどい。主人公の抽象的な幻覚や募りゆく不安感が、ひたすら、執拗に、綴られる。ねちこく起伏に乏しい展開は、私の好みからは遠く隔たっている。こりゃあだめだと判断して、よほど途…

「三つ首塔」の初出誌

●某所に依頼していた、「三つ首塔」の初出誌コピーが届いた。なんと早いことか。いつもなら六週間くらいかかっても不思議ではないのに、今回は最初のアクションからわずか二週間でブツを手にすることができた。素晴らしい。まったく素晴らしい。これから追々…

『三つ首塔』 横溝正史 角川文庫

●『三つ首塔』 横溝正史 角川文庫 読了 今月末に開催される、横溝読書会@オンラインの課題図書である。感想は当日のレポートと一体化させて書く予定。 会まであと三週間もあるのにずいぶん気が早いようだが、そうでもない。読みながら取ったメモを整理した…

『横溝正史の世界』 徳間書店

●『横溝正史の世界』 徳間書店 読了。 長らく積ん読だったが、ようやくちゃんと読んだ。いくつか興味深い記述があるのを、箇条書きしておく。添付の数字は該当するページ。 ◆昭和三年、文芸倶楽部の編集長になった正史は、怪談特集の増刊号を出した。そこに…

『剣の八』 J・D・カー ハヤカワ文庫

●『剣の八』 J・D・カー ハヤカワ文庫 読了。 カーの特徴が抑えられた、大人しめの作品。巻末の解説によれば、ロジックに注力したのだという。確かに、犯人につながるシンプルな手がかりがあからさまに描かれているのはカーらしくないようだ。いつものカー…

ヘル・ホローの惨劇

●お願いしていた本が、二方面から届いた。 『ヘル・ホローの惨劇』 P・A・テイラー 論創社 『笑う仏』 V・スターレット 論創社 『佐左木俊郎探偵小説選I』 論創社 『マダム・サラ』 L・T・ミード ヒラヤマ探偵文庫

『飛鳥高探偵小説選I』 論創社

●『飛鳥高探偵小説選I』 論創社 読了。 「孤独」は、ロジック、殺人手段、動機、といった要素がそれぞれちょっとした出来栄え。しかもそれらが短いページに詰め込まれており、全体なかなかの濃度である。 「火の山」は、舞台背景と密接に結びついたネタと犯…