累風庵閑日録

本と日常の徒然

休暇で温泉

●関係各方面とのスケジュール調整の結果、休暇を取るのが平日ど真ん中、火曜水曜になってしまった。そうなったらなったで、せっかくの休暇を積極的に有効活用したい。「18きっぷ」を使って温泉に行ってきた。

 東海道を電車でかっ飛ばし、富士駅に着いたのは十一時過ぎ。乗り換えた甲府行き電車は、富士川に沿って延々内陸に分け入ってゆく。川と反対側の席に座ったので、雲が低く雨催いの空の下、しっとりと湿り気を帯びた山林をひたすら眺める。途中からとうとう降り始め、山肌には薄靄がたなびき、とんと水墨画の趣である。

●二時間弱で下部温泉駅に到着。今晩の宿は、三十一度の源泉を加熱せずにそのまま使っているという、湯治色の強い施設である。チェックインして浴衣に着替え、さっそくひとっ風呂。

 薄暗くだだっ広い半地下の風呂場には、ただの水よりちょっとだけ暖かい源泉が満々とたたえられている。特定の時間帯以外は混浴で、おっちゃんと湯浴み着を着たおばちゃんとが合わせて七、八人、湯に浸かっている。皆さん声高に世間話をしており、案外騒がしい。こういう人達はたぶん常連さんだろうから、私は遠慮して端っこの方でずっぷり湯に浸かり、頭をからっぽにしてただただぼんやりする。別に設けられている加熱風呂と行ったり来たりしながら、あっという間に一時間ほど経ってしまう。

 うん、ここはいい。日頃のあれこれの、面倒くさいことを忘れるには絶好の場所のようだ。今日は巡り合わせが悪くて雨で涼しいけれども、真夏の猛暑の時期に訪れるとまた格別であろう。

 ちなみにこの風呂、男性はタオル巻き、女性はタオル巻きか湯浴み着着用が必須というルールである。

●風呂から上がって一息入れて、ちょうど雨も上がったことだし、ちょいと散歩に出かける。散歩から帰ると、さて、もうやることがない。ポメラで今日の日記を書いていると、窓の外から蜩の、ヒョヒョヒョヒョヒョ……という鳴き声が聞こえてくる。夕食を済ませてしばらくくつろぎ、婦人限定時間が過ぎたところでまたひとっ風呂。