累風庵閑日録

本と日常の徒然

『「探偵実話」傑作選』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●先月末に手を出して読み残していた『「探偵実話」傑作選』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 を読了。

「山女魚」狩久
全体は他愛ないが、人間失踪ネタの絵柄が秀逸。

「青衣の画像」村上信彦
ストーリーが進むに連れて、関係者の人物造形がくるくると何度も変わっていく妙味。

「ばくち狂時代」大河内常平
全編に漂うみもふたもなさがなんとも。

「鼻」吉野賛十
個性的な探偵役の設定と、この設定ならではの手掛かりがちょっと面白い。

「毒環」横溝正史高木彬光山村正夫
まあ連作なんてものはお祭りのようなもので……と、生意気にも斜に構えていたら、予想以上に整っていて感心。しかも奇天烈な真相まで飛び出して、なかなかのものであった。ツッコミ処はいくつかあれど、それは言わない約束。

「赤い密室」中川透
再読だが、何度読んでもつくづく感心する名作。

●今日は飲んでいい日である。肴は京都土産の、鮒寿司、もろこ佃煮、柴漬け、そして大徳寺の門前で買った大徳寺納豆である。昨日作っておいた切干大根煮もある。大徳寺納豆は初めて喰う。真っ黒で塩辛くて、かなり強い酸味のある、なかなかの珍味。柴漬けは、ソルビットだのアミノ酸だのを使っていないまっとうな逸品。そして鮒寿司でやる酒の旨さよ。