累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ゴールデン・サマー』 D・ネイサン 東京創元社

●『ゴールデン・サマー』 D・ネイサン 東京創元社 読了。

 主人公ダニー少年がちょっとした機知のきらめきによって小銭を稼ぐ、短いエピソードが連なった構成になっている。口先の説得力で事態をコントロールする様は、さながらフランク・グルーバーのジョニー&サムシリーズか、はたまたクレイグ・ライスのビンゴ&ハンサムシリーズのようだ。ただ、毎回上手くいくわけではない。予期せぬトラブルで計画が破綻するときもあれば、餓鬼大将の理不尽な圧力に屈するときもある。四十セントという大金(!)を失うこともある。

 読んでいると、どうも気持ちがざわつく。自分自身の幼少期の、楽しかったこと嫌だったことを、あれこれ思い出してしまうのだ。そればかりか、幼さ故の己の愚行の数々をうっかり思い出してしまって、身もだえしそうになる。開けてはいけない蓋が開きかけたような心持ちで、ページをめくる手が止まりがち。二百数十ページのこの本に三日もかかってしまった。