累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ユークリッジの商売道』 P・G・ウッドハウス 文藝春秋

●『ユークリッジの商売道』 P・G・ウッドハウス 文藝春秋 読了。

 息をするように嘘を吐いて周囲の人間を振り回す真正ダメ人間のユークリッジと、彼に何度騙されても裏切られても経験から何も学ばない愚か者で、語り手でもある友人コーコランの物語。こういう人物像に好感を持てないので、不愉快さが先に立ってあまり乗れなかった。

 各編それぞれ展開に工夫を凝らしているのは分かるのだが、何の伏線もないどんでん返しをどう楽しめばいいのか、いまひとつピンとこない。そういう読み方をしてしまうのは、日頃ミステリばかり読んでいる弊害かもしれない。もうひとつ。上の段落で書いた負の要素で気持ちが冷めていなければ、伏線がなくったって展開そのものを素直に楽しむことができたかも。

 例外的に「きんぽうげ記念日」は面白かった。ユークリッジシリーズの面白さではなく、よくできた詐欺ミステリの味わいである。

●これでウッドハウス文藝春秋版単行本四冊を読み終えた。文春では文庫のウッドハウスが二冊未読で残っているが、次からは国書刊行会の方に手を出すことにする。