累風庵閑日録

本と日常の徒然

『呪のデュマ倶楽部』 A・P・レベルテ 集英社

●『呪のデュマ倶楽部』 A・P・レベルテ 集英社 読了。

 稀覯本テーマのミステリである。題材となっている本が凄い。そもそもの原本は、人類が文字を使い始めるはるか以前に悪魔によって書かれた魔書で、それを基に十七世紀に作られたのが、作中で扱われている『影の王国への九つの扉』だそうな。なんという風呂敷の拡げっぷりか。

 しかも、その本に載っているとされる版画が、実際に図版として本書に挿入されている。しかもしかも、その版画は単なるにぎやかしではなくて、ストーリーに密接に結びついているときたもんだ。こういう外連味がなんとも楽しい。

 ただ、保留事項が一点。こいつは手強い。ほとんど改行の無い晦渋な文章でもって、大量の枝葉を伴って語られる物語を読み進めてゆくのは、なかなかにしんどい。本来ならば存分に時間をかけて、枝葉も含めた全体を味読しつつゆっくりとページをめくってゆくのが望ましいアプローチであろう。こちとら生来のせっかちで、そんなまどろっこしいことやってられないけれども。そして結局、たどり着いた結末は私の理解を超えるものであった。なんだこりゃ。