累風庵閑日録

本と日常の徒然

『セントラル・パーク事件』 C・ライス ハヤカワ文庫

●『セントラル・パーク事件』 C・ライス ハヤカワ文庫 読了。

 明るくユーモラスで軽快で、実にもう読んでいて楽しい作品であった。七年の失踪の後再びニューヨークに戻ってきた男ピジョン。そんな彼を金儲けのために誘拐する主人公コンビ、ビンゴとハンサム。彼らの下宿先の娘ベイビー。彼らは次第に奇妙な疑似家族になってゆく。ピジョンが作る旨い料理を味わい旨いコーヒーを飲んで、ビンゴは平凡な家族の幸せをしみじみと感じる。何人もが殺される派手な事件に翻弄されているからこそ、かりそめの平穏な日常が沁みるのだろう。そんなビンゴの姿に、読んでいる方としても沁みるものがある。

 真相は、なるほどちょっと感心した。ミステリの意外性を考えるならこの着地しかないとは思うが、それは読み終えてからの後知恵である。こいつを成立させるために大分際どい書き方をしているようだ。作者の気配りや構成力にも感心する。その辺、再読したらよりいっそう楽しめるだろう。

●読み始めてすぐに、これはシリーズを全部読みたいと思った。そこですぐさまネット古書店に注文した本が届いた。
七面鳥殺人事件』 C・ライス ポケミス
 今年初めて買った古本である。