累風庵閑日録

本と日常の徒然

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第十九回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第十九回として、引き続き第四巻を読んでゆく。今回は、医者とその周辺とを題材にした短編集「紅き燈火を繞りて」から、後半の六編である。

 面白かったのは、音と声とで読者の想像を刺激しながらじわじわと話を盛り上げてゆくオーソドックスな怪奇小説「大學の怪異」と、電気椅子死刑の黎明期を舞台にナンセンス落語かSFかという奇天烈な展開の「ロス・アミゴス町の大失敗」であった。

 そしてこの二編は、どちらも翔泳社の『ドイル傑作集II』に収録されている。今になって、この本の作品選択の確かさに感心した。ついでに書いておくと、翔泳社版の訳題は前者が「競売ナンバー249」、後者が「ロスアミゴスの大失策」である。