累風庵閑日録

本と日常の徒然

『新・幻想と怪奇』 仁賀克維編・訳 ポケミス

●『新・幻想と怪奇』 仁賀克維編・訳 ポケミス 読了。

 ちょっとした好アンソロジーであった。打率は六割五分といったところ。ローズマリー・ティンパリー「マーサの夕食」は、このネタならどう書いても面白い。ゼナ・ヘンダースン「闇が遊びにやってきた」は、歪む驢馬という情景イメージが秀逸。リチャード・ウィルスン「ひとけのない道路」は、日常のちょっとした違和感がじわじわと拡大してゆく佳品。

 ウィリアム・テン「奇妙なテナント」は、題名の通り奇妙な店子に翻弄される不動産管理責任者が、次第に悪夢的状況に陥る。マンリー・ウェイド・ウェルマン「悪魔を侮るな」は、ネタはすぐに分かったけど好きな題材なので嬉しい。A・M・バレイジ「暗闇のかくれんぼ」は、想像力を刺激するスタンダードな怪談。

 リチャード・マシスン「万能人形」は、わずか二十年、というフレーズの重みが際立つ。レイ・ラッセル「射手座」は、例外的に他の収録作の倍ほどの分量でもってしっかりと構成された秀作。いくつものネタを盛り込んで読み応えがある。余談だがレイ・ラッセルって、あの傑作「サルドニクス」を書いた人であったか。