●『ある大使の死』 M・コールズ 創元推理文庫 読了。
冒頭、ロンドンにある外国の大使館で、大使が射殺される。そこから政治がらみのスリラーに発展するのかと思いきや、物語は予想外の方向に転がってゆく。正体不明の犯人は、どうやらとある犯罪組織の壊滅を目論んでいるらしい。メインの謎は犯人の正体と、組織のボスの正体である。どちらもそれなりに意外な真相が用意されていて、その点はまあ満足。
舞台はフランスやオランダにまで広がり、次々と事件が起きてスピーディーな展開である。時折びっくりするくらいの偶然が使われたりして、ラフな部分も散見される。そういった点も含め、ちょっとしたスリラー映画を観ているような気分であった。傑作とか大作とかではなく、まさしく「ちょっとした」という形容がふさわしいと思う。
●古本を買う。
『ロウソクのために一シリングを』 J・テイ ポケミス
水曜に「フランチャイズ事件」を読み、それをきっかけに著作リストを確認して持っていなかったので買ってみた。訳載されていたミステリマガジンは買ってあるので、すでに読める態勢にはなっていたのだ。だから新刊当時は買う必要がないと判断したのだが、今になって欲しくなってしまった。