累風庵閑日録

本と日常の徒然

『魔術師が多すぎる』 R・ギャレット ハヤカワ文庫

●『魔術師が多すぎる』 R・ギャレット ハヤカワ文庫 読了。

 科学技術の代わりに魔法が幅を利かしている現代ロンドンで、魔法によって封印された部屋で起きる密室殺人。謎解きミステリとして成立するように、魔法でできることにきちんと制限を設けてある。それらの設定を読むのが楽しい。

 黒魔術で人を殺せるのか。魔法で封印された部屋は魔法で解除できるのか。窓から空中浮揚で脱出すれば密室ではなくなるのでは。といったミステリから逸脱する要素を、ミステリの形に落とし込むよう丁寧に作り込んである。

 解決はあくまでロジカルなもので、伏線もちゃんとしている。それよりも感心したのは犯人設定で。この立ち位置と物語との関係は、意外性の演出としてちょっとしたもの。この属性と物語との関係は、作品の(伏字)と結びついており、こちらもいい感じ。