累風庵閑日録

本と日常の徒然

『終りなき夜に生れつく』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『終りなき夜に生れつく』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。

 中盤までは、テンポののろいメロドラマ。無邪気な若者達の惚れたハレたを、惰性で読み進める。あまりのヌルさに、この時点で作品に対する興味を半ば失っていた。中盤を過ぎると徐々に不穏な気配が漂い始め、これでようやく少しは面白くなるかと、あまり期待せず読んでいったのだが。だが。だが。なんと。期待を遥かに上回る、全く予想していなかった展開に驚く。これは文句なしの傑作である。素晴らしい。

●ところで、今日何気なく書店に寄って、あれっと思ったことが二点。この『終りなき夜に生れつく』って、改訳されているとは知らなかった。私が読んだのは乾信一郎訳である。そしてもう一点。帯に隠されて気付かなかったが、背表紙を見るとこれもハヤカワ文庫なのか。扉にはクリスティー文庫と書いてあるけれども。「クリスティー文庫」という名称は、レーベル内レーベルということかいな。

●スーパーでレジに並ぶ。前には二人。どちらのかごにも品物は多くない。これならすぐに順番が回ってくると思っていると、なんと一番目のオバハン、どういう事情があるのか知らんが、コレとコレとコレとコレとをそれぞれ別会計にしてくれと言い出した。一人で会計を四回繰り返すオバハン。すいすい前に進む隣のレジ。茫然と立ち尽くす私と二番目のオッサン。私の眼には二人しか見えなかったが、事実上五人並んでいたのであった。ううむ、こういう落とし穴があったとは……