累風庵閑日録

本と日常の徒然

『紅楼の悪夢』 R・V・ヒューリック ポケミス

●『紅楼の悪夢』 R・V・ヒューリック ポケミス 読了。

 今回狄判事が取り組むのは、なんと密室殺人である。しかも三十年という時間軸が背景にある。同じ部屋で何人も人が死ぬという怪奇味もある。複数の(伏字)されているのも、読んでいてミステリの楽しさが味わえる。

 途中のアクションシーンが、わずかなページながらエキサイティング。登場人物の造形も魅力的。特に、街の顔役の部下で賭場の用心棒コンビ、蟹やんと小蝦どんのキャラクターが出色である。狄判事の部下、馬栄と気脈を通じて事件解決に一役買う。そして馬栄自身も、公私ともに様々な意味で大活躍する。

 だが、一番ヘヴィーなのは物語そのもので。三十年の時間の重みが、胸に迫る。二段組みで百七十ページしかない短めの作品だが、中身は重量級であった。

●書店に寄って本を買う。
『100分で楽しむ名作小説 黒猫亭事件』 横溝正史 角川文庫
『建築知識 4月号』 株式会社エクスナレッジ