累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ポジオリ教授の事件簿』 T・S・ストリブリング 翔泳社

●『ポジオリ教授の事件簿』 T・S・ストリブリング 翔泳社 読了。

 全体に奇妙さが漂う短編集の秀作であった。

 たとえば「警察署長の秘密」の、盗難事件が起きたら警察が必ず現金だけを取り戻す町。「靴下と時計の謎」の、屋敷に押し入って靴下だけを奪っていく強盗。「塗りかけの家」には、題名通りペンキが半分だけ塗られて放置された家が登場する。

 ポジオリ教授の異様な超推理が冴える快編もある。「真昼の冒険」では、偶然立ち寄った店で偶然手にした新聞を読んだだけで、その街で起きていた事件の犯人像にたどり着く。「個人広告の秘密」では、笑った理由について教授が推理を巡らす。「ポジオリと逃亡者」も「電話猟師」も、ほんの些細な情報から真相を導く。

 一番の怪作が「八十一番目の標石」であった。ポジオリ教授の超推理がこの作品でも披露され、男が店を出ていく様子からある結論を導く。そしてこの結末ときたら。