累風庵閑日録

本と日常の徒然

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十七回 「最後の戦艦」

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十七回として、第八巻の短編集「最後の戦艦」から後篇の八編百ページほどを読んだ。前篇は、作者の言葉によると歴史ノンフィクションと小説との中間を目指したようだが、後篇はすっかり小説である。気に入ったのは以下のようなところ。

 過去の惨劇を映し出す鏡の怪談「銀の鏡」。なんと勇将ジェラールが登場する「中尉の結婚」では、彼が暴れ牛に追われて逃げ惑う。知恵も勇気もある真の勇者だと自負する者がずっこける笑話。「蒼溟より」は陳腐ともいえる心霊譚だが、もうひとつの解釈として示された仮説がちと不気味。「紫金洞の怪」は、ローマ時代の廃坑山に潜む怪物というオーソドックスなモンスター小説。最後に示されたイメージが壮大で、ヴェルヌの「地底探検」に通じるような魅力がある。

●書店に寄って本を買う。
『五つの箱の死』 C・ディクスン 国書刊行会