累風庵閑日録

本と日常の徒然

『悪の断面』 N・ブレイク ハヤカワ文庫

●『悪の断面』 N・ブレイク ハヤカワ文庫 読了。

 田舎のホテルに滞在している科学者一家。外国のスパイが科学者の発明を狙っていた。やがてスパイ組織は彼の娘を誘拐し、発明を渡すよう脅迫してきた。

 敵側の一味は最初から明らかにされている。メインの謎は、ホテルの滞在客の中で誘拐犯達に内通している者は誰か、である。オーソドックスなミステリの、殺人犯は誰かという謎に比べるとちと弱い。内通者の正体は、(伏字)がポイント。

 メインの謎がそんななので、作品の重点は先の展開への興味にある。作者は偶然を活用してすれ違いを演出し、物語を転がしてゆく。

●ところでこれで、ニコラス・ブレイクのミステリ長編をほぼ読み終えた。ほぼ、というのは別冊宝石に掲載された一作が未読なので。当該号は買ってあるから読もうと思えばすぐに読めるのだが、論創海外ミステリから出るという新訳を待とうと思う。いつになるか見当がつかないけれども。