●『百年祭の殺人』 Ｍ・アフォード 論創社 読了。
大上段に振りかぶった、密室殺人だぞっ！奇怪な事件だぞっ！どうだっ！という書き方ではない。手がかりを散りばめ、事件の検討に重点を置いて書かれた、静かな良作。内容にアクが少ないので、割とすぐに内容を忘れてしまいそうな気がする。以前読んだ『魔法人形』は、ぼんやりとした印象すら残っていないのだが。
何度か行われるディスカッションで、犯人の意図や犯行時の行動とその意味に迫ってゆくロジックが楽しい。型通りなのであまり意外でない「意外な犯人」が、典型好きとしては嬉しい。その一方で残念な点は、捜査陣が（伏字）にまでたどり着いたのが全くの偶然であることや、決定的な手掛かりが事件解決後まで伏せられていること。
ちょっとした不満はあるけれど、結論として十分面白かった。この作者の第三作が今年翻訳される予定だというから、読むのが楽しみである。
