累風庵閑日録

本と日常の徒然

『怪盗X・Y・Z』 横溝正史 角川文庫

●『怪盗X・Y・Z』 横溝正史 角川文庫 読了。
ついでに、なぜか文庫には未収録の第四話「おりの中の男」も併せて読む。

 怪盗が事件解明にも手を出して、単なる探偵対怪盗の対決物語になっていないのが面白い。また、主人公の探偵小僧よりも怪盗X・Y・Zの方が一枚も二枚も上手で、その辺りの捻りが楽しく読ませる。

 想定読者が中学生なためか、きっちり殺人事件が起きて、ジュブナイルにしては読み応えがある。特に第三話「大金塊」は、バレバレではあるが定番のネタを使って微笑ましいし、なんだそりゃ、という不思議なレッドへリングを使っているしで、一番の出来である。衆人環視の檻の中で殺人が起きるという、第四話「おりの中の男」もなかなかのもの。