累風庵閑日録

本と日常の徒然

カルメンの死

横溝正史関連でひとつ、宿題を抱えている。先日、角川文庫の『迷路の花嫁』をなんとなくぱらぱらとやっていて、気になる文章に気付いたのだ。中島河太郎が書いた巻末解説で、正史が旧作の長編化を試みたりしたという記述の後、「この「迷路の花嫁」もその長編化の一つで」と書いてある。そんな話、聞いたことない。

 ちょっと調べてみると、由利先生ものの「カルメンの死」の原題が「迷路の花嫁」だそうで。両者の内容には何らかの関係があるのだろうか。生憎、どちらも一切覚えていない。比較のために、まず「カルメンの死」から再読してみる。角川文庫では『幻の女』に収録されている。

●読んでみると、昭和二十五年の発表にしては随分古風な、戦前のスリラーを思わせる内容であった。ある人物の台詞の矛盾が、伏線として面白い。今日読んだ内容は忘れないように、簡単なメモを残しておくことにする。以下、メモの部分はごっそり非公開。

●ところでこの件にはオチがある。『幻の女』の中島河太郎が書いた巻末解説には、「別にこの文庫から刊行されている長編「迷路の花嫁」とは係わりがない」とはっきり書いてあるではないか。あららら。この段階で早々とずっこけてしまった。だが小説の再読はそれなりに乙な味わいもあるので、比較する目的からは離れても、いずれ近いうちに「迷路の花嫁」も読んでみようと思う。