累風庵閑日録

本と日常の徒然

広重

サントリー美術館に、「広重ビビッド」と題する浮世絵の展示を観に行ってきた。歌川広重の風景版画シリーズ「名所江戸百景」と「六十余州名所図会」とを中心にした内容である。展示品のほとんどが個人蔵だが、なんとこの蒐集品、近年までその存在が一般に知られていなかったそうな。しかも両シリーズが全点揃っていて、その全てが初摺で、保存状態が極めて良好という、もの凄い展示である。現物を目にすると、びっくりするくらい色が鮮やか。

 「六十余州名所図会」では、「伯耆 大野 大山遠望」の、雨中の田植えの情景にぐっと来た。どこがどうというのではない普通の田園風景だが、雨に煙る樹々の描写がなにやら胸に迫る。「江戸名所図会」は、その大胆な構図が眼福である。

●ようやく、DVD「不知火奉行」を観た。ちょっとした犯人指摘のシーンが、映像で観ると楽しい。それにしても白塗りの勝新太郎が濃い。啖呵をきるときの台詞なんかに、後の座頭市の片鱗をちょっとだけ感じる。