累風庵閑日録

本と日常の徒然

『金三角』 M・ルブラン 偕成社

●『金三角』 M・ルブラン 偕成社 読了。

 分かりやすい悪役に、ルパンとの知的闘争に、親の代からの恋愛模様に、宝探しの興味も加わって、こりゃあ受ける題材が詰まってるわ、と思う。だが実際読んでみると、愛だの義務だの理想だの誓いだの、大仰な台詞回しがまどろっこしい。前半の主人公が、ヒーローとして颯爽と登場しながら、次第に愚かな振舞いをやらかすようになっていくのがじれったい。しかもそういった愚行の一因は、ルパンがとっくに気付いている裏面の真相をいつまでも黙っていることにあるので、いよいよじれったい。当時の娯楽小説のテンポはこういうものなのかも知らんが、もうすこしきびきびと筋を運べないものか。ただ、メインのネタはそれなりに面白かった。あまりにもミエミエで、ちっとも意外ではない「意外な真相」は、お約束、定番、定石通りの味わいで、微笑ましい。

 さて、この本を手に取った目的は、作品を読む以外にもうひとつある。横溝正史の戦前スリラー「夜光虫」は、「金三角」を元ネタにしているという。その点を自分で確認してみたい。で、実際に読んでみると、人物設定、物語の展開、さらにはミステリの趣向にまで、共通の要素が多々あるではないか。なるほど確かに、「夜光虫」は「金三角」だ、と納得できる。

 そしてこの件はまだ引きずる。「夜光虫」を時代小説に仕立て直したのが、「緋牡丹銀次 金座太平記」だそうで。これもいつか、自分で確認してみなければならない。

●いよいよ確定申告に手を付けた。面倒くさい。まったくもって面倒くさい。