●『電話ミステリー倶楽部』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。
伏線や犯人設定等全体の出来栄えで、泡坂妻夫「ダイヤル7」が収録作中のベスト。それとは別に、切れ味では笠井潔「留守番電話」が一等賞。展開の異様さでは中井紀夫「十一台の携帯電話」が群を抜く。
再読の二編、阿刀田高「幸福通信」と島田荘司「糸ノコとジグザグ」とは、どちらもテンポの良さと強烈なサスペンスとでお見事。前者は平凡な日常から異様な状況への逸脱で、後者は逆に逸脱を引き留めるための必死の努力で、方向性は違うけれども。
今年はミステリー文学資料館編のアンソロジーを月イチで、トータル十二冊読めた。来年中には新刊、すなわち後継のアンソロジーに追いつける予定である。