累風庵閑日録

本と日常の徒然

『高木彬光探偵小説選』 論創社

●パソコンを買ってきた。セットアップはあとで。

●『高木彬光探偵小説選』 論創社 読了。

 戦後活動を開始した作家が論創ミステリ叢書に収録されるのは、これが初めてだろうか。本格ミステリ勃興後の作家だから、好みに合った作品が多くて面白く読めた。

 ベストは「闇の声」で、いかにもな設定と真相との関係が、そっちかよ、と思う。ミステリクイズに肉付けしたような「時は裁く」も、二時間サスペンスドラマのエッセンスを抽出したような「殺人の挽歌」も、典型好きとしては好ましい。「女の復讐」は地道な捜査の模様が読ませるし、(伏字)てしまう結末が秀逸。

 他に、「自殺恐怖症」のダークさも悪くない。派手な展開の通俗スリラー「黒魔王」は、こういう味はたまに読むなら口が変わって面白い。この内容で百二十ページも読めばもう十分だけども。「風戸峠の秘宝」の主人公はまるで愚かに見えるけれども、私も含めて誰もがふとした迷いで同じ目に遭う可能性があるわけで。恐ろしいことである。