累風庵閑日録

本と日常の徒然

『十三の謎と十三人の被告』 G・シムノン 論創社

●『十三の謎と十三人の被告』 G・シムノン 論創社 読了。

 各編が十ページほどであまりに短く、あまりにあっけない。違和感を覚える記述があっても、追加の情報や説明がないまま終わってしまう。そういう作品にいくつか出くわすと、消化不良になって気持ちが醒めて、読み方がついつい雑になる。よくないことである。

 もう一点、特異な記述法にも引っ掛かってしょうがない。鍵括弧で囲んだ文章が複数続く場合、普通は複数人の会話を表しているだろう。ところがこの作品では、同一人物の語りが、複数の鍵括弧に分けて書かれているのだ。なぜそんなブツ切りにする? そういった個所に出くわす度に気になって、ストーリーを追っていた意識が止まってしまう。

 巻末解説では、本書を通じて作者シムノンの成長を感じたり、あるいは代表的主人公メグレ警部の影を見出したりの読み方が提示されている。そういうのは、ある程度シムノンを読み込んだ読者向けの読み方であろう。今まで三冊ほどしか読んだことのない私にとっては、ちと縁遠い。

 それでもいくつか、気に入った作品があるので題名だけ挙げておく。前半の「十三の謎」の中では、真相の面白さで「古城の秘密」、人物造形の面白さで「黄色い犬」、「モンソオ公園の火事」、「バイヤール要塞の秘密」といったところ。

 後半の「十三の被告人」の中では、真相の面白さで「ジリウク」、「フランドル人」、人物造形の面白さで「ヌウチ」、「ワルデマル・スツルヴェスキー」といったところ。

三省堂オンデマンドに注文していた本が届いた。
七之助捕物帖 第二巻』 納言恭平 捕物出版