累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ノー・ネーム』 W・コリンズ 臨川書店

●『ノー・ネーム』 W・コリンズ 臨川書店 読了。

 裕福な貴族の娘だとばかり思っていたのに、実は私生児だと判明した主人公マグダレンとその姉ノラ。題名は、私生児なので一族の姓を名乗る資格がない、すなわち名前がないという意味。

 父親が死んだとき、彼女達は法の壁に阻まれて財産を相続できなかった。代わりに相続したのは父親の兄マイケルで、全く正当な法の定めによるものである。にもかかわらずマグダレンは、マイケルを自分から財産を奪った敵と思い定めて闘いを挑む。この闘争がすこぶる面白い。両陣営に狡猾な軍師がいて、知力対知力、謀略対謀略のぎりぎりの闘いが繰り広げられる。

 先が読めないのも魅力である。物語を転がすためにはなんでもありで、強引な展開も極端な偶然もどんと来い。途中で(伏字)だのは、あまりの力づくで笑ってしまった。

 ところでこの作品は上中下の三巻本である。他人様には心底どうでもいいことだろうが、これで今月の読了数は三冊とする。