累風庵閑日録

本と日常の徒然

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『甲賀三郎探偵小説選IV』 論創社

●『甲賀三郎探偵小説選IV』 論創社 読了。 メインの長編「姿なき怪盗」は、起伏が激しく展開の早い快作。細けえこたあいいんだよの精神で、甲賀三郎の筆に流されていけばよろしい。あえて書くなら、敵の首領がほとんど背景に退いているので、主人公対悪漢…

『ベッドフォード・ロウの怪事件』 J・S・フレッチャー 論創社

●『ベッドフォード・ロウの怪事件』 J・S・フレッチャー 論創社 読了。 まず、物語を転がす原動力として偶然を積極的に活用する作風を、それこそがフレッチャーだと受け入れることにする。せっかく買った本なのだから、少しでも楽しめる読み方をした方がい…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第十四回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第十四回として、第三巻の続きを読む。今回は「歸つて來たシヤアロツク・ホウムズ」から、前半の七編を読んだ。訳者は上塚貞雄である。「空家の冒險」にて、バリツのことを「柔術即ち日本流のレスリング」と…

『忘られぬ死』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『忘られぬ死』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 章立てが秀逸。第一章は、一年前に自殺した姉ローズマリーのことを妹アイリスの視点で回想する。姉は全てを手に入れていた。美貌も、優雅な身のこなしも、財産も、幸せな結婚も。ところが二章以降…

『佐左木俊郎探偵小説選I』 論創社

●『佐左木俊郎探偵小説選I』 論創社 読了。 メインの長編「狼群」が、意外なほど面白い。政治家暗殺を狙う犯人グループと、組織力にモノを言わせる警察との対決。舞台は房総半島の山林。刻々と変わる状況に応じて都度襲撃計画を修正して臨む犯人側と、とも…

『シャーロック・ホームズの世界』 長沼弘毅 文藝春秋

●『シャーロック・ホームズの世界』 長沼弘毅 文藝春秋 読了。 オーソドックスなシャーロキアン本。扱われているテーマは、ホームズの芝居気、コカイン、変装、電話と電報、医者としてのワトスン、など。第五章「ホームズとピストル」で語られる、ホームズは…

『夢の丘』 A・マッケン 創元推理文庫

●『夢の丘』 A・マッケン 創元推理文庫 読了。 多感で奇矯な文学青年の、幼年期から青年期までの人生録。主に五種類の描写が、前後関係がてんでんばらばらに入り乱れて綴られる。その五種類とは、青年が文学や人生についてあれこれ考える様子と、ロンドンで…

『千両文七捕物帳 第二巻』 高木彬光 捕物出版

●『千両文七捕物帳 第二巻』 高木彬光 捕物出版 第一巻を読んだ経験から、このシリーズはわずかでもミステリ的趣向が含まれていればそれでよしというくらい、ハードルを下げて臨むことにする。「神かくしの娘」は、一応のロジックもあるし心理の綾もある佳品…

『延原謙探偵小説選II』 論創社

●『延原謙探偵小説選II』 論創社 読了。 わずか数ページの、しかも捻りや切れ味で勝負するタイプではない掌編が多い。コメントを付けたいと思う作品は少ない。一番気に入ったのが「カフェ為我井の客」である。主人公の奇人為我井(ためがい)君が醸し出す…

『幸運な死体』 C・ライス ハヤカワ文庫

●『幸運な死体』 C・ライス ハヤカワ文庫 読了。 事件そのもの複雑さと展開の派手さとが読みどころ。様々な出来事がどこでどうつながっているのかさっぱり分からない混沌とした状況に加えて、幽霊騒動まで持ち上がる。いつもならお馴染み三人組の活躍が読み…

『飛鳥高探偵小説選V』 論創社

●『飛鳥高探偵小説選V』 論創社 読了。 メインの長編「ガラスの檻」は、昭和サラリーマン哀話といったところ。事件とその展開とは面白いが、その一方で身につまされて読むのがしんどくもある。作中で描かれている空気感や人間関係の構造は、時代が違えど現…

『祕密第一號 他一篇』 改造社

●『祕密第一號 他一篇』 改造社 読了。 昭和五年に刊行された、世界大衆文学全集の第十一巻である。表題作、シドニイ・ホルラア「祕密第一號」はなかなかご機嫌な通俗スリラー。悪の秘密結社と主人公の青年との闘争劇が、早いテンポで描かれる。とにかく分か…