累風庵閑日録

本と日常の徒然

2025-01-01から1年間の記事一覧

今月の総括

●ジュブナイル長編を三編収録したオムニバス本から、最初の長編を読んで中断。初老のオヤジ(私)にとって、ジュブナイル長編を立て続けに読むのはしんどい。感想は通読してから。 ●本を買う。『英国幽霊屋敷譚傑作集』 夏来健次編 創元推理文庫 ●依頼してい…

「『翻訳道楽』を読む」プロジェクト第三回

●「『翻訳道楽』を読む」プロジェクトの第三回。「#011」から「#015」までと、おまけの「SP02」を読む。コメントを付けるのは気が向いた作品だけにしておく。 ◆ジャック・フットレル「廃屋の謎」 思考機械シリーズである。ヴァン・ドゥーゼン教…

『蜘蛛の巣[小説版]』 C・オズボーン クリスティー文庫

●『蜘蛛の巣[小説版]』 C・オズボーン クリスティー文庫 読了。 戯曲版をクリスティー文庫で読んだのは十八年前。当然全部忘れているので、今回は初読同然である。主人公クラリッサと庭師ミス・ピークの造形のおかげで、明るく軽快な味わいになっている。…

『人盗り合戦』 R・スタウト 論創社

●『人盗り合戦』 R・スタウト 論創社 読了。 今まで読んだネロ・ウルフシリーズでも上位に位置する秀作。理屈っぽい会話の面白さはいつもの味で、安心して楽しめる。それに加えて今回は、起伏が大きくサスペンスが強く、事件の悲惨さが際立っている。 ウル…

『エラリー・クイーン探偵事務所』 E・クイーン 語学春秋社

●『エラリー・クイーン探偵事務所』 E・クイーン 語学春秋社 読了。 イングリッシュトレジャリーシリーズという、英語学習用の教材である。ラジオドラマの原文が見開きの左ページ、その日本語対訳が右ページに配されている。さらに、ドラマ音源を収めたCD…

『恐ろしき四月馬鹿』 横溝正史 柏書房

●『恐ろしき四月馬鹿』 横溝正史 柏書房 読了。 柏書房から出た一連の横溝本を、まだ読んでいない。せっかく買ったのに積ん読のままにしておくのはもったいないので、せいぜい読んでいくことにした。まずは「ミステリ短編コレクション」の第一巻である。以下…

『天狗』 大坪砂男 創元推理文庫

●『天狗』 大坪砂男 創元推理文庫 読了。 全集の第二巻である。表題作「天狗」は、何度読んでも異様な名作。「雨男・雪女」は、例えるなら読み易い泉鏡花。「閑雅な殺人」は、この内容をぎゅっと凝縮したら夢野久作の猟奇歌になりそうな。その他気に入った作…

『紫雲の怪』 R・V・ヒューリック ポケミス

●『紫雲の怪』 R・V・ヒューリック ポケミス 読了。 伏線がお見事。かなり序盤のさりげない記述が事件に関係がある。言われてみればなるほど、と思える記述の不自然さがある。なんとこんなところにこんな形で、という意外な伏線がある。上出来である。 様…

『碑文谷事件』 鮎川哲也 出版芸術社

●『碑文谷事件』 鮎川哲也 出版芸術社 読了。 「鬼貫警部全事件」の第一巻である。収録の八編中、六編が既読であった。だが、内容はほとんど覚えていないのでなんら問題はない。気に入ったのは以下のような作品。あまりにも大胆で際どいアリバイ工作の、表題…

『バトラー弁護に立つ』 J・D・カー ポケミス

●『バトラー弁護に立つ』 J・D・カー ポケミス 読了。 不可能犯罪を盛り込んだ軽スリラー。殺人の嫌疑を受けた主人公ヒュー・プロンティスの逃避行を描くが、探偵役パトリック・バトラーはじめ何人もの協力者がいるので、サスペンスは薄い。不可能犯罪の真…

『仮題・中学殺人事件』 辻真先 創元推理文庫

●『仮題・中学殺人事件』 辻真先 創元推理文庫 読了。 複数の短編の間に、それを書いた作者の物語が挟まっているというのが基本構成である。各短編のうち最も気に入ったのが第二話「中学殺人事件」。人物造形が真相に結び付いているし、意外性を演出する(伏…

『ミステリ・ウィークエンド』 P・ワイルド 原書房

●『ミステリ・ウィークエンド』 P・ワイルド 原書房 読了。 とにかく謎が魅力的。次々と畳みかけるように謎が増幅していく。登場人物の造形も秀逸で、中でも作中で大きな役割を果たすドウティ氏のうさん臭さが素晴らしい。精神を患って飛行機の真似をして室…

『逃げる幻』 H・マクロイ 創元推理文庫

●『逃げる幻』 H・マクロイ 創元推理文庫 読了。 何かを恐れているらしい少年が、何度も家出を繰り返す。その恐れが彼の内面にあるのなら神経症のようなものだ。だが、その恐れが彼の周囲にあるのだとしたら。一見したところ、彼の家庭は非の打ち所がないよ…

『列車の死』 F・W・クロフツ ハヤカワ文庫

●『列車の死』 F・W・クロフツ ハヤカワ文庫 読了。 時は第二次大戦中。重要な軍需物資をアフリカ戦線へ運ぶべく、特別貨物列車が編成された。ところがその情報はドイツのスパイ網に漏れており、列車に対する破壊工作が仕掛けられた。事故を装った工作に対…

今月の総括

●本を買う。『ジョン・サンストーンの事件簿<上>』 M・W・ウェルマン アトリエサード ●今月の総括。買った本:二十六冊読んだ本:十一冊 文学フリマが開催された月は購入数が跳ね上がる。

半分まで読んで中断

●某個人短編集を半分まで読んで中断。感想は通読してから。 ●本を買う。『地球盗難』 海野十三 春陽文庫『白日鬼』 蘭郁二郎 春陽文庫

『学長の死』 M・イネス 東京創元社

●『学長の死』 M・イネス 東京創元社 読了。 世界推理小説全集の第七十巻である。関係者の行動を分単位で追求し、要所要所でそれまで分かったことを整理するディスカッションが挟まる。そんな私好みの要素が盛り込まれており、読んでいて嬉しい。骨太なド直…

「『翻訳道楽』を読む」第二回

●個人的プロジェクト「『翻訳道楽』を読む」の第二回は、「#006」から「#010」までと、おまけの「SP01」を読む。 ◆H・C・ベイリー「壊れたヒキガエル」 フォーチュン氏シリーズ。巡邏中の警官が毒殺されるという、冒頭の謎が魅力的。動機の特…

『月を消せ』 藤澤恒夫 東方社

●『月を消せ』 藤澤恒夫 東方社 読了。 題名に、長編推理小説と添え書きがある。主人公は、大阪梅田の会社に勤めているタイピスト、遠山梨花子。彼女はその夜ボーイ・フレンドと野球を観に行く予定があって、ハンドバッグに双眼鏡を入れていた。 オフィスが…

『マット・スカダー わが探偵人生』 L・ブロック 二見書房

●『マット・スカダー わが探偵人生』 L・ブロック 二見書房 読了。 架空のシリーズキャラクター、マット・スカダーの自伝という、奇妙な本である。八十歳を過ぎたスカダーが、ローレンス・ブロックに依頼されて自らの来し方を語る。ストーリーなんかなさそ…

『予告殺人』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『予告殺人』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 今月頭の日記に書いたように、数十年ぶりの再読である。誰が被害者なのかも覚えていなかったから、当時あまり感銘を受けなかったのかもしれない。今回読んでも、終盤の意外性の演出がちょっとアレッ…

『漆黒の霊魂』 A・ダーレス編 論創社

●『漆黒の霊魂』 A・ダーレス編 論創社 読了。 「ダーク・ファンタジー・コレクション」の第五巻である。個人的ベストは、スティーヴン・グレンドン「ミス・エスパーソン」。ネタは早いうちに分かるし、展開に捻りはない。だが、語り口の味わいが上々で、読…

『ホームズ少年探偵団』 R・ニューマン 講談社青い鳥文庫

●『ホームズ少年探偵団』 R・ニューマン 講談社青い鳥文庫 読了。 原題が「The Case of the Baker Street Irregular」というホームズパスティシュ。素直に訳せば「ベーカー街遊撃隊の事件」となるところ、対象読者にとって分かりやすい訳題にしたのだろう。…

『横溝正史を語ろう』

●本が届いた。『Re-ClaM vol.14』『Re-Clam eX vol.6』 ●東京文フリで頒布した同人誌『横溝正史を語ろう』を、BOOTHにて販売します。よろしくお願いします。 https://fuufuushi.booth.pm/items/6895586

東京文フリ

●東京文フリに行ってきた。以下、買った本の一部。『世話の暫』 鶴屋南北/納富廉邦 TEXTLIFE『科学探偵ブルータス・ロイドの事件簿』 J・R・ファーン 爬虫類館出版局『アプルビイ犯罪夜話』 M・イネス 翻訳道楽『翹望』 橘外男 書肆銀月亭『古典…

『ハーバード大学殺人事件』 T・フラー 青弓社

●『ハーバード大学殺人事件』 T・フラー 青弓社 読了。 二百ページほどしかなく、装飾の少ないシンプルな作品。だからこそ、余剰分のないミステリそのものを楽しめる。それはたとえば以下のような要素である。 関係者の分単位の行動が次第に明らかになり、…

読了

●一冊読み終えた。だが、どうも感想は書けそうにない。こういったタイプの物語に対する評価軸を持っていないし、なによりこの作品について語ろうという気が湧いてこない。今日はこれだけ。こんな状態で書名を挙げてもしょうがないだろう。 ●ネットショップで…

『領主館の花嫁たち』 C・ブランド 東京創元社

●『領主館の花嫁たち』 C・ブランド 東京創元社 読了。 クリスティアナ・ブランドの最後の作品は、まさかのゴースト・ストーリーだった。アバダール館にかけられた呪いは、遠い昔に死んだ者の憎しみに端を発する。そして今、生きている者達が、愛と憎しみと…

『仁木兄妹長編全集2 冬・春の巻』 仁木悦子 出版芸術社

●『仁木兄妹長編全集2 冬・春の巻』 仁木悦子 出版芸術社 読了。 「棘のある樹」は、犯人を限定する手掛かりがお見事。(伏字)という、読者の判断を誤らせる展開もニクイ。ところが肝心の真相は、私の好みから少々外れていて読後感はわりと平熱だった。 「…

『悪夢はめぐる』 V・マーカム 原書房

●『悪夢はめぐる』 V・マーカム 原書房 読了。 異様な作品。殺人が起きて、さて犯人は誰でしょうなんて一本調子の物語ではない。当座の主題が次々と変わってゆく。宝探し、人探し、写真探し、そしてまた人探し、といったように。当初の物語は途中でどこかに…