●『白衣の女』 W・コリンズ 岩波文庫 読了。
真に愛する人に巡り合ったヒロインのローラ。だが時すでに遅し。彼女は、当時の社会規範にがんじがらめになって望まぬ結婚をしてしまう。夫となったパーシヴァル卿は、求婚していた頃は優しく礼儀正しい紳士であったが、やがて卑劣で冷酷な正体を露わにする。結婚は彼女の財産が目的だったのだ。
彼女を危難から守ろうとするのが、しっかり者の義姉マリアンである。卿が仕掛ける陰謀に対して、マリアンの方も策を巡らして対抗する。ところがここで、彼女の前に強敵が立ちはだかる。卿の友人で陰謀の共犯者、狡猾な策謀家のフォスコ伯爵である。マリアンの懸命の奮闘にもかかわらず、事態は次第に抜き差しならぬ様相を呈してくる。
いやはやこれは面白い。冗長な部分もあるにはあるが、物語のうねりがダイナミックでぐいぐいと先を読みたくなる。ローラに対して陰に陽に張り巡らされる陰謀がサスペンス十分。パーシヴァル卿に対抗するために、彼の秘密を探って一歩一歩過去に分け入ってゆくパートは、ストレートなミステリの味わいがある。
途中で物語が大きく方向転換する事件が盛り込まれており、強引な力業に呆れるほど。そうくるか。その後も急カーブや急加速が繰り返される。予定より一日早い六日間で読み終えたのは、それだけページをめくらせる力が強かった証である。
ついでに書いておくと、ローラの叔父で後見人フェアリー氏の、無能で無気力なろくでなしという造形がなんとも香ばしくて素晴らしい。
●面白かったが、さすがに疲れた。明日以降は読書を控えめにして、今度の週末に開催予定のスペース企画の準備を優先する。