累風庵閑日録

本と日常の徒然

2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

今月の総括

●今月の総括。買った本:三冊読んだ本:十二冊

『シャダーズ』 A・アボット ROM叢書

●『シャダーズ』 A・アボット ROM叢書 読了。 痕跡を残さない殺人法を発見したとされる怪人ボールドウィン博士と、ニューヨーク市警本部長サッチャー・コルトとの闘争を描くスリラー。一見自然死としか思えない状況で次々と死んでゆく関係者達。死体が積…

『復讐鬼』 高木彬光 偕成社

●『復讐鬼』 高木彬光 偕成社 読了。 扉には「大デューマ原作」とある。ダルタニヤン物語の第二部を、高木彬光が子供向けに分かりやすくリライトしたものである。大きめの活字で約三百ページの本なのだが、完訳は文庫版で三巻になるというから、かなり省略さ…

『黄金の13/現代篇』 E・クイーン編 ハヤカワ文庫

●『黄金の13/現代篇』 E・クイーン編 ハヤカワ文庫 読了。 六百ページ近い分量なのでもともと読了までに四日かける予定だったのだが、間に一日休んだので五日もかかってしまった。気に入った作品は以下のようなところ。 ジョルジュ・シムノン「幸福なる…

読書を休む

●フィクションに疲れた。頭が物語を受け付けなくなった。といっても、なんら深刻な事態ではない。年に一度か二度は陥る状態で、いうなれば筋トレをして筋肉痛になったようなものである。対処法も分かっている。一日くらい読書を休めば回復するのだ。という訳…

『英雄と悪党との狭間で』 A・カーター 論創社

●『英雄と悪党との狭間で』 A・カーター 論創社 読了。 共同体の誰とも馴染めないでいる主人公が、ひょんなことから(便利な言葉だ)蛮族の青年と行動を共にすることになる。どうやらこの作品、物語の起伏や謎やスリルや、そういったエンターテイメント小説…

『薔薇の輪』 C・ブランド 創元推理文庫

●『薔薇の輪』 C・ブランド 創元推理文庫 読了。 辺境の農家で一人の男が心臓発作で死んでおり、家の前の車の中では一人が銃殺されていた。事件の状況は微妙に、だが決定的に矛盾している。その矛盾を説明する仮説が、新たに判明する情報に順次上書きされつ…

『アガサ・クリスティーの大英帝国』 東秀紀 筑摩選書

●『アガサ・クリスティーの大英帝国』 東秀紀 筑摩選書 読了。 「名作ミステリと「観光」の時代」という副題が付いている。クリスティー作品の多くを観光ミステリと捉え、そこで描かれた観光旅行のあり方を通して英国社会の変遷をたどる内容である。対象作品…

『宙に浮く首』 太下宇陀児 春陽文庫

●『宙に浮く首』 太下宇陀児 春陽文庫 読了。 表題作「宙に浮く首」と「たそがれの怪人」とがそれぞれ約七十ページ、「画家の娘」が二十ページちょいという三編が収録されている。表題作は奇妙な作品。序盤で起きた殺人の謎が放置されたまま、物語の焦点は失…

『ベヴァリー・クラブ』 P・アントニー 原書房

●『ベヴァリー・クラブ』 P・アントニー 原書房 読了。 事件もその後の展開も、割とありがちなものであった。発見された直後に消え失せ、再び現れた死体。多すぎる手掛かりと多すぎる容疑者。誰もが動機を持ち、誰もが機会を持っていた。 だが、けっして凡…

『モーツァルトの子守歌』 鮎川哲也 立風書房

●『モーツァルトの子守歌』 鮎川哲也 立風書房 読了。 割と小粒な作品が多かったようだ。そうはならんだろ、と思う作品もあった。そんななかで、「人形の館」はシンプルですっきりした真相が好ましい佳品。個人的ベストは「ジャスミンの匂う部屋」で、現場の…

『毒のたわむれ』 J・D・カー ポケミス

●『毒のたわむれ』 J・D・カー ポケミス 読了。 舞台となる屋敷とその住人達はどうも陰鬱で、事件はやけに陰惨で。それなのに、探偵役のパット・ロシターがあまりに奇矯な造形なのが少々浮いているようだ。巻末の訳者あとがきでは、そのモデルをチェスタト…

『シャーロック・ホームズ対切り裂きジャック』 M・ディブディン 河出文庫

●『シャーロック・ホームズ対切り裂きジャック』 M・ディブディン 河出文庫 読了。 意欲的な作品、と申し上げておく。少々悪趣味でもある。序章で「多くの人がひどくショックを受ける」云々とあり、「はじめに」の章での思わせぶりな書き方があり、まあそう…

『小鬼の市』 H・マクロイ 創元推理文庫

●『小鬼の市』 H・マクロイ 創元推理文庫 読了。 第二次大戦中のカリブ海を舞台にした、サスペンス色の強い作品。時代設定が設定だけに、事件にはなにやらスパイだの敵組織だのの臭いが漂う。真相を導くための伏線がいろいろ仕込まれている点は嬉しいが、犯…