●『カリオストロ伯爵夫人』 M・ルブラン 創元推理文庫 読了。
百年以上昔から語り継がれてきた、隠された巨額の財宝。その宝を巡って複数の勢力が争奪戦を繰り広げる。ルパンは、カリオストロ伯爵夫人の危難を救ったことがきっかけで、宝探しに介入することになる。
そんなの面白いに決まっているではないか。宝の在処の謎ってのは定番の面白要素だし、秘められた歴史の暗部なんて題材も魅力的。場面転換が多く展開の意外性もある。これでもう少し簡潔に書かれていれば、と思ってしまう。地の文は大変に熱がこもって執拗な書きっぷり。そしてルパンときたら、とにかくまあよく喋る。カリオストロ夫人に対しては奔流のように愛の言葉を投げかけ、敵に向かっては悪罵を叩き付ける。
ルパンとカリオストロ夫人とは、宝を手に入れるために時には共闘し時には相手を出し抜き、愛し合いながら憎み合う。このふたりのやりとりがうんざりするほど熱っぽく感情沢山で、勝手にやってろと思いたくなる。そんな愛多き情熱的なルパンのキャラクターが、シリーズ人気の一因ではあるのだろう。