累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ロニョン刑事とネズミ』 G・シムノン 論創社

●『ロニョン刑事とネズミ』 G・シムノン 論創社 読了。

 浮浪者ネズミことユゴーモーゼルバックが、大金の入った封筒を拾ったと警察に届け出た。その金は死体のそばで手に入れたのだが、ネズミは道端で拾ったと主張した。死体のことを知っているのはネズミと読者だけである。ロニョン刑事は、日頃から知っているネズミの態度に不審を抱き、裏に何かあると考えて個人的に調査を始めた。

 ネズミの思惑は、大金を手にして故郷に引退し悠々自適に過ごすこと。ロニョン刑事の思惑は、表沙汰になっていない事件を解決して出世すること。ふたり以外にも様々な人間達が、それぞれの欲と思惑とで動き回る。

 題名になっているロニョン刑事とネズミとの造形が光る。決してヒーローではなく鋭敏でもなく、ちょいちょい失敗するがそれでも地道に追及を続けるロニョン。警察のやり方を熟知してのらりくらりと追及をかわすネズミ。その他の登場人物達もそれぞれに個性的である。そんな彼らがどうも掴みどころのない事件の周辺を動き回る様子が、じわじわと面白い。また、ある手掛かりの意味が終盤で判明し、なるほどと感心する。

●朝のうちにシムノンを読み終え、街に出る。今日は東京で横溝関連のイベントがあるのだ。運営スタッフとして参加し、イベント中から夜のスタッフ打ち上げまで楽しい時間を過ごす。

●注文していた本が届いた。
『蒼社廉三 軍隊ミステリ集』 大陸書館