累風庵閑日録

本と日常の徒然

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第十八回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第十八回として、引き続き第四巻を読んでゆく。今回は、医者とその周辺とを題材にした短編集「紅き燈火を繞りて」から、九編を読む。全十五編のうちの九編だが、前半は短い作品が多いので分量としてはほぼ半分である。

 内容はちょっとした小噺、医療綺譚、ホームコメディ、運命の悲劇と、バラエティに富んでいる。だが目の覚めるような切れ味はなく、まあ軽い読み物というべきか。

 前半で気に入ったのは、人の心の不確かさを描いた「時代遅れ」と「スヰートハート」、日本の戦前に変格探偵小説として書かれても不思議ではない「サノックス夫人事件」、展開はメロドラマめいた悲劇なのに登場人物の奇矯さのせいで喜劇に転じる寸前の「生理學者の妻」といったところ。

●昨日開催された横溝正史読書会の文字起こし作業をほぼ終えた。これが済んだら内容を整理して、公開用のテキストを作る。