累風庵閑日録

本と日常の徒然

『水平線の男』 H・ユースティス 創元推理文庫

●『水平線の男』 H・ユースティス 創元推理文庫 読了。

 どうやら創元推理文庫版にはかなり大きな誤訳があるらしい。別冊宝石の「地平線の男」は大丈夫らしいが。いつもなら事前情報を極力遮断して臨むのだが、今回は例外としてその辺を検索してみた。で、誤訳とされる部分を確認しておいてから読み始めた。

 順番が前後するが、読了しての結論としてこの部分は大して問題だとは感じなかった。むしろその周辺で(伏字)書き方の方が困りものである。こんな書き方をされちゃあ、誤訳部分が正しく訳されたとて大勢に影響ないように思う。

 誤訳があるという情報とともに、真相についての方向性も以前からぼんやりと知っていた。独創的だというその真相を楽しみにしていたのだが、なるほどこのネタか。途中でもしかしてと気付いてしまったので、意外さは感じなかった。けれども、刊行当時は衝撃的であったのだろう。歴史的意義のある作品だと思う。

 刊行が始まった国書刊行会「奇想天外の本棚」の、第何期になるのか知らんがこの作品もラインナップに含まれているそうで。現代に即した読みやすい新訳が、無事に出てくれるよう願っておく。