西洋人の眼を通して描かれる、夢幻都市北京と掴みどころのない中国人、そして跳梁する”笑う仏”。魅力的な舞台である。犯人設定と犯行の状況も意欲的で際どくて、嬉しい。その点に関して書きたいことはあるけれども、非公開にしておく。手掛かりとも言えないような些細過ぎる記述に、初読で気付ける読者はいないのではなかろうか。
事件の真相は(伏字)タイプだし、動機の処理に関してもずいぶんと(伏字)ている。だが、作者の力点がその辺りに無いのだろうと思えば、不満にはならない。全体はきちんと収束しており、満足度は高い。
●お願いしていた本が届いた。
『無邪気な殺人鬼』 宮野村子 盛林堂ミステリアス文庫
宮野村子は、論創ミステリ叢書の二冊を読んだおかげで私の好みではないことがはっきり分かっている。それでも、こういう本が出たからには買うのだ。