累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ミッドナイト・ブルー』 R・マクドナルド 創元推理文庫

●『ミッドナイト・ブルー』 R・マクドナルド 創元推理文庫 読了。

 一番面白く、またヘヴィーなのが百二十ページの中編「運命の裁き」であった。やはりこういうタイプのミステリは、事件も人間関係もそれぞれの人物像も、しっかり書き込まれてあった方が読み応えがある。短編では「眠る犬」が秀逸。短いページの中に複雑な事件が詰め込まれ、多くの人々が悲劇に飲み込まれてしまう。表題作は、ロスマク作品でお馴染みの悲劇的な内容よりも、真相に至る情報の出し方がかなりアレな点で記憶に残る。

 ところで「運命の裁き」は、長編「運命」の原型だそうな。長編版は来年読むつもりだが、原型を先に読んでしまって、良かったのか悪かったのか。