2023-01-01から1年間の記事一覧
●注文していた本が届いた。『花太郎行状記』 角田喜久雄 捕物出版 ●今年の総括をやる ======================== ◆今年一年間で買った本:百三十一冊読んだ本:百二十九冊 積ん読が二冊増えたわけだ。 ◆読んだ本の中から特に面白かっ…
●『晩酌の誕生』 飯野亮一 ちくま学芸文庫 読了。 元々酒は、神人交歓の場で大勢が集まって飲むものであった。時代が下るにしたがって、次第に独りで飲む習慣が広がってゆく。山上憶良「貧窮問答歌」にある貧しい庶民の独酌や、大伴旅人の独り飲む酒の歌から語…
●『日本の妖怪百科』 岩井宏實 河出書房新社 読了。 山の妖怪、水の妖怪、という具合に全体が四章で構成されている。平易な文章だし総ルビだし、対象読者の年齢はどうやら低めに設定されているようだ。口碑伝説や民話などを主な材料にして、様々な妖怪が解説…
●『都筑道夫創訳ミステリ集成』 作品社 読了 収録の三編を、十月から一編ずつ読んでいった。 「銀のたばこケースの謎」ジョン・P・マーカンド 日本人スパイ、モトさんが活躍するシリーズの一作である。原典は角川文庫から『天皇の密偵』という題で刊行され…
●『毒婦の娘』 W・コリンズ 臨川書店 読了。 題名では娘に焦点が当たっているが、実際の主人公は作中で毒婦と称される母親フォンテーヌ夫人の方である。その造形は、娘の幸せのためなら手段を選ばずいかなる犠牲も厭わない女丈夫として描かれる。狡猾な計略…
●『白波五人帖』 山田風太郎 春陽文庫 読了。 白波五人男それぞれの、凄絶な半生を描く作品集。精神が若く気力も充実していた三十年前に出会っておくべき本であった。面白いことは抜群に面白いのだが、今となってはそのあまりの濃さに少々胸焼けがする。もち…
●『エイプリル・ロビン殺人事件』 C・ライス ポケミス 読了。 明るいトーンのロス・マクドナルドとでもいった作品。人間関係が複雑にからみ合い、過去と現在とが交錯し、やがて人々の隠されていた正体が見えてくる。とにかく展開が速く起伏に富んで、読んで…
●『パノラマ島綺譚』 江戸川乱歩 光文社文庫 読了。 全集の第二巻である。乱歩作品は一通り読んだつもりだったが、どうやら「闇に蠢く」と「空気男」とは読んだことがないような気がしてきたので買ってみた。十月から細切れに読んでいて、今月になってようや…
●『アゼイ・メイヨと三つの事件』 P・A・テイラー 論創社 読了。 かなりライトな味わいである。伏線だのロジックだのの方面にはあまり注力されていないような。たとえば「(伏字)」では、探偵殿は最後まで黙っていたある条件によって犯人が判ったとおっし…
●『隠密飛竜剣』 高木彬光 桃源社 読了。 柳生十兵衛が隠密となって江戸から西国へ向かって旅する道中で、様々な事件に遭遇する連作短編集。面白かったのは、ストーリーが単純でなかったり闘いの場面が割ときちんと書かれていたりの点で、次のようなところ。…
●『もしも誰かを殺すなら』 P・レイン 論創社 読了。 基本設定はびっくりするくらい型通りで、記述は平易でまったくもって読みやすい。殺しには外連味があって、展開は派手でスピーディー。巻末の訳者あとがきによると、作者パトリック・レインは、あのB級…
●『エラリー・クイーン傑作集』 各務三郎編 番町書房イフ・ノベルズ 読了。 裏表紙によれば、「動機」と「結婚記念日」とは単行本初収録だという。本書刊行当時は、それなりの珍品だったのであろう。だが今は、どちらも創元推理文庫『間違いの悲劇』に収録さ…
●『新・幻想と怪奇』 仁賀克維編・訳 ポケミス 読了。 ちょっとした好アンソロジーであった。打率は六割五分といったところ。ローズマリー・ティンパリー「マーサの夕食」は、このネタならどう書いても面白い。ゼナ・ヘンダースン「闇が遊びにやってきた」は…
●今、三冊の作品集を並行してつまみ食いしている。どれも来月には読了できるだろう。 ●書店に寄って本を買う。『孔雀屋敷』 E・フィルポッツ 創元推理文庫『シャーロック・ホームズとサセックスの海魔』 J・ラヴグローヴ ハヤカワ文庫 ●注文していた本が届…
●『密室への招待』 E・D・ホック ポケミス 読了。 収録作中のベストは「壁を通り抜けたスパイ」。伏線の密度が高いし、その内容も上出来。ホーソーンシリーズの「水車小屋の謎」は、(伏字)した理由が秀逸。 事件の謎が魅力的なのは、冒頭の「不可能な”不…
●『振袖小姓捕物控 第一巻 黄金の猿鍔』 島本春雄 捕物出版 読了。 ミステリの一ジャンルとしての捕物帳のつもりで読み始めたら、盛大にずっこけた。主人公が事件に取り組んで解決する形式にはなっているものの、これってハチャメチャな伝奇短編シリーズなの…
●昨日から読み始めた時代小説短編集が、あまりに濃くて胸焼けする。そっちを中断して、作品社の『都筑道夫創訳ミステリ集成』から「銀のたばこケースの謎」を読んだ。感想は通読してから。年内には読む予定。
●『未来が落とす影』 D・ボワーズ 論創社 読了。 この犯人設定は、いい。これはいい。この真相を成立させるためには、なかなかにデリケートな書き方が必要である。記憶が新しいうちに再読したら、そこら辺の機微が分かって面白さも一入であろう。横溝正史の…
●『フランケンシュタイン』 高木彬光 偕成社 読了。 「少年少女世界の名作」の第十二巻で、原作/シェリーとしてある。冒頭の「この物語について」によれば、高木彬光が内容を多少はぶいたりおぎなったりしているという。原典と比較してみたいが、昔読んだ創…
●『完全犯罪大百科(下)』 E・クイーン編 創元推理文庫 読了。 展開にメリハリがあって、意外性や捻りが仕込まれている作品が好みである。そういう意味で気に入った作品はトマス・マクモロー「ケリハー事件」、T・S・ストリブリング「海外電報」ってなと…
●『チューダー女王の事件』 C・ブッシュ 創元推理文庫 読了。 ずいぶん素直な作品であった。(伏字)たことから、犯人はみえみえである。こうなると物語の興味は、犯人の意外性ではなく犯行計画の工夫と真相に至る伏線やロジックとになる。 警察の地道な捜…
●『謎のクィン氏』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 再読である。記憶も定かではないたぶん四十年近く昔に読んで、当時はどうということもなかった。ところが今回読んでみて驚いた。なんと面白いではないか。初読当時はまだ幼くて、この味を受け入…
●『叫びの穴』 A・J・リース 論創社 読了。 なんとも地味で重厚な描写が続き、読み進めるのにちょいと覚悟が要る作品である。その読み味はクロフツの地味さではなく、P・D・ジェイムズの重厚さである。ノーフォークの北海沿岸に位置して、強風が吹き荒れ…
●『手掛かりはここにあり』 D・ホイートリー 中央公論社 読了。 ミステリ小説というよりは、ミステリクイズと言っていい。全体は六十ページだが、後半は関係者の写真に付随する人物調査報告なので、実質的な本文は三十ページもない。しかも状況は極めて単純…
●『江戸川乱歩『悪霊』<完結版>』 今井K 文芸社 読了。 表題作は、乱歩が昭和八年に連載を始めて後に中絶した作品を書き継いで完成させたもの。小説としてではなく論文のようなスタイルを採った方が良かったんじゃなかろうか。あるいは、どうしても小説形…
●『三本の緑の小壜』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫 読了。 登場人物が活き活きと描かれており、その面白さでぐいぐい読める。マンディの造形と人間関係の展開とがあまりにもありがちだけれども、それも分かりやすさに通じて停滞することなく頭に入って…
●今月の総括。買った本:十一冊読んだ本:十三冊 上下巻のコリンズが予想外に捗って月内に読了できたので、その分プラス二冊である。
●『夫と妻』 W・コリンズ 臨川書店 読了。 幼少期から大親友だったふたりの女性。だが大人になった今、ふたりの境遇は大きく異なっていた。最愛の人アーノルドとの結婚を間近に控え、幸福の絶頂にあるブランチ。ちょっとした気の迷いから卑劣な男ジェフリー…
●『山田風太郎新発見作品集』 出版芸術社 読了。 『橘傳来記』に収録された「朝馬日記」は二ページ分欠落があったということで、それを補って本書に再収録されている。つくづく、マニアさん向けの本であるな。私はホンの上辺だけの風太郎ファンなので、おつ…
●『江戸川乱歩と横溝正史』 中川右介 集英社 読了。 出版社興亡史としての側面を興味深く読んだ。だが個人的は、横溝正史の評伝としての側面に最も読み応えがある。正史が様々なエッセイや日記に書いた情報を要領よく整理して、乱歩との関係を軸に再構成した…