累風庵閑日録

本と日常の徒然

『グリーン・マン』 K・エイミス 早川書房

●『グリーン・マン』 K・エイミス 早川書房 読了。

 長編怪奇小説である。一応は。M・R・ジェイムズが扱いそうな題材に現代的な味付けを施して長編に仕立てたような作品。現代イギリスの酒場兼宿屋「グリーン・マン」に、十七世紀に死んだはずの学者の幽霊が現れる。

 作者の癖なのか、一つの文が読点をいくつも連ねて異様に長く、理解するのに骨が折れる。同じ個所を何度も読み直さなければならず、エンターテイメント小説としては少々まどろっこしい。一人称の語り手の思考が整理されないままだらだらと続く場面なんざ、目が文字の上を滑っていくだけであった。さらに、まるで理解できない会話もちょいちょいあって、そんな箇所に出くわす度に気持ちが醒める。ところで巻末の訳者あとがきは、読点をいくつも連ねた異様に長い文で書かれている。こういうのを読むと、本文の長ったらしい書き方は訳者の癖ではないかという気がしてきた。

 終盤のとある展開はなんじゃこりゃ? という奇天烈なもので、それまでの型通りの怪奇小説がどこかに行ってしまった感がある。これもあとがきを読んで考えるに、作者はそもそもオーソドックスな怪奇小説を書くつもりはなかったのかもしれない。私が読みたいのはオーソドックスな怪奇小説なので、ミスマッチだったのなら残念なことである。